第2話 王即位の式典
「カイ、いたのか」
こいつの名前はカイ、俺の幼い頃からの執事だ。俺の一番の理解者でもある。
「自室にいろだと、自分で俺を呼んだくせに嫌味ばっかり言いやがった」
フンと鼻を鳴らして、ズカズカと自室じゃない方に向かって歩いた。あの親父の言うことを聞きたくなんかない。
「お父上様は、リョウバ様が心配なのですよ」
俺についてこようと、長い脚を少し大きめに開いて後ろを歩いてくるカイ。
「は? 『低級を召喚したら国の恥』とか言っている奴が? 絶対にないな」
俺はその場に立ち止まり、突き抜けになっている廊下から空を見た。
空には青い空、白い雲、そして昔の時代にはありえなかったであろう、東洋の龍や西洋のドラゴンが優雅に空を飛んでいる。
今の俺より一つ上の十八歳になると、学校の授業の一環で必ず「召喚」をさせられる。
千年くらい前に超古代文明が発見され、その時に「召喚」というものが使われており、それを今の時代にも適用したのが始まりだ。
共に働き、生きていくパートナーとして獣を召喚する。その獣には種類が多数存在するが、大まかに分けると「低級」「中級」「高級」の三種類。
低級は小柄な獣で犬や猫、鳥などだ。
中級は中型、馬や牛、猪など。
高級はこの世界に通常では存在されていないとみなされている生物たち、例えばドラゴンや龍、ピクシーなどだ。
高級を召喚できるのはごく一部にとどまられている。王族や貴族が多い。まれに一般市民にも高級を召喚する者がいるが、そういう者は即、貴族の仲間入りとなり、金持ちになる。
あとひとつ、例外で「神級」というものが存在するが、これは文字通り神の級なのでこの時代で召喚したものは誰一人としていない。
「リョウバ様、お父上様はありもしないことをおっしゃり、安心させようとしたのですよ」
カイの言葉を聞き、俺はぴくっと眉が動いた。
「カイ、俺は王族だ」
「はい、そして次期王でもあります」
カイは俺に向かって頭を下げた。ギュッとさっき壁を殴った手を強く握る。
「俺は……二日前まで自由に生きてきた! 学校に行くのも、喧嘩をするのも俺の勝手だった! 今まで両親は俺に眼さえも向けなかったぞ!? そんな奴が王になどなっていいはずがない!」
そうだ、俺は王の仕事など、全く何も知らないで今から王に就こうという。馬鹿げた話だ、今まで王になるために色々な知識を詰め込んだ奴がいるというのに、俺を王にしようなんて。
「馬鹿げた話だ、本当に」
俺はあきれた表情をして、どこに向かうでもなく、ゆっくりと歩き出した。
「……」
カイは黙り、その場に立ち尽くした。
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