第18話 カレン
食事を終え、ルスと手分けしてあいつらを探そうと俺は中庭が見える廊下を一人で歩く。
周囲を見落とさないようにしっかりと周りを見て、長い廊下を進んだ。
「ここにはいないようだな」
と思った時
「オン!」
と犬の鳴き声が聞こえた。声は中庭の方からする様だ。しかもこの犬の声は聞いたことがある。
「クー! ここで鳴いちゃだめって言ったでしょ!」
そしてこの女の声は、すごく聞き覚えがある。というか昨日も聞いた。
「カレンも大声出すな」
俺は冷静に言った。「あ、ははは」と苦笑いをして、笑う。
昨日怒られたというのに今日も来るなんて、こいつはユウ斗より馬鹿というか。
「カレン、帰れ」
「今日は式典ないでしょ! いいじゃない!」
カレンはいつもの様に偉そうに言ってきた。懲りないな、こいつも。
「今日は泥だらけじゃないな、頭のいいクーの力でも借りてきたか? クーも大変だな」
嫌味ったらしく言うと、カレンは「何よ!」と怒ってきた。
クーはカレンが怒っているのなど無視をして、尻尾をぱたぱたと振りながら俺に向かって走ってきた。俺の近くに来たクーを優しく撫でてやると、気持ち良さそうに「オン!」と鳴いた。
この犬、クーは普通の犬より一回り大きい真っ白な犬だ。つい一か月前にカレンが召喚したパートナーでもある。クーはそこらの低級より数倍に頭がいい。自分の任された仕事はきちんとこなし、悪人は必ず捕まえる。そしてカレンのことを一番に考えて、行動をする。優秀な犬だ。カレンが持っているのはもったいないくらいの。
俺がクーを撫でているのを見て、カレンはため息をついいた。
「まったく、私が直々にお祝いしてあげようと思って来ているのだから喜びなさいよ!」
カレンのその言葉に反応をして、クーをなでるのをやめた。
「……昨日は悪かったわね」
気まずいのか、俺の顔を見ずにカレンは言った。
「いや」
「聞いたわよ、アオバのこと」
「……そうか」
「なんでアオバいなくなったのよ」
「俺が知るかよ」
ポケットに手を突っ込み、空を見上げた。今日も苛つきを覚えるくらいの晴天だ。
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