第31話 待つ二人
「これは王様の命令だから、逆らえない」
その場がシンと静まりかえった。
「だから、リョウバ様がいない今、闘技はできない。だが、召喚した者がいなくとも、王様は闘技をするだろう」
王はもともとリョウバを王にはさせないつもりだ。リョウバが召喚したのは神級。リョウバがいなくても自分の意思で戦ってはいける。
「リョウバ様を見つけるまでなんとか私が、時間を引き延ばせないか交渉をしても持って多分一時間だ。その間にリョウバ様を探しださないと!」
と言ってカイはまた「どうしたらいい!」と頭を抱えて部屋中を歩き回った。そんなカイを見ながらユウ斗は自分の前で腕組をし、都獅と話を始めた。
「どうする都獅?」
「どうすると申されても、リョウバ殿がいなければなにもできないでござるよ」
「ったく、リョウバは一体どこに行きやがった」
ユウ斗は舌打ちをした。
自分たちがこの場にいても事は進まない。だが、リョウバがいない今、自分たちは何もできない。ユウ斗は都獅を見た。
「仕方ないな、都獅」
「何でござるか?」
「こい」
と一言いって、どこかに行こうとした。それに気付いたカイは「お探しになるのか?」とカイは付け足して言った。その言葉にユウ斗はふっと鼻で笑い「バーカ」と言った。カイはユウ斗のその行動に怒りを覚え、また胸ぐらをつかもうとユウ斗によって来た。
「リョウバは探さなくても出てくる。あいつは自分から言ってきたんだ。言った本人が出てこないなんてありえない」
カイは足をとめた。ユウ斗は自分よりリョウバのことを分かっている、そう思ってしまったからだ。
「都獅、カイから闘技場所と時間聞いておけ。あと、これから機械の最終調整をする。手伝え」
ユウ斗は部屋の扉へと向かい歩き出した。
「リョウバ殿はどうするでござるか?」
「そんなのカイが探すだろう」
その言葉にカイはバッとユウ斗の方を向き、信じられないといった顔をした。
「お前の大切な主人なんだろ? だったら全力で探せよ」
ユウ斗の強い眼差しがカイを見る。カイは小さく頷いた。それを見たユウ斗は笑みを浮かべ、また歩き出した。
「リョウバは闘技の話しを聞いたら、直行で闘技に来るだろうからな。その辺は大丈夫だろう」
「分かったでござる」
大きく頷いて笑った。
カイから、時刻と場所を聞き「ありがとう」と一言言って、ユウ斗の後ろに付いた。
「リョウバが来るまで持たせるぞ」
「御意」
顔を見合わせ、強い眼差しをして目の前にある扉をあけユウ斗が弄っていた機械がある場所へ向かった。
二人が部屋を出ていくまで、カイは二人の背中を見送った。
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