りんごの皮

 母はりんごが好きだ。皮は剥いてから食べる。

 俺もりんごは好きだ。皮は剥かずに食べる。


 母は毎日のようにりんごを食べている。そのたびに皮が廃棄されるわけだから、積もり積もればけっこうな食品ロスだ。皮と実の間にこそ、たくさんの栄養が詰まっているというのに、なんともったいないことか。

 あるとき、りんごの皮が大量に捨てられていたので、俺はこう提案した。

「りんごの皮は捨てずに取っておいて。俺が喰うから」

 その日以来、母はりんごの皮を剥いたら、ラップに包んで保存してくれるようになった。本当に良い心掛けだと感心するよ。

 でもね、母さん。りんごというのは、皮と実の比率が1:9で食べるから美味しいのであって、皮だけ、つまりは皮と実の比率が1:1というのは、ちょっと味気ないものだよ。

 もうちょっと、こう。実の部分を多めに残しておいてくれても、いいんじゃないかな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る