第16話 獣との闘技

「ルス」

「はい」

「対戦相手は決まっているのか?」

「先ほどお渡しいたしました紙に、書かれております」


 そう言えば紙を渡されていたな、と思い出し紙を見た。

 対戦相手で勝敗がどちらに傾くか決まる。こちらは「神級」。同じものはまだいない。きっと対戦相手は高級の上位のものだろう。

 そう思いながら紙を開く。


「紙に書かれているのは、選抜中の相手でございます」


 紙にはたくさんの名前と顔の絵がズラリと書かれていた。相手の名前を通し目で見る限り、強い相手ばかりだ。


「うわっ男ばっかりじゃないか! ガタイいいやつから、ひょろい奴まで色々だなー」


 いつの間にか、俺の肩に顎を置いて、ユウ斗は一緒に紙を見る。


「アキラ・シン? 変な名前だな」

「アキラ・シン……まさか!」


 ユウ斗の読んだ名を聞き、カイは俺の目の前に回り込み、同じように紙を見た。


「アキラ・シン、トウガ・シン、リュウキ・シン……リョウバ様!」


 あり得ないというような顔をして、カイは俺を見た。俺もそれに頷く。


「お前の察しの通り、これは隊長たちだ」


 この国には国を守る警備隊がある。隊は一から五まで存在しており、各隊の隊長は名前の最後に「シン」とつけるのが義務づけられている。

 まさか隊長を出してくるとは、親父も考えたものだ。


「リョウバ殿、二枚目には少女の絵が書かれているでござるよ」


 都獅は下から俺の見ている紙を見て、言った。こいつがなぜ、下から来たのかという疑問は置いておこう。

 都獅が言った紙を、さっきまで見ていた紙の上へ乗せた。


「ライカ・コウ? この少女以外は男ばかりでござるな」

「悪人面だな」

「こいつら犯罪者だからな」


 俺の言った一言により、二人は笑いをやめ、固まった。

 こいつらは過去に罪を犯して、今は牢に入っている。

 ちなみにさっきの少女は罪を犯した訳ではない。幼いながらに無理やり親に、史上最悪とも言える獣を召喚させられ、危険と判断され、牢に入れられた子だ。親が身勝手なために。

 だが、犯罪者とも戦わせようとは、何を考えているのだ。

 一通り見終わった紙をルスに渡し「さがれ」と言った。ルスは一度頭を下げて、部屋を出る。

 俺は食事の途中だったのを思い出し、カイが古典書を開き直して、また読みながら食事を再開した。


「……リョウバ様」

「なんだ?」

「……いえ」


 きっとカイは心配をしているのだろう。


「親父は何が何でも俺を王にはしたくない事がよくわかった。この国から追放をしたいみたいだしな」

「……」


 俺の言葉でその場が静まり返った。

 俺は自分の言った言葉で、心が締め付けられるのを感じた。今さら何を思うのだ。始めから分かっていたことだろう。

 この感じが悲しみと似ていることに、俺は気付かないふりをした。

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