安息の地を探して…旅紀行!

@Kurohyougau

第1話  とある村の悲劇

この世界には、魔王が存在する。そして、幼馴染のエミリーが聖女に選ばれた。8歳の時、聖女の修行の為に王都へ飛び立ってからも、手紙のやり取りは勿論していたが。その、手紙も途絶えてしまった。


暫くして、聖女が勇者と結婚を前提に付き合っている。という、新聞が村に届いた。


「待って、何かの間違えだよ!だって、エミリーは僕と結婚するって約束したもの!」


「お前と、エミリーの婚約は無しになった。」


村長は、諭すように僕に言う。


「お前みたいな、半端者をエミリーが選ぶ訳ないだろ?今まで、慈悲で遊んでくれてたんだろうよ。」


村の子供達は、笑いながら僕に言う。僕は、エルフと人間のハーフエルフ。確かに、半端者だけど。


「待って、せめてエミリーが帰るまでは婚約を…」


「うるさい!部屋に、押し込んでおけ!」


村の青年に、引き摺られるように部屋に入れる。


我ながら、ここまで引きずるなんて。未練だな。でも、それでも本当に僕は彼女の事が…好きなんだ。


心を落ち着かせよう、忘れるんだ。


あの日、差し伸べた手を眩しい笑顔を…さよなら、するんだ。そうだよね。こんな、半端者より勇者様との方が幸せになれる。そうだ、彼女は幸せになろうとしてるんだよ。本当に彼女が、好きならば邪魔しちゃいけないよね。君の幸せを、僕は祈るよ。


僕は、静かに神様に祈りを捧げる。


村長は、僕を嫌っている。僕の父親は、村長の息子で冒険者だった。しかし、いきなり別種族の嫁を連れて来て、村に置き去りにして行った。


別種族を、嫌うこの村にだ。


しかし、父はエルフの妻を溺愛していた。だから、手を出さずにいた。そこで、とばっちりを受けたのは僕だった。父親は、僕が生まれた事を知らない。何かと、村の子供には嫌がらせを受けていた。


母は、助けてはくれなかった。


今日は、もう寝てしまおう。全て、忘れて明日は家畜の世話して、畑の収穫を手伝わなきゃ。


しかし、真夜中に起こされる。


「あの、騒いで申し訳ありませんでした。彼女の事は、もう忘れる事にしたので大丈夫です。」


僕が、そう呟けば目を丸くする村長と母親。村長は暫く、考える様な仕草をする。母は、俯いている。


「すまないが、お前は死刑だ。罪状は、聖女の婚約だと嘘をついた。これは、村人全員が同意した。」


「え?待ってください!何故、死刑なんですか!」


すると、青年達に押さえ付けられる。そして、腕にナイフで軽く傷つけられる。そして、そこの場所を布で硬く結ぶ。痛さに、息を呑む僕に母親が動揺するのが分かった。しかし、止めてはくれない。


そして、真夜中の森に放り出された。魔物達は、匂いに敏感だ。僕は、逃げつつも捨てられた剣などを使い戦った。腕の傷が、利き手じゃない方だったので、まだしっかりと戦う事が出来た。しかし、体力にも限界はある。僕は、生きる事を諦めた。


もう、良いよ。ここまで、頑張ったんだ。


村人達に、見放され親にも見捨てられた。婚約してた彼女は遠い人になったし。死んでも、良いよね。


僕は、折れた剣を投げ捨てた。


ごめんなさい、エミリー。一足先に、死者の世界で待ってるから。その時は…、昔みたいに遊ぼうね。


「うりゃあ!よっと、大丈夫か?」


「おい、酷い傷じゃないか!おい、ポーション!」


誰か、とても騒いでる…助かったのかな?僕は、最後の力を込めて村へ走った。後ろで、声がするけれど帰りたかった。最悪、殺されても良い。


どうせ、死ぬならエミリーと遊んだあの村で…


そこで、村の方向から煙が出ている事に、気が付いてしまった。村門から、燃え盛る村の様子が見えている。嫌だ、どうして?どうして、村が!


