第5話「僕と俺」の話
さて。僕の話をしようかな。
僕は桜ヶ原にある唯一の寺の長男なんだ。
両親はとても優しくて、おおらかで、いい家庭だよ。
9つ離れたかわいい弟がいる。
離れすぎだって?当然だよ。
僕は養子だもの。
両親とは血が繋がっていない。弟ともね。
やだなぁ。そのことに関して不満があったりはしていないよ。
もう吹っ切れているし。
今は、ね。
吹っ切れる前はそれは酷かったよ。
小学3年のときに知って、先生にも同級生にも色々助けてもらっちゃった。
いや、救ってもらったって言うのが正しいかな。
一言では表せないや。
丁度その頃弟が産まれて、自分だけが他人だったって知って、両親は弟にかかりきりになって。
僕は家出をした。
両親は何も言わなかった。言えなかったのかな。
あの日のことは今でも覚えてる。
簡単な荷物だけ持って家を出た。
雨が降ってきて、行くとこもなかったから学校に忍び込んだ。
帰りたくなかった。ただ、あの「家と思っていた場所」に戻りたくなかった。
校内をうろうろしてたら裏庭に来てしまった。
そこにはもう一人の訪問者がいた。
親に怒られて家出してきた彼は、僕と同じように学校に忍び込んだらしかった。
当時そんなに親しいわけではなかった僕と彼。
でも、その時家に帰りたくないっていう気持ちを共感して、一晩中話をした。
たくさん、たくさん話をして。
最後には僕だけが泣きながら話をして、彼はただそれを聞いているだけだった。
そうそう。
最終的に落ち着いた僕たちは、丁度いい機会だからって切り株の七不思議をやってみようってことになったんだ。
ええっと、何を置いたんだったっけ?
ああ、あれだあれ。
初めは、僕の弟を連れてきて置いておこうって話になったんだ。あんな弟いらないって。弟がいなければ、今まで通り家族でいられるって。
でも、心のどこかでそれだけはやっちゃいけないって言われた気がしたんだ。
結局、弟はやめておいて、僕と父と母が一緒に写った写真にした。
今はもうないよ?
きっとね。写真と一緒にそれまでの「家族」を消したかったんだ。
「家族ごっこ」をしていたあの頃の家族を。
一晩経って、彼は自分の家に帰ると言った。謝るんだって。
僕は…まだ帰れなかった。
それはそうだと言って、彼は僕を自分の家に連れていった。
彼は、まず自分のことを謝って、僕のこと(養子等混み入ったことは除く)を話して。一晩だけ、何も言わずに匿ってくれた。
一晩だけだよ。
たったそれだけだって?うん、そうだよ。
彼の家には「一晩だけ」お世話になった。
僕の家出は1ヶ月続いたんだけどね。
連絡網って今でもあるのかな?
クラスで順番に電話で連絡事を回していくの。
彼ね、それを使って同級生に僕のことを話したんだ。
「一晩だけ○○君を家に泊めてあげて。
○○君の家の人にはバレないようにして」
ってね。
だから、僕はその夏、同級生の家に一晩だけお泊まりするっていう日記を書いた。
結局のところバレバレだったとは思うよ。
でもね、同級生たちも僕もバレてないって思ってた。
だって、その「秘密」のメンバーの中には担任だったあの先生も含まれていた。
先生は僕たち側、共犯者だったんだ。
これは確実だよ。
だって、両親から「あの先生は結局最後までお前がどこにいるのか教えてくれなかった」って、家に帰ったときに言われたんだから。
今じゃあり得ない話だよね。
笑いながら人を騙して、傷つけて、不幸を喜ぶような御時世だ。
他人も、家族だって信じることが出来ない時代だ。
そんな時代が僕は嫌い。
桜ヶ原の地元の人たちはみんな仲がいい。仲というより、もう地域の繋がりが強固なんだ。悪く言うと閉鎖的とも言えるかな。
特に信頼関係が強いんだ。
僕と、僕の同級生たちは特に繋がりが強いと思う。
そうじゃなきゃ、先生から教えてもらった七不思議の解明なんてしないよ。
命懸けだもん。
余計な話が長くなっちゃったね。
これが僕の七不思議・一つ目の話だ。
いや、ごめん。
これが初めての七不思議・解明の話だよ。
僕は学校の裏にある切り株の上に家族写真を置いた。
その写真は一晩で消え去った。
僕は七不思議の一つ目を使った。
カウントが一つ減った。
あはは!これじゃとっておきの話にはならないかな?
