第43話 対戦相手
俺は必死に走ってきて、やっと闘技場へ着いた。だが、入ろうとした入り口には見物客であろう貴族達が大勢いた。一体何が起こっているのか、今の俺には全く分からない。
「なんであんな奴が相手なのだ!」
「脱獄してここまで来たってことなの!?」
「俺たちを殺す気なのか!?」
ざわざわと貴族たちはざわめいていた。
(やはりカイは囚人をあの二人の相手に)
ぎゅっと強く手を握った。
二人のことが心配だ。しかし、この状況では中に入りたくても入れない。俺はどうにかしなければとその場に立ち尽くし、考えた。
考えていると周りの声がさっきより一段と聞こえるようになった。
「全く、リョウバ様も何であんなのを召喚したのか」
俺に選ばれた大切な友だ、悪口を言うな。
「いい迷惑だよ、訳のわからない物出されて」
あいつ等は俺を信じてくれた。
「獣ではなく人間なんだぜ? 嘘じゃないのか? 可哀そうに、あいつ等リョウバ様に騙されたまま死ぬぜ?」
(嘘じゃない、俺の前に現れた、俺の召喚獣だ。死になどするものか)
「あんな神級とかいう変なものは、あの囚人に倒されてしまえばいいのよ」
(なぜ、なぜそのようなことを言う?)
貴族達の言葉がどんどんと俺の耳に入って行き、俺はユウ斗と都獅を侮辱するその言葉に怒りを覚えた。そして
「黙れ……黙れ、お前たち!」
と大声を出して、貴族達に言っていた。貴族たちは俺の大声に気付いてその場で足を止め、俺を見た。
「リョウバ様!?」
「な、なぜこのような所に」
「棄権をしたのでは」
俺がいたことにも気付いていなかったのか、驚いてざわめき出した。俺は怒りが抑えられなくなり
「黙れ!」
ともう一度大声で言い静止させた。その大声を聞いた貴族たちは目を見開きながら声を出すのをやめた。俺の体から出す殺気に震えている者もいる。
「おい」
俺は近くにいた貴族の男に重音で声をかけた。男はびくっと体を震わし、「は、はい」と答えた。
「中にいる囚人は誰だ」
「な、中にいるのはライカ・コウ、です」
カイが言っていた囚人がライカ・コウとは考えたものだ。リヴァイアサンは誰も勝ち目などない。
貴族の震えたその声に俺は気にせず、一歩足を踏み出した。それを見た周囲の貴族は俺に道を開けるように横へずれた。
闘技場へつなぐ一本の道がそこに現れた。
「貴族ども、二度と俺の召喚獣を侮辱するな。その時は俺が、王が直々に裁きを下してやる」
俺の一言にその場は静まり返った。
それをいった後俺は二人の元へと走って行った。
「な、なに言っているのだろうな、リョウバ様は」
「ははは、む、無理に決まっているのに」
そんな言葉がちらほらと聞こえたが、すぐになくなった。俺がいなくなってもしばらく誰もその場を去ろうとせず、静けさが続いた。
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