第24話 カレンの話

「ばれたか」

「何があった?」


 都獅が聞くと、カレンはその横に座った。それに続いて、クーも横へと座り、じっとカレンを見つめる。


「……私の友人がいるのだけど、その子にさ、もう会わないでと冷たくいわれてね」

「ほう」

「なんか私にはわからない事が色々あるらしくて」


 カレンはゆっくりとクーへ手を伸ばし、頭をなでた。クーは気持ちがいいのか、ぱたぱたと尻尾を振っている。


「彼二日前、急に私の目の前から消えたの。家の都合でと言って。彼が王族なのは知っていた。けど、それは彼のお兄さんに関係のあることで、彼には関係の無いことだったのに」


 俺は出て、二人に姿を見せようか、と考えていたが、カレンの話が始まったので、近くの木に背を凭れかけて座った。


「彼が王に即位するって知った。知ったのは私が城に忍び込んだからなんだけどさ」

「忍びこんだでござるか!? なんという危険なことを」

「大丈夫、慣れているから! でさ、会った彼は、お兄さんの代りだから嫌々だったけど、王になろうと頑張っていた」

「そうでござるか」

「彼ね、召喚獣の神級を出したみたいなの! すごいよね! どんなのだったのだろう」


 その神級はお前の隣にいるぞ、といってやりたかった。都獅はなんとく話が理解できたのか、苦笑いをしていた。


「彼、前までここにいて喧嘩ばかりしていたから、貴族の人とかから良くない目で見られているの。いい子なんだけどね。ちょっと不器用だけど」


 カレンの声が小さくなっていくのが分かった。声だけだが、俺はカレンの今の表情がわかるような気がした。カレンはきっと今、泣きそうになっている。


「本当は認められたいのよ、彼は王様やみんなに。だから焦って、昨日怒ったのかな」


 声が震えている。けど、また昨日の様に俺にはなにもできない。拳を作り、強く握った。


「でも、なんか前より遠く彼を感じる。それがさみしかったみたい、私」


 カレンは空を見上げた。俺も同じように空を見上げる。

 お互いがお互い、自分を遠くに感じているのか。今までの様にはもう行かないのか、楽しかったあの日のようには戻れないのか。きっとカレンと俺は今同じことを思っているのだろうと思った。

 カレンにはもう会うことすら俺には許されないような気がした。


「ふむ」


 今まで釣竿の方ばかり見ていた都獅が、カレンの方を向いた。


「カレン殿、其の者はカレン殿に会えて本当は嬉しかったのでござるよ。ただ表に出してはいけないと思って、嬉しさを隠すように冷たさを出してしまったのでござる」


 俺はつい身を乗り出して、都獅の方を向いた。

 都獅の言葉に俺は驚いた。こいつ、俺のこと見ていなかったはずなのになぜ分かる?

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