第17話 早朝

 窓から朝日が差し込む。その光が目にかかり、眩しくなって俺は目を開けた。体の節々が痛い。どうやら昨日、本を読みながら椅子の上で寝てしまったらしい。

 俺は椅子から立ち上がり、昨日から着ていた服を着替える。さすがに昨日の物を今日も着ていたくはない。

 昨日の豪華な服とは打って変わって、シンプルな無地のシャツとジーパンにした。

 闘技まであと三日。俺は全く奴らの戦闘方法を知らない。奴らの戦闘の方法を知らなければ、どう戦えば勝つかもわからない。この三日のうちに戦闘方法を知って、それから戦略を考えなければ。

 いつもしている喧嘩とは、戦い方も大きく違うから慎重に行かなければな。

 俺が考えていると、ノックをする音が扉から聞こえた。いつものようにカイが起こしに来たのだろうと俺は思い「入れ」と言った。しかし扉を開けた向こうにいたのは、カイではなくルスだった。


「おはようございます、リョウバ様」


 ルスは一礼をすると、一緒に持ってきた台車に乗っている朝食をテーブルの上へと並べ始めた。その様子を見ながら、脱いだ服を先ほどまで寝ていた椅子にかけソファへと座る。


「朝からルスが来るとは、珍しいな」

「本日カイは外せない用があり休暇を取っておりますので、私が一日リョウバ様の身の回りのお世話をさせていただきます」


 俺はその話を聞かされていなかったので、少々驚いた。今までなにかあったなら必ず言うはずのカイが、何も言わないで休暇を取ったからだ。

 はずせない用か、何か嫌な予感がするが、カイのことだ大丈夫だろう。そう思い、「頼む」と一言ルスに言って食事を始めた。

 カチャカチャと食器の音だけが部屋に響く。

 食事を数口した時、ふと部屋が静かなのに気付いた。


「ユウ斗と都獅はどうした?」


 二人が居ないことに気付いた。昨日あれだけ騒がしかったのに、今日静かになるとは考えにくい。


「神級の者のことでしょうか。それでしたら、朝早く出かけるのをメイドたちが見ております」


 その言葉を聞き、食事をやめた。

 あいつ等はいちいち世話の焼けることを。この国のことも一切分かっていない癖に、うろうろ出る奴がいるだろうか。ユウ斗はともかく都獅まで、あいつはしっかりしていると思ったのだが。

 色々と考えると頭が痛くなり、深くため息をついた。


「どこに行ったかわかるか?」

「行先は分かっておりません」


「申し訳ありません」とつけたし、頭を下げてきた。

 ルスが悪いわけではない。問題を起こしたのはあいつ等の方だ。今日この世界のことを再度教えてやろうと思っていたのに、あいつ等は。計画が台無しではないか。見つけたら一発殴ってやろうと思った。

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