第4話 王即位の式典

 しかし、一体どうやってここまで入って来たというのか。カレンは貴族でも王族でもない。だからここに入ってくるのは困難だ。門には厳重に警備隊が配置されている。カレンのことだ、大方城の中にある塀まで伸びている木を登って来たのだろう。男勝りな女だ。

 だが、今はそんなことを考えている暇はない。


「やっと見つけたよ! もう、城の中探したんだからね!」


 カレンは「偉いだろう」というように胸を張って言ってきた。元気に明るく言ってくるカレンに対し、俺は


「帰れ」


 と突き放すように言った。その言葉を聞いたカレンは目を見開き怒ってくる。


「な、何で!」

「今は大事な式の前だ。だから帰れ」


 怒っているカレンの言葉など今は耳に入れるだけで、怒りが溢れる。カレンに当たらないように俺はいたって冷静に対応した。


「式って、あんたのお兄さんのアオバの方じゃない! リョウバには関係ないじゃない!」


 そう言うと、カレンは俺の姿を再度見た。


「……なんであんたがそんな格好しているのよ?」


 俺が装飾品にまとわれているのに気付いたらしい。本来ならこの格好は兄貴が着るべきものだ。それに気付いたカレンは、唖然としていた。


「詳しい話は明日町中に話が流れるだろう、それまで待て」


 そう言って、俺はカイを引き連れ歩きだした。カレンはハっと気付き


「ちょっとどういうことなのよ! わかる訳ないじゃない!」


 と大声をだして、俺を止めようとした。その声を聞いて、俺はついに何かがはじけた。


「黙れ!!」


 今までにないというくらいに、大声を出してしまった。その声にカイとカレンがビクリと肩を揺らしたのがわかった。


「……今は帰れ、カレン」


 俺はカレンから顔を背け、カレンの方を見ずに歩き出す。カレンはその場に立ち尽くしたままだった。


「リョウバ様」

「カイ、着くまで黙っていてくれ」

「……はい」


 俺たちはカレンの姿が見えなくなるまで、無言だった。

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