第32話 ルス
肌寒さを感じ、俺は目を覚ました。肌に当たる床の冷たさに違和感を覚え、薄暗い周囲を見る。
「どこだ」
見渡したそこには、大量の本がいたるところに積み上げられていた。そして大量の埃がその本たちを包んでいる。どうやらここはもう使われていない書庫の様だ。
しかしなぜ自分がこの様なところにいる? 昨日はベッドの上に行き、寝たはずだ。
夜中の内に連れて来られたのか。嫌な予感がした。
体を動かし、どうにかしてこの状況を確かめようとした。だが、腕を縛られているようだ。動かせない。
「身動きを封じられたか」
やはり自分が捕えられている身だと気付いた。
「一体なんの目的で」
「お気づきになられましたか?」
聞き覚えのある声が聞こえた。声の方を向くと、そこには一本のキャンドルを持って、一歩一歩と俺に近づいてくるルスの姿があった。
「ルス」
「もう少し眠っていても良かったのですが、この時間まで寝ていたなら大丈夫でしょう」
ルスは自分の内ポケットから懐中時計を取り出して、開き、俺に見せた。
時計の針は正午を示している。俺は警戒をしながら、ルスを見た。
「何の話だ?」
俺がそう言うとルスはニヤリと口を上げ、顔を下へ向けたと思うとすぐに上げた。その顔は
「親父!?」
親父になっていた。服はルスの時と同じ燕尾服のまま。
「お前のために三日間猶予を与えた」
声も親父と一緒。
「お前、何者だ?」
そう言うと、今度はユウ斗の顔、声に変わった。
「くくく、でもな、三日もいらない」
次に都獅に変わって、胸ぐらを掴み俺を持ち上げた。
いきなりのことに俺は一瞬、顔が歪んだが、すぐに睨み直した。
「もうあと一日などいりません。さっさと闘技を始めてくださいって言って来てやったぞ」
そして顔を近づけ
「この顔でな」
と言って俺の顔に変わった。相手のあまりの変わり様と、言った言葉に俺は目を見開いた。
「お前」
「今日が闘技の日だ。そしてお前を追放する日」
また不敵な笑みを、俺に向かってを浮かべた。俺はイラつきを覚え
「何者だ、正体を見せやがれ!」
と掴まれている胸ぐらを振りほどき、相手の額に向かって、勢いよく頭突きをした。
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