よし!それじゃ続けよう!
これが僕のとっておきだ!
さてさて、僕には変な癖がある。
凄く不機嫌になったりして感情が吹っ切れるとテンションがおかしくなるんだ。
…こういう風にな?
まあ、同級生の奴らはもう慣れているがな。
高校を卒業した俺は桜ヶ原を離れて大学に進学した。
大学も無事卒業して一旦実家へ帰ると、親父の知人が丁度家に帰ったときに来てた。
はっきり言って、俺はそいつが嫌いだ。
そいつはろくに努力もしないで他人に仕事を押し付ける。失敗すれば周囲に責任を押し付けて、自分は関係ないと言いやがる。
挙げ句の果てに、面倒事からすぐに逃げる。
俺はそいつが嫌いだが、親父はもっとそいつの事が嫌いだ。
地元で「仏」と呼ばれるほどいつもにこやかな親父が。あの夏の家出事件の時にさえ怒らなかったあの親父が。
机を殴っていい加減にしろと怒鳴ったんだぜ?
俺的にはよくそれで済んだと思うけどよ。
だってさ。その内容がマジで最悪なんだぜ?
自分の経営している企業で一人空きが出来たから俺を寄越せ、ってさ。
そこまでなら俺だって許せるんだぜ?
でもさー、その企業の内部事情知ってる大学の後輩が俺にはいたんだよ。
「一人分の空き」って、自殺したから空いたらしいんだ。
自分より仕事が出来るからいじめてたらしいんだ。
仕事量をわざと増やしたり、連絡をわざとしないでミスをさせたり、休憩なんてなしで働かせ続けたり、自分がミスしたらそいつのせい。
企業自体はブラックじゃないんだよ。
ブラックはその馬鹿野郎だけ。
周りはもちろんフォローしたらしいけど…
亡くなったそいつは耐えられなかったんだな。
とうとう電車の前に飛び出したらしいんだ。
さっき言ってた俺の後輩は…
丁度その時同じ駅にいてさ、
飛び出すところを見ちまったんだよ。
声をかけようとした背中が、ホームに落ちて、牽かれて、
どうなったかは聞かないでくれ。
その直後、俺はその後輩から電話がかかってきてたから、
その駅がどんな状態だったかは、全部じゃないが知ってるつもりだ。
後輩もかわいそうだった。
信頼も尊敬もしてた先輩だったらしいから。
何より哀れなのはその当人だ。
たった一人の馬鹿に人生を狂わされて、望まないのに終わらされた。
俺の後輩は、まだその企業で働いてるぜ。
その先輩をいじめていた上司が憎いから、いつか証拠をまとめて警察に突き出すんだとよ。
同士も多数いるって話だ。
でも、今一歩というところで証拠が掴めないって連絡が来てた。
その矢先に、馬鹿野郎が家に来たんだよ。
笑え。親父の後輩がこの馬鹿野郎だ。
俺は親父に後輩からの話をしていた。企業の名前も言っていたから、親父は馬鹿野郎がとんでもないことをやらかしたと知っているはずだ。
俺はさー、親父似だってよく言われるんだよなー。
その理由がこれだ。
沸点を越えると性格が豹変する。
ははっ!同級生からは「仏の顔も三度まで」って言われる!
普段は「私」の親父もこの馬鹿野郎相手には「俺」になっちまってる。
しかもさ、その馬鹿野郎。それに気づいてないんだぜ?どんだけ馬鹿だよ!
親父は端から息子を貸すつもりないんだっつーの。
特に、部下の死を「一人分の空き」なんて言った奴にはな。
だから俺は馬鹿野郎に言ってやったんだぜ?
