第10話 召喚獣?
「リョウバ様!」
俺のその姿を見て、カイは後から走ってついてきた。
「何するガキ! どこに連れていく気だ!!」
何とか抵抗しようとする青つなぎだが、俺の力の方が強いのか、何をしても無意味だった。それに対し、着物は全くの無抵抗。本当に生きているのか心配なくらいだ。
「リョウバ様が起きたら伝言を、と頼まれたのですが」
「伝言? 誰だ」
「お父上様です」
その名前を聞いた瞬間、苛立ちを覚えた。
「起きて、歩けるようになったのならすぐに部屋を訪れよ、とのことです」
きっとまた嫌味を言われるのだろう、と俺は心の中で思った。こいつらに状況説明をしなくてはならないというのに。忙しいときにあの糞親父は。
「……わかった。その代りカイ、古典書を探して俺の部屋に置いておいてくれ。神級のことが少しでもわかるかも知れないからな」
「かしこまりました」
カイは俺に一礼し、俺から離れて行った。
「お前たち」
「なんだよ!」
機嫌悪そうに返事をする、青つなぎ。
「俺は今から糞親父の元へ行かなくてはならなくなった。だからこの場におとなしく待っていろ」
「指図するな、俺はそういうのが大嫌いなんだよ」
青つなぎは苛ついた顔でこちらを見てきた。だが俺はそれを無視し、近くの柱に鎖をつけ、そいつらを置いて親父がいる部屋へと向かった。
残された二人は、柱の近くにある壁に寄り掛かる。
「おい、侍」
青つなぎが声をかけるが
「……」
侍はやはり無反応だ。
「なんか話せよ」
今度は強い口調で言う。すると侍は弱弱しく
「ここはどこなのでござるか?」
と口を開け、不安げに言った。青つなぎはため息をつきながら
「そんなの俺が知りたいくらいだよ。わかっているのは俺達みたいな奴も、お前みたいな奴も誰一人いないってことだけだ」
と答えた。その答えを聞いた侍は震える手で、自分の服を握り言った。
「それは……拙者たちが生きてはいけない世界、という訳ではないのでござるか?」
不安に満ちている侍の目を見て、青つなぎは関心のないように
「さあな」
二人は目の前の、突き抜けになっている廊下から同時に空を見た。その空は自分たちがいつも見ているものとなんら変わりはなかった。
違うのは見たこともない生物が、空を飛んでいることだけ。
用事をすませ、あいつらのいるところへと向かった。そこには二人が空を見上げている姿があった。
「逃げなかったか」
俺がそういうと、二人は俺の存在に気付き、顔を向けた。青つなぎは睨み、着物の奴はどうすればいいかと戸惑っている。
「部屋に戻るぞ」
そんな二人は気にせず、俺は柱についていた鎖を解き、自由にした。そして二人に、俺の後をついてくるように言った。
「おい、なに解いているんだ」
俺が解いたことに疑問を覚えたのか、青つなぎは一歩も動かずに言った。
「鎖を解いたんだ。そっちの方が歩きやすいだろ? とりあえずこの状況は部屋に戻ってから話す」
俺がそういうと納得できないという顔をしながらも、二人は後をついてきた。
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