死ねと言っているようなもの
終電
あの人に振られた夜
あの日から、死にたくなるような夜ばかり。
ずっとずっと大好きだったあの人についに好きだと言った。
え、と声を漏らしながら目を見開いたあの人の顔を私は一生忘れない。いや、忘れられない。
「…ごめん」
蝶が羽ばたくときの音、タンポポが揺れるほどの風の音、あの人がこう言ったときの声。
とても小さくて、壊れてしまいそうな声だった。
今まで、出会った誰よりも好きだった。
これから出会うはずの誰よりも好きな自信があった。
私の毎日はあの人を中心としていた。
そんな人に振られてしまった。
周りの人にも、諦めろ、と言われてしまった。
もはや、好きだとかそういう次元ではなかった。
私自身があの人でできていた。
息を吸って吐くように、夜に目を閉じて眠るように、朝に日差しを浴びて目覚めるように、あの人のことが好きだった。
そんな人に振られてしまった。
「そんなこと言ってないで、もう諦めちゃいなよ。大丈夫、他にもいい人いるって…!」
友達のそんな声が、遠くから聞こえる。
脳の中でいくら反芻しても、わからない言葉だった。
だって、そんな言葉じゃ私は微塵も救われない。
むしろ、私自身を否定された気にさえなる。
魔法には程遠い、呪いのような恋だった。
身を焦がしても足りない、蝕まれるような恋だった。
どれだけ過去形で話しても、信じられないほど信じてしまう恋、だった。
私はあの人でできていた。
あの人のパーツがあることで、私という形を保っていた。
そんな私に諦めろ、だなんて。
死ねと言っているようなもの。
死ねと言っているようなもの 終電 @syu-den
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