「分かりました。いつから出社すればよろしいでしょうか?」
ってな。
馬鹿野郎は喜んで帰っていったし、親父は驚いていたぜ。
親父には悪いが、後輩が証拠を欲しがっているんでね。俺が行けばいじめの矛先は俺に向くだろうって話だ。
っつーわけで、その企業に一時期雇われてたってわけだ。
いやー、いじめキッツイわー。
地味にキッツイわー。
こういうのを無理ゲーって言うんだろうなー。
俺、週休2日って条件で入社したつもりなんだけど、1週間って30日だっけ?
昼休憩は1時間なんだけど、片道30分のコンビニに馬鹿野郎の弁当買ってこいって?
はぁ?
ふざけんなよ。
事前情報でいじめの内容はパターン化してるだろうって話だったんで、後輩を始めとする向こうの同僚たちにサポートしてもらって、なんとか乗りきった1ヶ月。
んで、次の日は社員全員の共通の休日だから馬鹿野郎抜きで呑みに行った。
馬鹿野郎抜きな。
そこの奴らはほんとにいい奴らばっかでさ。
お前ら、そんなに出来るのになんであんなことになったんだよ、って聞いたんだ。
そしたらさ。
馬鹿野郎の親が社長なんだってさ。
全部もみ消して、無かったことにしたらしい。
そいつら自身も辞めたいんだけど、辞表すら受け取らないらしいんだ。
最悪だな、馬鹿親子。
こういう企業には就職するなよ?
とまあ、いじめを受けつつ俺は証拠を集めるわけよ。
出社するときはいつもボイスレコーダーをポケットに入れて、鞄には充電器っていうのが常だったぜ。
我ながら根気強い作業だった…
で、社内の証拠もなんだけどよ、俺は亡くなった奴の家に行ってみた。
後輩が説明してくれてさ、線香あげに行った。
そこで見つけたんだよ。
そいつの日記。
御家族に了承を得てさ、見せてもらった。
いじめの内容も書いてあったぜ?でも、御家族が知ったのは全部が取り返しのつかないとこまで来た後。
なんでそんな会社に勤めさせたんだろう。
早く辞めさせなければならなかった。
そこまで追い詰めて、尚笑っていられる馬鹿野郎が憎い。
泣きながら話してくれた。
俺はじっと日記を見た。そしたら、なんか違和感を感じたんだよな。
変に行が開いていたり、簡単な漢字が平仮名だったり、中途半端なとこで改行されていたり。
こんな文章、見たことあるって思ったんだ。
同級生の、国語の教師をしているあいつの、昔ふざけて考えた、本当に伝えたい要件だけを、隠した、
縦読み
そうだ。縦読みの文だ。
俺はページをめくった。
変な文になった日付から、順に目を縦に走らせる。
そしたら
「ぼくのせいじゃない
おまえがやれ
ちがう
ちがう
つかれた
ねむい
やめたい
みんなごめん
いやだ
いやだ
にくい」
そいつの、亡くなったそいつの心からの本心がそこにはあったんだ。
俺は日記を借りた。後輩の所に持っていった。
後輩は慌てて同僚たちを集めた。
最期まで見せることのなかった亡くなったそいつの想い。
もうこれで充分だ。今までの証拠と一緒に警察へ突き出そう。
あいつらはそうしようとしたんだ。
甘いな。
世の中にはもっと酷い状況があるんだぜ?
しかもな、そんな状況から逃げきってしてやったりな顔してる罪人がいくらもいる。
あの馬鹿野郎は無罪になる。
有罪になったとしても俺たちが納得するような判決にはならねぇよ。
そんなもん納得しねえけどな!
ふざけんなよ。何様だあの馬鹿野郎。
人の命をなんだと思ってやがる。
ぜってぇ逃がさねぇからな。
今までの行いを悔い改める位はしてもらわねえと、そいつが報われねえ。
いっちょ、馬鹿野郎をしめてやろか
なんて全然思ってませんよぉ~?
包丁なんて握ってませんしぃ~。
毒なんて購入してませんってばぁ~。
俺ってば、もっといい方法知ってるんだぜ?
俺がこの話を「とっておきの話」としてお前らにしてるのは理由が二つある。
ひとつ。単に馬鹿野郎に滅茶苦茶ムカついているから。
人生で一番最低最悪な奴と思ってる。
それと、もうひとつ。これが俺たちの「学校七不思議」と関係する終わりを迎えたから。
てか、迎えさせたのは俺なんだけどな。
最初に話してた「切り株の上」の七不思議。
あの馬鹿野郎に使ったぜ。
もうこの時期になると七不思議も半分以上解明してたんだよな。
しかも、七不思議の内容だけじゃなくて、詳しいこと…なんでそれが七不思議となったかと詳細だな。それが俺たちの努力でわかってたんだよ。
まあな。俺が解明した一つ目「切り株の上」もなんだけどよ。
あれで終わりなはずないよな?
切り株の上に置けば一晩であら不思議~、影も形も消えちゃいます。
なーんて、子ども騙しにも程があるよな。
当時の俺たちにはそれでよかったんだけどよ。
詳細は後でまとめておくぜ。
今は俺のとっておきの話を聞いてくれ。
「切り株の上」の七不思議はな。
簡単に言えば神隠しだと思ってたんだよ。
でも後で調べたら意外とエグかった。
学校七不思議・一つ目の本当の名前は
「切り株の上の処刑人」
罪人があの桜の所で処刑されていたんだ。
なんでそれが「物が消える」ってことになったかと言うとだな。
処刑された罪人の死体が一晩で消えたことからそうなったらしいぜ?
まあ、これも神隠しか?
あの桜の木の精霊が、処刑された罪人を地獄へ連れていってるんじゃないかってされてる。
つまりさ。
あの馬鹿野郎にここで処刑されてもらおうぜ!
って話だ。
ただここで条件がある。
これは七不思議の正規の条件な。
一つ目の場合は
・罪人、及び見届け人が必要。
・罪人は重犯罪人のみ適用。
これが重要な。
・罪人、見届け人は決して戻ってこれない。
亡くなった奴の日記を見たとき、これだと思ったんだよ。
馬鹿野郎は裁かれるべき人間だ。
そして、罪を償うべき人間だ。
でもよ。きっと同じ人が法で裁いたとしてもこの馬鹿野郎は改心しない。
ならば、神様仏様桜の精様。
お願いします。
あの馬鹿野郎をさばき、地獄へ送ってください。
その為なら、僕は見届け人としてついていきましょう。
これを決めた後にさ、俺は後輩にも同僚にも両親にも弟にもしっかり説明したんだぜ?
そしたら、みんな「お前らしい」って言って笑って送り出してくれた。
同級生には言わなかった。
どうせ後で集まるんだ。
とっておきの話として温存しておいた。
「同窓会」の時が来るまで、僕はみんなには言わないでおく。
きっと、みんなもみんなでそれぞれの「とっておきの話」を温存して来るんだからさ。
というわけで、俺はその企業を辞めた。
その後は残った後輩とその同僚に任せる。
あいつらだったら持ち直せるだろ。
それだけ俺はあいつらを信用してるんだぜ?短い付き合いだったが、出会えてよかったと思える奴らばかりだ。
そして俺の最期の一仕事。
馬鹿野郎を話があるのでー、と言って呼び出した。そこでどかっと一発。腹に一撃を食らわせてやった。
気絶した馬鹿野郎を運ぶ。
犯罪と言うなよ?正当防衛だ。
サポートなしじゃ俺は今ごろ過労死だしよ。
ほんとにこの馬鹿野郎のいじめはヤバかったんだって。
よくこんなのが社会人としてスーツ着てんなー、と思うくらいだ。
七五三迎えた子どもの方がまだかわいい。
あー、ヤバい。
馬鹿野郎が嫌い過ぎて愚痴を1時間吐けそうだ。
適当に…ああ、この場合曖昧な方の適当な。
適当に引きずって車に載せて(間違った漢字じゃねえだろ?)地元へ引き返す。
当然、小学校に着いたのは真夜中だ。
月が明るい夜だったぜ。
本当に。
馬鹿野郎を切り株の近くに転がして、俺もそこらに座り込む。
気持ちは意外と凪いでいた。
夜風の如く、無音の闇の如く。
ああ、これで全部終わるんだなあ。
終わってしまうんだなあ。
そんな風にどこか寂しく、けれど満足しているのも感じていた。
ふと、切り株の方へ目を向けると、驚いたことに影が異様に大きくなっていた。
月明かりでこんなになるか?
