第45話 リヴァイアサン
そうだ、こんなことをしている場合ではない。
俺はリヴァイアサンを見上げた。
遠くで見ていた物とは全く違う。迫力、大きさ、すべてが巨大な真っ黒の獣が、俺を頭上より見降ろしていた。
恐怖心が俺の中に生まれ一歩後ろへ下がってしまう。
怖い、そう思ったが、俺はその思いを抑え込み、リヴァイアサンを鋭く睨みつけた。
しかし、俺の睨みつけもリヴァイアサンには小動物の小さな威嚇と同じ、無意味だろう。
その威嚇をみたリヴァイアサンは口を大きく開けて鋭い牙を俺に見せた。
そして「ガアアア!」と大声で唸りを上げた。
大きなその声とその息により、俺たちは一歩下がってしまった。
その様子を見たリヴァイアサンの顔はなんとなく笑って、俺たちを貶しているかのように見える。
リヴァイアサンの威嚇で俺は勝機が見えなくなった。不安感に襲われ、俺は二人に顔を向ける。けど二人の顔は自信に満ちていた。
そうだ、ここで俺が引いてしまったら何もかもが終わる、何とかして勝つんだ。手に力を込めた。
「リョウバどうする?」
俺の支えを借りながら必死に立つユウ斗が言った。俺は冷静に戦い方を考える。
「リヴァイアサンに攻撃を仕掛けたのか?」
その声に都獅が頷く。
「ユウ斗殿の武器による遠距離戦、拙者の刀の接近戦、共に奴の体には歯も立たなかったでござる」
無念、と言って残念そうな顔をした。
「都獅、俺のはただの武器じゃなくてロケットランチャーと言っただろうが!」
ユウ斗は都獅の「武器」と言った言葉にカチンと来たらしい、都獅に顔を向けて怒鳴った。
都獅はユウ斗に「すまぬ!」と頭を数回下げた。
俺はそんな二人を見ず、リヴァイアサンのことを考えていた。
リヴァイアサンの体にある鱗には、どんな武器でも跳ね返す効果がある。いくら攻撃をしても無意味だ。
「やっぱ攻撃するっていう手しかないか」
「リヴァイアサンを気絶させるしか、方法はないみたいでござるな」
「いや、リヴァイアサンは全ての武器を跳ね返す鱗を持っている。攻撃しても無駄だろう」
そう言うと二人は同時に俺を見た。そしてきれいに言葉を合わせて
「ウソだろ!」
と言った。その声があまりにも近かったため、俺は鼓膜が破れそうだった。
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