第2話 見習い商人ヤック

さて、王都には行けないし。隣国、アルジマ帝国に行こう。まず、3年間は生き残らなきゃ。


えっと、先ずは働き先を見付けないとね。


テクテク、歩いていると精霊が僕を見て何か言う。残念だけど、声は聞こえない。すると、手招きされる。そうとう、焦っているようだ。行ってみよう。


すると、商人が魔物に襲われていた。


「お前、逃げろ!」


自分に、気づいた少年が必死に言う。僕は、無言で剣を抜くと魔物を観察する。そして、走り出す。


確か、ウィンドウルフだよね?よし、大丈夫。何回か、倒した事があるし3匹ならいける。


「はっ!」


「…マジか。じゃない!いやいや、違う!お前、危ないだろうが!いや、助かったけどさ。」


うん?えっと、危なくは無いかな。だって、あれくらい村にも来てたし。さて、全員無事だね。


「ごめんなさい、急ぐので。」


面倒だし、急いで逃げよう。全力ダッシュ!


「あ、待て!1人で走るな!てか、足早っ!?」


ここら辺、もう魔物は居なさそうだし大丈夫。さてと、そろそろ昼かな?ご飯を食べて、帝国に入って街で仕事を探そう。出来れば、安定した所が有れば良いな。余りに、ヤバめな所は断る事っと。


ここは、食堂かな?よし、此処でご飯にしよう。


「坊主、美味いか?」


「はい、凄く美味しいです。」


美味しい。お魚、ホクホクしてて塩っぽくない。これは、魔魚かな?魔魚じゃない、普通の魚はそれなりの身分を持たないと食べられない。となると、魔魚か。味も、薄味で僕の好みだし幸せぇー。


「やっと、追いついたぞ!」


「おや?」


あー、来ちゃったか。えっと、無視しよう。うんうん、良く考えれば僕は悪くないし。


「はぁ…、まあ良いや。ここは、俺が払うよ。」


「いえ、結構です。」


黙々、食べていると少年が座る。


「お前、なんて名前だ?」


名乗るとしても、本命は名乗れないな。ルピカ…、うーんとルカで良いか。どうせ、姿も違うんだし。


「……ルカ。」


「へぇ、ルカか。俺は、ヤック・ハルジオン。」


ハルジオン?と言うと、世界で2番目に大きな商会だった筈。商会の盟主は、ルデア・ハルジオン。つまり、息子か何かかな?まあ、関係ないけど。 


「そうですか。」


「あれ?何か、薄い反応だな。」


キョトンとして、同じお魚定食を食べるヤック。ルピカは、無言で立ち上がり鞄からお金を出す。


「余り、興味が有りません。」


「ええー…。マジ?本名を言うと、勘の良い奴らは喰いものにしようとしてくるのに。珍しくな。」


まあ、そうだろうね。けれど、僕は訳有りだ。そして、君みたいな人を巻き込みたく無いんだ。だからこそ、全力で冷たい対応をする。よし、支払いもした。さて、アルジマ帝国までゆっくり歩きますか。


「なあ、ルカ。俺と、交渉しないか?」


「ん?」


こいつ、何だかんだで優しいな。冷たい対応だが、無視する訳でも無い。きっと、訳有りなんだな。さてさて、性格的にコイツが犯罪をするとは思えないしな。それに、姿を偽ってるんだ。きっと、名前も本名じゃないんだろう。ウチで、雇えるかな?


いや、いきなり雇うのは無理か。


となると、帝国迄の護衛を頼んでついでに交渉するかな。問題は、親父だよな。うーん、怪しいよなぁー。きっと、ルカに酷い事を言うだろうし。


でも、ルカは俺と商売品を守ってくれた。


それに、ルカって俺と同い年くらいだよな?俺、同い年くらいの友達って少ないからな。その、恥ずかしいけど友達になりたいって思ったんだよな。


「ヤックさん、僕もう行かないと……。」


「あのさ、帝国まで俺を護衛してくんね?」


言った!言ってやったぞ!さて、どう答えるかな。


「え?ヤックさん、護衛は居ましたよね?」


「ああ、2人さっき死んで1人だけだな。」


ん?おかしいくない?仕方ない、死体を確認してみよう。あー、これは…魔物じゃないかな。かと言って、盗賊でも無い。もっと、暗殺とか生業にしている奴らぽい。本当に、狙われたのはヤックさん。


これは、残りの1人が怪しいかな。


やっぱり、警戒しておくべきかも。ヤックさんを、死なせたく無いし。どうせ、帝国迄の護衛。


そっからは、こっそり姿を消しても問題ないよね。


と言う訳で、護衛を受けよう。なるべく、深く関わらないようにしないと。僕と、彼の為に……。


「やります、護衛。」


「本当か!?あー、良かった助かるよ。」


やっぱり、俺を見捨てないでくれた。優しいな、お前。うーん、護衛費用はいくらかな?


