第49話 三人
「そうはさせぬ!」
「やらせねぇ!」
都獅は先ほどより強く刺し、ユウ斗はロボットにさらに攻撃を指示した。
それぞれの攻撃により、リヴァイアサンには傷口ができ、そこから血が流れた。
「ギャアアアアア!」
悲鳴の様なものが混じった声を出し、狂ったように都獅やユウ斗に闇雲に攻撃を仕掛ける。
「さっさと終わらせろ!」
「ああ!」
二人の行動を気にしつつも、俺は広い闘技場の一点へと向かって走った。自分の全力を出して。俺は二人のおかげで何事もなく目指している場所まで走って行けた。
息が切れる頃に俺はやっと目指していた場所へと来れた。ライカの目の前へと。
息が枯れたせいで声が出なかった。
ライカは俺へと顔を向けた。けれどまだ目は虚ろだ。俺の存在に気付き、俺へと手を伸ばした。
「パパ? ママ?」
自分の母と父に勘違いしている様だ。
この姿、この行動で何かを願っているかの様に俺には見えた。胸が締め付けられた。
未だ母と父を呼び続け、俺に手を伸ばす。悲しさが伝わった。寂しさが伝わった。
俺はライカの手を取って、優しくライカを抱きしめる。ライカの虚ろな目が、一瞬揺らめいた。
「パパ、ママ」
俺の背中に手をまわして、幸せそうな顔をした。俺はその顔にズキンと胸が痛むのが分かった。
「……ごめんな、俺はお前の親じゃない」
「え?」
「俺にはこんなことしかできない。お前を抱きしめることしか、親の愛情表現を知らない」
俺には母が抱きしめてくれた記憶しか、愛情表現の仕方を知らない。だからライカに俺ができる限りの親の愛情表現をした。
ライカはその言葉を聞いて、どこか悲しそうにしたが、戸惑う様子もなく俺の背に回した手で、ゆっくりと服を掴んだ。そして、今度は本当に幸せそうに
「暖かい」
と言った。俺はその言葉に驚いたが、ライカの思いに答えるように
「お前の父さんと母さん、いつか一緒に探してやるからな。そしたら、親の愛をたくさんもらえ」
と言った。ライカは幸せそうに
「うん」
と言って、ハラハラと目から涙を浮かべて、色々な出来事に疲れたのか、目を閉じて気を失った。
ライカが気を失った瞬間、リヴァイアサンの動きが止まり「ぐるる」と言いながら犬の様に伏せの体勢を取った。それを見たユウ斗と都獅は「え」と声を出す。
「攻撃をしてこないでござるか?」
「みたい、だな」
二人は拍子抜けをしたようにドサッとその場に仰向けに倒れてしまった。
その倒れた姿を見た俺は、気を失ったライカを抱き抱えて、二人の元へ急いだ。
「大丈夫か二人とも!」
駆け寄ると、二人は苦笑いしながら息を荒くし
「大丈夫の様に見えるかよ」
「久々に疲れたでござる」
と言った。
二人は頑張ってくれた。俺の身勝手な行動に。
「お前たちのこと色々と誤解していたようだが、お前たちは最高の神級だな」
笑顔を見せた。二人もそれに続き笑い返してくれる。
「その笑顔、本物だな」
「リョウバ殿、心の底からの笑顔とお見受けした。でござる」
ニヤニヤと笑って俺を馬鹿にしたように見た。その顔に少々イラつき、
「今ライカがいなかったら、お前達を殴ったぞ」
と二人の目の前に立って言った。二人は俺の怒りに気付き、怪しい笑みを苦笑いへと変えて背中からたくさんの冷や汗を流した。
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