第53話 ライカと

「な、なんでござるか?」


 昨日のこともあって少々警戒をする。


「えっと、都獅?」


 その顔を見た都獅から、何かを刺されたような音が聞こえた。そして自分の娘を思い出したのか、娘にデレている父親の顔へと変わった。


「都獅、ライカいちゃだめなの?」

「拙者、ライカがいるの賛成でござる!」


 そう言ってライカを両手で抱き上げ、高い高いをしてあげた。ライカはその行動を笑顔で喜んでいる。


「都獅が洗脳された!」

「いや、洗脳ではなく母性本能をくすぐられたって所だな」

「そうじゃなくて、なんでいるんだ!」

「ライカと約束したんだよ、あの子の父母を見つけるって」


 それで連れてきた、と俺は付け足した。ユウ斗は「だけどな」と顔を顰めてまだ、納得はいっていない。


「それにライカはまだ子供。史上最悪なリヴァイアサンを召喚したとしても操られはしない。だから、俺が躾を兼ねて連れてきた」


 ユウ斗は「それなら」と言って納得をしてくれたようだ。


「あとユウ斗」

「なんだよ」

「都獅がライカのお守をするから、お前はリヴァイアサンの世話係な」

「は!? あの凶暴な奴をか!?」

「大丈夫だ、ライカが危険に会わなければ何もしては来ないというのが分かったからな」

「だけどな!」

「もうここにいるから頼んだぞ」

「え?」


 座っていた後ろにある窓の外を指さした。

 ユウ斗は恐る恐るその窓に近づくと窓から下を見た。

 そこには城の庭園にある大きな泉の中で、気持ち良さそうに泳いでいるリヴァイアサンの姿が合った。真っ黒な姿だから上から見た泉からどこにいるかが、はっきりとわかる。


「ま、そういうことだ。朝昼晩の飯と週一で体を洗ってやってくれ。後は基本的な躾だけでいい」


 ユウ斗の肩に手を置くと、リヴァイアサンから少しも目を離さずに固まっていたが、半泣きの状態で俺の方を振り向いた。


「リョウバ、お前がやれよ! 暇だろうが!」

「残念だったな、俺は今日から王になるための勉強を始める。そんな暇はなくなった」


 俺の言葉を聞いて、床に手と膝を付けて、ユウ斗は絶望をした。


「リョウバ殿、本格的に始めるでござるのだな」


 ライカを抱っこしながら都獅が近付いてきた。ライカはなにの話をしているのか分からない様で、首を傾けている。

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