僕らの誓い

「すごい銀河くん!超能力を使えるようになったんだね」


昴が興奮して銀河に向き直る、しかし銀河は俯いて、ふて腐れたような表情だ。銀河の珍しい顔に驚いて、昴は銀河の顔を覗き込もうとする。だが、銀河は顔を背けて昴と目を合わせようとしない。銀河に嫌われてしまった、昴は急に恐ろしくなった。今まで銀河は常に昴の目をしっかりと見て話をしてくれていたのだ、だが今は目すら合わせてくれない。思えば銀河の言う事を聞かないで行動したのは初めての事だった。銀河に愛想を尽かされた、昴はどうしたらいいのか分からず途方に暮れた。


「昴、お前俺をかばって死のうとしただろう」


銀河の低くて小さな声が聞こえる。良かった、返事を返してくれた。


「死のうとなんかしてないよ。それに銀河くんだって僕を机からかばってくれたじゃないか」

「サブマシンガンで撃たれて生きてる訳ないだろ?!」

「机だって打ち所が悪ければ死ぬよ」

「・・・、昴何でキャスリングしなかった」


昴はギクリとした。銀河に教えられた、パチンコ玉や、銃弾など速くてテレポートさせられないものは、逆に人間をテレポートさせて弾除けにすればいい。しかし昴は直前に躊躇した、パチンコ玉とは違うのだ、いくら誘拐犯でもサブマシンガンの銃弾の弾除けにしたら死んでしまうかもしれない。


「ゴメン、気が動転してて、忘れてた」


「嘘をつくな、お前は犯人が死ぬと思ったからキャスリングしなかったんだろ?人の命が地球よりも重いなんて詭弁だ。この世の中はなