第3話僕たちの「先生」

…うん。

この際だからもう言っちゃおう。


3年生の時の恩師であるあの先生は、30になって少し経ってから死んでしまったんだ。

若いよね。まだ30才だよ。


その時、僕たちはまだ中学生に上がったばかりだった。すごくショックで。すごくすごくショックで。

みんなしてしばらく学校を休むくらいだった。

もう立ち直れないと思ったよ。

それくらいその先生は僕たちに影響を与えていたんだ。

考えられないだろう?でも、そうだったんだ。


で、僕たちを立ち直らせるきっかけがあった。

それが「学校七不思議」さ。


3年生の時、さらっと話題に出た「学校七不思議」。僕たちは内容を知りたがった。

結局先生は教えてくれなくて、そんなに知りたかったら宿題だ。期限はないから、いつか七不思議を解明してごらん、と笑って言った。


きっと、先生はそんなこと出来ないって思ってたんだろうね。


内容自体は意外とすんなりわかったんだ。

漠然とした内容だったけどね。

ただ、先生は「解明」と言った。


僕たちの地元の七不思議は、どう考えても解明なんて不可能なものばかりだった。

そもそも意味が解らない。

一つはまだまし。

一つは具体的な数字が分からない。

一つは無いはずのものを見つけることなんて出来っこない。

一つは全部クリアしないと発生しないイベント。


無理だと思った僕たちは諦めた。


だから、その時まで調べるだけ調べてあとは手つかずの状態だったんだ。


で、先生がいなくなってショックを受けている僕たちを何が立ち直らせたかと言うとね。

その七不思議の七つ目に先生ともう一度会える可能性を見出だしたからなんだよ。


先生は死んだんだろうって?

うん、そうだよ。


七つ目は「同窓会」。

条件は七不思議の1から6までを達成していること。

言い方を変えると、七不思議の1から6まで達成してしまうと7をしないといけない。強制的に発生するものらしいんだ。


内容はね。七不思議を達成するまでに参加した人が集まって、一人一つずつ「とっておきの」話をする。


もし、僕たちが七不思議を解明するために始めたら。

一番最初のきっかけをくれた先生は十分にその七不思議に参加しているだろう?

だから、七つ目までいければ、きっともう一度先生に会えるんじゃないか。

僕たちはその可能性にすがったんだ。


バカで無謀だよ。

でも、それでも僕たちは信じたんだ。


こういう訳で、僕たちは七不思議の解明に乗り出したということなのさ。

解明イコール体験。


僕が今からするのは、「桜ヶ原小学校の七不思議・一つ目というとっておきの話」。

これが何を意味するか…分かるよね?


僕たちはもう引き返せないんだ。


さあ、遅くなってしまったけど話を始めようか。

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