リモコン
姉の提案により、台所をリフォームすることになった。
正直、俺は反対だったのだが、姉の決定には逆らえず、母も賛成していたので、しぶしぶ承諾。改修費用は皆で折半して支払うことになった。
「それで、結局俺はいくら払えばいいんだ?」
等分で割るというのも納得がいかない話だが、払うべきものはさっさと払ってしまいたいので、俺は母に尋ねた。
「まだ、見積もりが出てねえ」
「じゃあ、見積もり出たら教えてくれ」
「だいだい80万円くらいはかかるから――」
まだ見積もりも出ていないのに計算しても仕方がないだろうに、母は電卓を叩き始めた。
「出てからでいいって」
「ああ、そう。あっ、もうすぐ『なんでも鑑定団』の時間だ。観なくっちゃ! チャンネル回して」
「断る。いいかげん地上波くらい自分で回せるようになってくれ」
「いいじゃん、それぐらい。ケチ! ――えっと、何チャンだっけ?」
「7」
「そうそう。テレビ東京は7だった」
母は7のボタンを押した。
「あれ? 変わらない」
母は7のボタンを押し続ける。
「このリモコン壊れてない?」
母は7のボタンを押し続けている。――電卓の。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます