パンの耳

 母は米農家の生まれだ。けれど、米よりもパンのほうが好きだ。


「なんか喰った気しねえ」

 そうぼやいてから、デザート感覚でトーストを食べるのが母の習慣だ。

 母はパンの耳は食べない。まるでハトに餌でも与えるかのように、トーストの耳をちぎっては皿の上に載せていく。それを食べるのは、俺の役目だ。

 そういえば、子供のころ、食パンの耳を油で揚げて砂糖をまぶしたものを、おやつとして出されていたけれど、あれって――。


 母はパンが好きだ。けれど、パンの耳は嫌いだ。

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