第40話 傷
「な、何事!?」
「最強の戦士が倒れたぞ!」
慌てふためく貴族達の中、ユウ斗と都獅はそんな貴族達は気にせず、倒れた者たちが気になって見つめていた。
「一瞬にして深い傷ができているな」
ユウ斗が注目したのは二人の人間の背中に何かに斬られたように、深い傷口ができているところだ。
「誰かの行為でござるな」
都獅は同じような傷がドラゴンたちにもあることに気付き、見ていた。ドラゴンたちには一体は背に、もう一体は首に傷があった。
二人は倒れた者達を見ながら冷静に判断をした。
人が目の前で倒れるこの状況に二人は貴族達の様に慌てなかった。このような状況は見慣れていたのだ。
二人の世界は治安が悪かった。だからこの様な事は日常茶飯事の用なものだった。
誰かが誰かを傷つける。兵器が人間を傷つけている。目の前で起こる、人が傷つくこの出来事に。
倒れている者達を見ていると、ジャラと鉄を引っ張られる音が聞こえた。それに気付いた二人は警戒をするように、その音の方向を向いた。
音は相手が出てきた場所から聞こえてくる。只ならぬ殺気を感じた。
気を引き締め、いつでも戦っていいように戦闘態勢をとる。さっきの相手とはまた違う、今度は「殺す」と言っているかのように、その場所から嫌な空気が全体を囲んでいた。
二人は息をのんだ。
鉄の音はどんどんと音が大きくなり、近づいてくる。それと同時に人の足音と、ズルズルと何かを引きずっているような音も聞こえてきた。
「何の音でござるか」
「鳥肌が立って来たぜ」
背に冷や汗を流しながら相手の姿が見えるのを待った。
相手は今ここにいる最強と呼ばれる戦士を一瞬で倒した。それほどの相手を一瞬で倒すなど、とても強い奴と分かり切っている。
相手の入り口からすべての音がぴたりと止まった。二人は目を見開いた。
そこにいたのは両手に手錠をかけられ、元は白かったであろう薄汚れたワンピースの様な服を一枚着た十歳くらいの少女が金の長髪を地につけ、朦朧とした目をしながら立っていた。
「子供?」
都獅は思っても見なかった相手で、気の抜けた声を出した。
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