開店セール

 家の近くに「ダイレックス」というお店が新しくできたらしい。

 近所とはいえまったく縁のない方向だったため、開店セールのチラシ広告を見るまでまったく気がつかなった。母もそんな様子だった。

 広告チラシを見たところ、食料品を扱うスーパーマーケットという品揃えだったが、家電や衣料も扱っている。駐車場もわりと広い。

「ひょっとしたら、ロジャースみたいな店舗なのかな?」

 などと自分にとって都合の良い想像する。歩いて数分のところにロジャースがあったら最高だ。

 とはいえ、実際に行ってみるまでは、どういった店なのかわからない。僕は行ってみることにした。

 せっかくの開店セールなので、母にも行くように勧めたのだが、あまり乗り気ではなかった。どうやら、広告に掲載されている商品がどうにも胡散臭いとのこと。

「ほんとにこんな値段なのかねぇ……?」

「開店セールだから安いんだろ」

「でもこんなメーカー聞いたこともないし……」

「行ってみなきゃわかんないでしょうよ。こんだけ近くに新しい店ができたら、“とにもかくにも行ってみる”というのが正しい主婦の在り方ってもんじゃないのかい?」

「でもねぇ……」

 雨が降っていたこともあり、母はやはり行く気がないらしい。僕が出かけようとすると、「菓子パン安かったら、いくつか買ってきて」と、しれっと頼んできた。

 国道の先にその店はあった。期待していたほどの大きさではなかったが、それでも中型スーパーマーケットくらいの店舗規模である。見つかるかどうか少し不安だったが、その心配は無用だった。ただ、国道を渡る際に信号機がないので、渡るまでに時間がかかる。今後利用することはもうないかも知れない。

 さて、肝心の店舗の中身についてだが、一階建ての構造で肉や野菜も売っている。なんともカオスな状態だ。今流行りの生鮮食品も売っているドラッグストアというやつか。なんとエアコンまで売られていた。

 店内を物色していると、母が声をかけてきた。結局、気になって来たらしい。

 母曰く、やはり他店舗よりも同商品が安い値段で売っているそうな。あんだけ訝しんでいたにもかかわらず、ここぞとばかりにカートに品物を入れていく。最終的に母は約1万円のお買い物をして、僕は体のいい荷物係となってしまい、自分の買い物ができなかった。

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