リモコン

 姉の提案により、台所をリフォームすることになった。

 正直、俺は反対だったのだが、姉の決定には逆らえず、母も賛成していたので、しぶしぶ承諾。改修費用は皆で折半して支払うことになった。

「それで、結局俺はいくら払えばいいんだ?」

 等分で割るというのも納得がいかない話だが、払うべきものはさっさと払ってしまいたいので、俺は母に尋ねた。

「まだ、見積もりが出てねえ」

「じゃあ、見積もり出たら教えてくれ」

「だいだい80万円くらいはかかるから――」

 まだ見積もりも出ていないのに計算しても仕方がないだろうに、母は電卓を叩き始めた。

「出てからでいいって」

「ああ、そう。あっ、もうすぐ『なんでも鑑定団』の時間だ。観なくっちゃ! チャンネル回して」

「断る。いいかげん地上波くらい自分で回せるようになってくれ」

「いいじゃん、それぐらい。ケチ! ――えっと、何チャンだっけ?」

「7」

「そうそう。テレビ東京は7だった」

 母は7のボタンを押した。

「あれ? 変わらない」

 母は7のボタンを押し続ける。

「このリモコン壊れてない?」

 母は7のボタンを押し続けている。――電卓の。







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