切り株の影…これ、切り株っていうより
何かの大木だろ?
影はまるで切り株から芽が出て、成長し、枝を広げ、大きな大木へと変わるように変化していった。
おそらくは、桜の大木。
ざわざわと、風が吹いているように枝が動く。もちろん音も風もないのにその影は生きているように、あたかもそこに本物の大木があるように見えた。
本体の切り株はそのままなんだ。
影だけが音もなく大きく成長していった。
無音であった世界に、ざわりと妙な気配を感じた。
いや、俺は知ってる。よく知ってる。
実家の寺で葬儀を行う時、たまに「よくないもの」が集まる場合がある。ちゃんときよめていない(清める、浄めるの両方だ)、きよめが足りないときにそれはよく起こるという。
特に、人が寝静まった丑三つ時とか。
その感覚に近いもの。
俺は、ぞくっと鳥肌を立てた。
その時、馬鹿野郎が呻(うめ)きながら目を覚ました。
あいつは俺にあらゆる罵倒(ばとう)を浴びせてきたが、はっきり言って俺はそれどころじゃなかった。
キーキーギャーギャーと雑音を発していた気もするが、俺の耳には全く入ってこなかった。
あいつは気づいていない。
異様に伸びた「枝」の影が、
自分の足に伸びてきているのを。
そして、とうとうその影があいつの右足に触れたように見えた時、
多分、ぶちっと何かが引きちぎられるような音がした気がする。
同時に
あいつの右足が弾け飛んだ。
ぎゃあ、痛い、ひぃ、助けて、痛い、
死にたくな
影が。桜の木が。
あいつの罪を暴いていく。
ぶちぶちと、体が引きちぎられ、ただの肉片と変わっていく。
俺はそれを呆然と見ていただけだった。
次第に、あいつの悲鳴が「言葉」ではなく醜い「音」へと変わった頃、これはあいつの罪だと認識した。
可哀想などとは一切思わなかった。
だって、その姿は、
電車に飛び込んで自殺した「亡くなったやつ」と同じなんだろう?
おまえが、気紛れにいじめて、追い詰めて、そうなった奴がいるんだよ。
覚えているだろう?忘れたとは言わせねえぜ?
これはお前の罪だ。
罪を悔い改め、懺悔し、罰を受けよ。
音が止み、再び闇と沈黙が周りを覆った頃。
大木の影は馬鹿野郎であった「物」をぐるりと取り囲むと、血の一滴も残さないで掬い上げ本体である切り株の上にぼとぼとと乗せた。
明日の朝には誰にも見られることなく消えているであろう。
そして、地獄へ送られる。
現世でのあいつの処刑は終わったのだ。
はあ、と大きく1回息を吐くと、おもむろに眠気が俺を襲ってきた。
俺も、ここから消えるのか。
…
……
ちょっと待て。
俺には「約束」があるんだぞ?
同級生たちと「七不思議の同窓会」をしないといけないんだぞ?
そこはどうなる。
おい、どうなるんだよ?
あ
意識が
フェードアウトして
俺の意識が完全に落ちる瞬間、
切り株の近くに誰かが立っていた気がした。
処刑人である桜の木の精霊?
迎えに来てくれた懐かしい先生?
ああ、あれは
写真でだけ見たことのある、会ったことのない、自殺してしまったあいつだ。
そいつは、俺を見てこう言った。
「ありがとう」
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