村からは、声がしない。けれど、見える地面は血に濡れており、家が荒らされた様子もある。


盗賊?いや、有り得ない。このタイミングで、村を襲うだなんていくら盗賊でもやらないはず。それにだ、荒らされ具合がそこまでじゃない。


つまり、これをやったのは盗賊じゃない。


後ろから、冒険者達が走って来る。そして、座り込んで動けない僕を見てから、目の前の悲惨な光景を見つめる。そして、優しく頭を撫でてくれた。


すると、何故が流れなかったら涙が溢れてきた。


僕は、火が消えた家に入り燃えてない、お出掛け用の服装に着替える。家には、誰も居なかったのか匂いは余りしない。冒険者さんは、僕も一緒に行こうと言ってくれたが、僕はまだ10歳の子供だ。おそらく、重荷にしかならないだろう。


一応、冒険者に憧れて剣と魔術は練習していた。母親は、精霊を見て話す事が出来たけど。僕には、見る事しか出来ない。だから、魔法は使えないかな。


けれど、母親の本を借りて少しは勉強した。


外に、出稼ぎに出てる2人のお兄さん。そのお兄さんからも読み・書き・計算も教わってる。


おそらく、騙される事は少ないはず。


朝、目が覚めると冒険者さん達が、村を回ってお金を集めてくれていた。もう、誰も生きてないだろうから、お前が使ってもバチは当たらないだろと。


僕は、疑問に思う。


「何故、誰も生きてないって分かるんですか。」


すると、冒険者達が苦々しい表情をして言う。


「これが、落ちてた。これは、この国のマーク。つまりだ、この村を襲ったのは国の騎士団だ。」


「え……?」


確か、エミリーを連れて行ったのも国の騎士団。


「エミリーは、聖女として国の騎士団に連れて行かれました。きっと、彼女も悲しむだろうな。」


「……なるほど。この村、聖女の故郷か。お前、名前は何て名前だ?先ずは、自己紹介しようぜ。」


「ルピカです。種族は、ハーフエルフです。」


すると、驚く冒険者達。


「なるほど、お前が頑なに断ってたのは種族か?」


僕は、無言で頷くと深くため息をつく。


「冒険者に、種族なんて関係ねぇよ。」


「でも、冒険者にはエルフも居るしな。それと、ルピカ。お前は、歳はいくつ?かなり、幼く見えるけど。冒険者は、13歳からだし年齢的に無理か?」


ルピカは、頷いてから冒険者に言う。


「僕は、10歳です。」


すると、残念そうな声を出す冒険者達。


「うーん、10歳…。てか、1人で旅も危険じゃんか。どこか、働く場所を探してやろうか?」


「大丈夫です。それより、お兄さん達は?」


ルピカは、話を逸らす為に笑顔で聞く。


「俺は、ライガ。このパーティー、『風竜の吐息』のリーダーだ。よろしくな、ルピカ。」


「同じく、『風竜の吐息』のマルクだ。」


「ビアンカよ。ルピカ、よろしくね。」


「ヘレン。よろしくお願いします、ルピカ君。」


「カイドだ。まあ、覚えなくても良いが。」


なるほど、しっかり覚えなくては。


「ルピカ、種族はヒューマンだと周りには言え。心底、信頼が出来る相手にしか話すなよ?」


「分かりました、ではお元気で。」


冒険者達は、心配そうながらも去って行った。


ルピカは、深呼吸をしてから焼けた村を、悲しげに見つめ歩き出した。すると、冒険者達が戻って走って戻ってくる。そして、険しい表情で言葉を言う。


「お前、村を焼いた犯人にされてる!この記事、見ろ。どうにか、変装出来ないか?黒い髪に、緑の瞳は特徴的だしな。魔法だと、バレるかもだし。」


「そうだわ、幻獣宝石の片耳のイヤリング!あれには、ステータス上昇と姿を変える能力があるの。しかも、効果は魔法干渉させない。けど、高価なものだから普段はフードを被りなさい。」


ありがとう、ございます。


「なら、気配を変える幻想眼鏡。これは、人の気配を変えるものだ。俺ら、これでもAランクパーティーだからな。気にせず、使ってくれ?」


「あの、でも……」


ビアンカは、素早くルピカの耳にイヤリングを。そして、ライガは眼鏡を掛ける。ルピカは、オドオドしている。ライガは、目線を合わせて優しく言う。


「大丈夫、俺達は知ってる。お前が、殺してない事くらいな。実は、最初から見てたんだ。お前が、村人達に追い出させた時からな。ごめんな、村とかの掟を妨害するのは、気が引けてな。ごめん…。」


「謝らないでください。結局、皆さんは僕を助けてくれました。わざわざ、戻って来て危険を知らせてくれて。更には、貴重なマジックアイテムまで譲ってくれました。本当に、ありがとうございます。」


ルピカの髪は、透き通る様な白銀に。そして、瞳は緑色になる。これで、本当にさよならだ。また、会えるかな。また、会えたら良いなぁ。


そして、今度こそ冒険者達と別れるのだった。

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