取り敢えず、今夜は野宿になりそうだな。


「よーし、此処で野宿しようぜ!」


「……ヤック様、本当にコイツを雇うんですか?」


護衛は、苛々したように言う。勿論、護衛もルカの実力は薄々と感じ取っていた。だが、自分の目的を達成するのにはとても邪魔だ。


「俺の意見は、変わらねーよ。」


薪を集めて、野宿の準備をするルピカを見ながらヤックは言う。ルピカは、聞き耳を立てながらも黙々と準備を終わらせていく。そして、小さく呟く。


「はぁ〜…、面倒事っぽいな。」


夜、護衛の人がフラッと居なくなった。まあ、だよね。うん、そうなると思った。ルピカは、ヤックを起こして外の気配を探る。まだ、来ていない。


「ヤックさん、荷馬車を隠しに行くよ。そして、僕達も隠れよう。ごめんなさい、時間が無いからテントは捨てる。おそらく、燃やされるだろうし。」


「……分かった。ちなみに、燃やされるって?」


ルピカは、冷たい雰囲気で言う。


「あの人、王国騎士でした。ヤックさん、もしかして国王に喧嘩でも売りましたか?」


「ああ、理不尽な交渉して来たから逃げて来た。」


なるほど、ならば腹を括るしかないよね。ん?これは、仮面?売り物ですかね。ヤックさんに、迷惑はかけられない。よし、決めた。この、仮面を買いましょう。ヤックさんは、キョトンとして頷く。


お金は、後払いです。


メガネを外し、仮面をつける。そして、イヤリングを外す。アイテムを、つけていると使える魔力が制限され動きにくくなる。相手が、王国騎士ならばハンデ有りじゃ守れない。さあ、覚悟を決めろ!


「ルカ…なのか?」


「……忘れてください、こんな醜い姿なんて。」


仮面を、着けているとは言え辛い。世間一般では、黒髪は不吉の象徴だ。高い魔力を持ち、禍いや死をもたらすから。僕は、村でも死神の扱いだった。


見て欲しくなかった……。


さあ、片付けよう。やっぱり、火を放って奇襲。でも、そこには誰も居ないし無意味だよ。


「せいっ!やー!」


よし、終わった。変装して、仮面代を払おう。そして、荷馬車を回収して明日には帝国に入ろう。


「ルカ、顔を見せてくれないか?」


思わず、思考停止して固まるルピカ。


「ごめん…なさい…。君には、見せられない。」


思わず、涙が出てくる。お願いだから、優しくしないで!優しくされる程、巻き込みそうなのが怖くなってしまう。だから、忘れて…。僕を、忘れて!


「……分かった、ごめんな。ほら、泣くなよ。」


「馬車を回収してくる。」


ルピカは、逃げる様に走り出す。


「あー、もう!やらかした、まさか泣くとは思わなかった。さて、どうする。どうしようか?」


結局、無言で帝国に着いてしまった。


「なあ、ルカ報酬だ。」


あれ?あれぇー?ルカが、居ない!?え、あいつ何処に行ったんだ?あー、不味いな。取り敢えず、親父に報告して報酬を渡さないと。


ヤックは、慌てたように屋敷に入って行った。ルピカは、それを確認して人混みに紛れるのだった。


宿を探し、部屋を借りてベットに倒れ込む。


「……疲れた。少しだけ、少しだけ寝よう。」


昨日は、ヤックを寝かせて一睡もしていない。身体は、とても重く怠い。目を閉じれば、気を失うように深い眠りに落ちていった。おやすみなさい。


ん?あれ……しまった、起きれなかった。


まあ、良いかな。ご飯を食べて、お仕事を探そう!取り敢えず、暫く商会には近づかないとして。


商業ギルド、そこなら安全な仕事を貰えるよね。


「仕事かい?うーん、難しいな。」


「やはりですか。」


やっぱり、年齢で引っかかってしまう。まあ、暫くは雑用を回してくれるみたい。少しでも、稼いで楽しい旅をするのが目的なんだしね。


まあ、頑張ろう!

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