第41話 少女
「こいつが殺気の正体だと?」
信じられないという顔をしながらユウ斗は言った。二人が拍子抜けをしていると貴族達の中から小さな声が聞こえた。
「ライカ・コウよーー」
その声は恐怖に脅えているかのように、震えた声だった。その声に続くかのように次々と貴族たちは声を上げた。
「ライカ・コウだって!?」
「何でここに奴がいるのだ!?」
「イヤー!!」
「逃げろ! 殺されるぞ!」
「あいつの獣、史上最悪のドラゴンがやってくる!」
騒ぎ出した声を合図に、貴族たちは出口へと逃げ出した。一斉に外に出ようとしたため、出口は一瞬にして詰まってしまう。
「早く行け!」
「邪魔だ!」
自分のことしか考えていない貴族達の声が場内に響き渡った。
貴族達のことなどどうでもいいかのように、二人には貴族達の声は耳に入らず、ただ相手の少女を見つめていた。
「ライカ・コウ、確か紙に載っていた奴だよな?」
ユウ斗の問いに都獅は頷き「そうでござる」と言った。ユウ斗はその名前を思いだした。
「無理やり親に召喚ってやつをさせられて、出たのが史上最悪って獣だった。だから牢に入れられたってリョウバが言っていた奴か」
「彼女は親の身勝手で、訳のわからないまま両親と離ればなれになってしまったでござる」
都獅は少女を見た。少女は相変わらず朦朧とした目でどこかを見つめている。まるでここに心がないかのように。
「重要危険人物って訳だ。ひどいな」
ユウ斗の目はどこかイラついているように、また悲しそうに言った。
その時、少女は動き始めた。
何かを呼ぶかのように、両手を前へだした。すると後ろから引きずる音が聞こえ、何かが現れた。
その正体は、全身真っ黒で背丈は二十階建のビルに等しく、体が蛇状でウツボとワニを合成した魚の様な巨大な生物だった。
生物は少女のいる場所を確認すると少女の隣へ来て動きをとめた。これが少女の獣。
ユウ斗はその正体を見てハっと何かを思い出したように言葉に出した。
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