第39話 部隊長

その時、ユウ斗と都獅は円形の闘技場の中央に立たされていた。武具を一切付けず自分の持っていた武器と身一つで。

 二人を囲むように貴族達が座って、くすくすと笑いながら二人を見ている。


「ゆ、ユウ斗殿、ここに立つのはとても嫌でござる」


 あまりの緊張からなのか、都獅はガタガタと体を震えさせていた。


「どうやら俺様達が負ける姿を見たいみたいだな。神級は珍しいし、負けるところはもっと珍しい」


 ユウ斗は呆れながら周囲の貴族を見ていた。

 周囲のやつらから見ても、負けは決まっているようなもの。

 都獅は着物で布一枚の様な格好で、武器は腰にある刀一本。ユウ斗も服はつなぎ一枚で、武器はユウ斗の後ろに置いてある布を被せた大きな何かだけ。

 これだけで戦いをするのは無謀だった。しかし彼らを闘技場に入れるとき、誰も止めはしなかった。さも「負けに行ってください」と言わんばかりに。


「さっさと帰りたいな」

「は、早くこの場を立ち去りたいでござる!」


 けれど二人には「負ける」という考えはなかった。むしろ「勝つ」という気持ちの方が大きかった。

 だれがどう思っているなど今は関係のない話。自分達はリョウバに協力すると誓ったのだから。

 二人が話をしていると突然「わー!」と周囲から奇声の声が上がった。どうやら自分たちの相手が登場をするようだ。


「リョウバが来るまで持たせるぞ」


 仁王立ちで偉そうに相手が出てくる場所を見ながら、ユウ斗は言った。都獅は深呼吸をして体を落ち着かせて


「御意」


 と強い眼差しで答えた。

 予想はしていたが、やはりリョウバが来るまでは待ってくれない様だ。ユウ斗は周囲の貴族達をぐるっと見た。そこにはVIP席の様な豪華な所に座って無表情でユウ斗達を見ている王もいた。その姿を見て、舌打ちをする。


「都獅、手抜きするなよ」

「拙者はいつでも本気でござる」


 ユウ斗は後ろに置いて布を被せていた物を肩に抱え、都獅は腰の鞘から刀をゆっくりと抜いた。準備態勢が整ったように二人は相手を見る。

 目の前の入り口から二人の人影と、巨大な影が見えた。一歩一歩と近づいてくる。光が注ぐ場所まで歩いて来ると、それの姿が分かった。それは鎧を着た男が二人と、とても大きな西洋の青いドラゴンと東洋の緑色のドラゴンの二体のドラゴンの姿だった。


「最強の戦士の登場だ!」

「アキラ・シン様とトウガ・シン様よ!」

「部隊の一番隊長と二番隊長だぜ! しかも彼らの獣は高級最強の戦闘力を持つドラゴンだ!」

「奴ら終わったな!」


 歓声が最高潮に達した。その相手を見ながら


「やっぱ一対二じゃなく、二対二か」


 とユウ斗はそう言って「仕方ない」と溜息をついた。その時、突然相手はドラゴンたちと共に地面へと倒れ、血を流した。


「!?」


 予想をしてなかった出来事に、周囲にいた貴族達が驚き、騒ぎ出す。


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