第9話

家にゆあと帰宅すると、朱莉が俺たちの事を出迎えてくれた。

「お帰りなさいっ!今日は、朝悠真さんが言っていた料理をゆあと一緒に作ったんです!」

「おお.....それは、ありがたい......でも、大変だったんじゃないか?」

俺が言うと、朱莉はすぐ首を横に振る。

「そんなことないです!むしろ、作ってほしい料理とかあった方が私としては良い方なので、また食べたいものがあったら遠慮なく言ってくださいねっ」

「わ、私も、作れるものだったら作るし......」

「......二人ともありがとうな」

そしてゆあと朱莉の頭を撫でる。

「ふふっ......」

すると、奥の方から少し笑い声が聞こえた。

「――っ!?」

と、そこにいたのはツンデレ幼女の李緒だった。

李緒は俺と視線が合うと、すぐにどこかへと去って行ってしまった。

「......李緒と仲良くなるのは時間がかかるな......」

小さく言う俺。

ゆあや朱莉と仲良くなったのは、全然時間がかからなかったのだが、李緒に関して言えば結構時間がかかることが分かる。

......努力しないとな。

俺は、二人の幼女の頭を撫でながらそう思うのだった。


「――いただきまーす!」

最初にご飯を食べ始めたの李緒の方だった。

李緒は美味しそうにご飯を食べている。

「......な、なに?そんなに見られると、恥ずかしいんだけど......」

「あ、ああ!ごめん......」

「......ま、まあ、いいけど......」

美味しそうに食べる李緒に少し見とれてしまっていた。

ご飯を食べている所はリビングだ。

右隣にはゆあ、対面には朱莉と李緒が座っている。

とにかく、俺は腹が減っているので早速ご飯を食べ始めた。

「うわ、うまっ......!」

俺はまずトンカツを食べてみた。

普通に美味い......。

というか、朱莉が作ったものよりもゆあと一緒に作った方がすげー美味いのだが。

やっぱ、料理が出来るっていいよなぁ......。

「お兄ちゃん美味しい?」

「う、うん!こんなおいしいもの初めて食べたよ!」

もちろんこれは、お世辞でもなんでもない。

本当の事だ。

「そ、そっか......それは良かったよ......」

褒められて恥ずかしいのか、ゆあは俺とは目を合わせようとはしなかった。


「ね、ねぇ、ちょっといい?」

ご飯を食べ終えリビングでゆっくりしていると、李緒が俺の所にやってきた。

「良いけど......どうした?」

「そ、その......べ、別に大した用じゃないんだけど......」

李緒はそう言いながら、俺の隣にやってくる。

そして俺の隣におずおずと腰を下ろすと、こう続ける。

「その......悠真にとって、ゆあとか朱莉ってどう思う?」

「えっ?ど、どうしてそんなこと......」

「......ちょっとね」

「うーん......?まあ、朱莉もゆあもいい子だよ。それに、言ったことに対しては何でもしてくれるし......別に悪いとこなんか無いと思う......うん」

「......あたしには、そんなのは無いんだよなぁ......」

「え?」

李緒が言ったことは俺にはよく聞こえなかった。

「な、なんでもないっ!」

李緒はそう言うものの、顔をなぜか赤くしている。

「......で?悠真は、二人の事をどう思ってるの?」

顔を赤くしたままそう訊いてくる李緒。

「まあ、好きだよ」

「......そう、なんだ......」

李緒は若干諦めたというか、悲しい感じで言った。

「と、とにかく、悠真は2人の事が好きと......ふーん......べ、別に羨ましいとかって思ってないし......」

李緒の口からは、ツンデレらしい言葉が出た。

「じゃあ、あたしは帰るね」

「あ、うん......?」

李緒は、自分のバッグを背負うとそのまま家を出て行ってしまった。

「......李緒も泊まっていけばよかったのに」

「えっ?」

俺のすぐ後ろには、さっきの様子を見ていたように朱莉がいた。

「まあ、ああ見えて結構優しい方なんですけどね」

「そうなんだ......」

というか、話の意図が分からん。

「それで......この後、なにかすることありますか?」

「やることね......うーん、別に思い当たるものは無いけど......」

思い当たるものは無いが、どうやって学校を辞めるのかが問題だ。

そもそも学校を辞める時には、普通親がいないと出来ないのだが......それについては、追々考えていこう。

「とりあえず......今日は学校に行ったりして疲れたから、もう寝るよ」

「あ、はい......じゃあ、ここの方付けは私がやるので、それではおやすみなさい」

「うん」

俺は朱莉と言葉を交わすと、ゆっくりとした足取りで自分の部屋に行った。


「――あ」

自分の部屋のドアを開けると、パジャマ姿が少しエロく見えるゆあがいた。

「......ここでなにしてるの?」

「......物色」

物色ね......。

「物色しても、別に何かある訳じゃ――」

俺はそこまで言いかけた時、ゆあはあるものを手に取った。

「これなに?......人形?」

ゆあが手にしたものは、人形の形をした......なんというのか......。

「これって何に使うの?......あ、そういう......ふーん......」

「......どこ見てるの?」

「お兄ちゃんの......あれ」

......あれとは。

まあ、そこには触れないでおくけど......。

「別に、これを使っていたからどうっていう訳じゃなくて......その、私が来る前まではこんなの使って処理してたんだね......でも、今は私がいるし......」

段々と、ゆあが言う言葉が卑猥に聞こえてきた。

「ちょ、ちょっと落ち着こうか......」

俺は、ゆあが口を止めると思い頭を撫でてあげた。

「ん......お兄ちゃんって、すぐに頭撫でたりして話そらすんだから......ま、まあ、別にそれが悪いって言ってるんじゃなくて......むぅ、ばか......」

「......はぁ......」

ゆあは悪気があって言ってるんじゃないと分かっている。

でも、俺の心はちょっと悲しくなった。

「じゃあ、俺はもう寝るよ......」

「えっ?......あ」

俺は、そのままベッドに身を投げ出すと、すぐに目をつぶった。

「......ごめんね......ちょっと、言い過ぎたかな......」

そして数秒後、俺の後ろには温かいものがあった。

見なくても分かる、これはゆあの体温だろう。

「いや、別に大丈夫......」

「そう、なの?......これから、なにか嫌なこととかあったら遠慮なく朱莉とか私に言っていいからね?」

優しい口調で、尚且つ俺に密着しながらいってくるゆあ。

「う、うん......」

俺は一瞬涙が出そうになった。

「というか......ゆあって夜になるとエロくなるよな。それに、パジャマを着るとエロく見えるし」

「......ば、ばかぁぁ!」

俺の一言で、いい雰囲気が一瞬にして壊れてしまった。








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