第6話 第二皇子ルディアス

さて、勇者達は帝宮へ向かった。ルカは、次の仕事を確認する。すると、老紳士が現れる。ルピカは、一瞬だけ驚き対応するか迷って固まる。


「ルカ様、ルディアス殿下がお茶会に誘いたいと。それと、厄介事を押し付けた事について…。」


「そうでも、無いと思うけどな。良い機会だし、あの才能を潰すのは勿体ないと思わない?まあお茶会は、行かないと迎え来そうだし拒否権ないよね。」


ルカは、リストを捲りつつ暢気に笑いながら言う。そして、リストを抱き抱えて視線を向ける。老紳士は、優しく笑い暫く考えてルカの言葉に答える。


「確かに、勿体のうございますな。ちなみに、お迎えの馬車は王宮に既に用意されております。」


「あいつ…、僕に嫌がらせかな?」


ルカは、困った様な表情で呟く。


「おそらく、そうかと。」


「まだ、仕事が残ってるんだけど…」


リストを見ながら、困ったように深いため息を吐き出す。すると、青年が現れてルカに言う。


「では、此方で調整します。ルカ様は、帝宮に行ってくださいませ。ごゆっくり、してください。」


ルカは、リストを青年に渡すと申し訳ない表情。


「すみません、ペチカさん。後は、お願いします。仕方ない、あの我儘王子の相手をしてきます。」


ルカは、足早に自室に向かうと転移の魔法を発動。この魔法陣は、ルディアスのドア前に移動する。


**


「ん?ふーん、随分と早い到着だな?」


黒髪に、赤い瞳の青年がルカもといルピカを見る。


「君に、考える時間を与えると厄介だしね。」


ルピカは、深いため息を吐き出して言う。


「ふっ、良くわかってるな。にしても、勇者達についてだ。余りにも、弱過ぎないか?」


手で、座るように示しながら真剣に言われる。


「たぶん、王国は勇者に反旗を翻されるのが怖かったんだと思う。しかも、勇者が国から離れようものなら、聖女を人質にするくらいだもん。」


ルピカは、変装解除して座る。老紳士が、紅茶を置いたので小さく礼を言う。そして、考える仕草。


「あー、なるほど。つまり、翼をもぎ取り自分達の駒にしようとしたか。だが、それは聖約違反だ。」


少しだけ、怒りを滲ませた声音で言う。


「そうだね。で、動くの?」


ルピカは、素っ気なく言って首を傾げる。


「勿論だ。これは、れっきとした聖戦だしな。」


「そう、なら僕も物資関連とか協力できそう。」


ルピカは、冷静に思考を加速させていく。


「ルピカ、すまんな。頼む。」


ルディアスは、真剣にお願いする。ルピカは、暢気に優しく笑いルディアスに言う。


「任せて。そうだ、ヤックが注文が届いたって。」


「タイミングが、良いな。」


ルディアスは、ニヤリと笑う。ルピカは、ルディアスと具体的な内容を真剣に進める。


「さて、僕は帰ろうかな。」


「駄目、俺のお茶に付き合え!こっちは、勇者の対応とか書類整理でつらいんだぞ!まったく……。」


ムスッとして、ルピカを見るルディアス。


「ごめんね、僕はバレる訳にはいかないんだ。」


ルピカは、俯いてから困ったように笑う。


「分からんな。何故、お前は勇者を助ける。」


「早く、平和になったら自堕落に過ごせるでしょ?いいかげん、僕の安息の地を探さないとね。ここにいても、仕事と厄介事を押し付けられるし。」


ルピカは、ふざけた様に言うがルディアスは考えている。ルディアスは、素っ気ない雰囲気で聞く。


「お前は、この国から出て行くのか?」


「うん。出来れば、世界を旅してみたいな。」


というのも、ルピカはこの大陸から出る事をお頭から禁止されていた。勿論、弱かったからだ。でも今なら、師匠に太鼓判を押された今なら良いかな?そう、思ったのだった。ルディアスは、小さくため息を吐き出す。そして、紙を出してから言う。


「契約しろ、ルピカ。まだ、世間ではお前は犯罪者だ。けど、俺と契約しとけば問題は無いはずだ。」


「駄目だよ。そしたら、君に傷が付く。良いかい、君は第二皇子だよ。帝位、継承者なんだしもう少し行動には気をつけて。気持ちだけ、ありがとう。」


ルピカは、紅茶を飲み干す。


「ルピカ、本当に助けが必要な時は頼れ。お前に、関わる全員が言うだろう。たまには、頼れと。」


「うん、分かってる。」


ルピカは、小さくため息を吐き出して帰った。


**


ルピカは、部屋についてベッドに倒れ込む。


分かってる、分かってるんだけど…。僕のせいで、彼の立場が危うくなるのを許容できない。他の人達にも、それは言える事だ。僕が、13歳でここを去るのも、これ以上は迷惑をかけたく無いから。


やはり、怖いんだ。大切な人達が、増えれば増えるほど失うのが怖くて、少し距離を離してしまう。


駄目だ、寝ないと…。荷造りは、終わった。


ルピカは、髪をほどくとゆっくり目を閉じた。妖精達は、ルピカを心配そうに見つめていた。


**


早朝、ルピカは変装をして荷物を持つ。数年間お世話になった、空き部屋を眺めて小さく微笑む。


部屋を出たら、ヤックが待っていて片手を上げる。


「おはよ、ルピカ。」


「おはよう、ヤック。もしかして、待たせてた?」


ルピカは、キョトンとして聞く。


「おう、俺も皆んなも待ってるぜ。」


ルピカは、船に向かい振り向く。さよならは、言わない。また、会おうという意味を込めて一言。


「またね。」


「おう!」


ルピカは、微笑むと船に乗るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る