僕らのその後

学校に戻っても銀河の元気は戻らなかった。学食での夕飯も銀河は殆ど残し、昴を心配させた。夜になっても銀河は一言も喋らず、ベッドに入ってしまった。


「銀河くん一緒に寝る?」


昴は布団に潜った、こんもりとした山に向かって声をかける。昴はPSI学校に編入した当初、里心がついて夜中はいつもべそをかいていた。そんな時銀河が提案したのだ、一緒に寝ようと。昴が銀河のベッドに入ると、布団を被されて、銀河が小さな懐中電灯を照らしてくれた。布団の中は淡い光に包まれて、まるで秘密基地の中にいるようだった。それから度々昴は銀河の布団に潜りこんだ。銀河はいつも身体をずらして昴のスペースを空けてくれた。昴が辛抱強く山を見つめていると、山がモゾモゾ動きだし、銀河がのっそりと布団から這い出てきた。銀河はやはり何も喋らず、無言で昴の布団に入って来た。昴は身体をずらして銀河の寝場所を作ってやる。


「思い出すね、小さい頃」


昴が銀河に話しかける。銀河は無言で頷いた。




昴は布団に入ってしばらくすると、すうすうと寝息を立てて寝てしまった。今日は色々な事があって疲れているとは思うが、仮にも死ぬかもしれなかったのに、これは余りにも呑気過ぎるのではないかと銀河は思う。三年生の頃は二人で寝ても広さがあったベッドは今では少し狭かった。銀河も昴も日々成長しているのだ。ブルブルチワワだった癖に、銀河は心の中で毒づく。二人の体温で布団の中が温まり、銀河も段々と眠くなる。銀河は現実主義者だ、自分の目で見たもの、自分の耳で聞いた事しか信じはしない。しかし、今日という日は、会った事の無い神様に感謝した。この温もりを奪わないでくれてありがとう。




誘拐事件の後、銀河と昴の環境は一変した。昴は、テレポートと透視能力クレヤボヤンスの二つの能力を有するダブルスキルと判明し、Aランクに。銀河は異次元にゲートを開く事が出来る珍しい能力だと判明し、Aランクを飛び越え、Sランクとなった。クラスメートたちはこぞって銀河と昴を賞賛した。この出来事に戦々恐々としたのは、銀河と昴を散々いじめていた恵太と美一だ。


「やっ、やいてめぇらAランクとSランクだか知らねぇが、なめたマネするとタダじゃおかねぇからな」


恵太は言葉こそ威勢がいいが、完全にへっぴり腰だ。後ろの美一などは恵太の後ろに隠れてブルブル震えている。


「ああ分かってるぜ、だがな俺は能力を使えるようになってまだ日が浅いんだ。うっかり能力でお前らを異次元の穴に落としても、元の次元に戻せないかもしれないからな、頼むからお前たち俺を怒らせないでくれよ?」


銀河はそう言うと、小さな異次元ディメンションゲートを、恵太と美一の前に出現させた。恵太と美一は悲鳴を上げて逃げて行った。

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