続・すずの姉

 それは冥界の王事変から数年後。女優・広瀬アリスの姿がテレビコマーシャルに流れたときのこと。


「この子、広瀬すずの姉さんよね?」

「うん、たぶん」

 正直、俺にはわからなかった。母もそうらしい。美人は印象に残りづらいということだろう。

「なんて名前だったっけ?」

 また始まった。

 母は広瀬すずのファンらしいのだが、どうも姉のアリスに関してはそうではないようだ。冥界の王事変以降、ことあるごとに名前を教えてきたのだが、すぐに忘れてしまう。それでも、ちゃんと名前を覚えていることのほうが多くなってきていた。

「ついこのあいだ、自分で言ってただろ?」

「もったいぶらずに、教えてよ」

「もはや思い出す気ゼロ?」

「いいから、さっさと教えなさいよ」

 俺は少しだけ意地悪することにした。

「ハデスだよ」

「嘘つけ! そんな名前の人間、いるわけねえ!」

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