第51話 一日が終わる
今までの親父との会話を俺たちは闘技場の中央で聞いていた。
「カイ……」
俺たちは戦いに疲れたせいで動けなかった。
何とか動かそうとはしたが、全く体が言うことを聞いてはくれなかったから。
「元凶か」
「カイ殿がそのようなことを考えていたとは」
「ああ……」
俺達は疲れ切った顔でカイの乗ったオオワシが飛んでいく姿を見ながら言った。なにも出来なかったことを少しばかり悔みながら。
カイを倒すことだけは出来たかもしれない。俺達にはリヴァイアサンがいる、その攻撃を使えばオオワシを傷つけることは出来た。
けれどこいつはライカが心配らしく傍を離れようとはしない。まるでライカの親役のように。
でも俺は最初からこいつを使う気はなかった。ライカも皆も疲れきっている、そんな奴らを巻き込むなど出来ない。
俺はちらっと親父が未だいる場所を見た。
親父も俺と同じようにカイがいた空を見上げていた。
俺の気配に気付いたのか俺の方と向き、目が合う。何かを語りかけるような目だったが、親父はすぐに目をそらして行ってしまった。城へ帰ったのだろう。
「終わったか」
「さて、帰って飯食べるか!」
「その前に傷の手当てでござるよ」
ついさっきまでの張りつめた空気は一気に消えてしまった。その様子を見て、俺たちは笑みを浮かべた。
二人のその姿を見ながら、俺はこれから始まるであろう厳しい王の道を信用していたカイのいないこの状況でやって行くのに不安を覚えた。
もうカイに頼ってはいけない。
俺の意思ですべてを決めて、俺の意思で行動して
「傷思ったより深いな」
「痛そうでござるな」
「いや、お前も結構な傷だけどな。ほら」
「痛い! 痛いでござる! つつかないでほしいでござる!」
「ユウ斗、都獅」
こいつらと共に全てを歩む。
「帰るぞ」
「おう」
「御意」
俺たちは夕日を背にその場から立ち上がり、城へ向けて歩き出した。
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