第5話 召喚の儀式

 いつの間にか広間の前についてしまった。


「すでに中には貴族の方々がいますので、このまま召喚の儀となります。召喚の方法ですが」

「召喚のための陣がすでに書いてあるだろうから、その中に入ればいいんだろ?」

「左様でございます。陣に光が現れ、それとともに獣が召喚されます」


 ふうと俺はため息をついた。


「こんなものを見て、なにが楽しいのかわからないな」

「これも交流の一つですので」


 カイは胸ポケットにしまってある懐中時計を開き、時間を見た。


「時間になりました、いってらっしゃいませ」

 カイはゆっくりと重そうな扉を開き、俺に一礼をした。それを見て、俺は広間の中へ入って行った。

 背筋を伸ばし、一歩一歩しっかりと地に足をつけ、堂々と貴族たちの前を歩く。


「リョウバ様よ」

「リョウバ様? 兄上のアオバ様じゃない?」

「リョウバ様は何の教育もされていないとお聞きしたわよ」

「あのような子が王になって大丈夫なのかしら?」


 派手な格好をした貴族たちは、ざわめき始めた。こうなることは予想していたが、やはりうるさい。俺は気にしないように、広間の中心に書かれている陣の中へと入った。


「これよりリョウバ王即位式、召喚の儀を執り行う!」


 親父の隣にいる執事が大きな声を出していった。それを聞いた貴族たちは黙り、ジっと俺を見る。その視線がなんだか気持悪かった。俺は一度親父の方を向いた。親父は


「始めよ、リョウバ」


 と睨みつけるような目をして俺を見ていた。その目を見て、俺もにらみ返すように親父を見て


「はい」


 といい、目を瞑った。

 その時、陣に数個の光が現れ、陣を包む。何か、不思議な感覚だ。


「これが召喚か」


 この光の中から俺の獣が現れるのか。そしてその獣と共に俺はこの国の王となる。考えもしなかったことが現実に起きてしまった。兄貴のせいで俺は自分の人生がなくなってしまったのか。なんだかまた変な気持になってきた。兄貴は一体何を思って、この国から逃げたのだろう。

(俺よりこの国が好きだと昔に言っていたのに……なぜ?)

 色々と考えていたその時。


「!?」


 光が一気に膨らんだ。それに驚きつい目を開けてしまった。


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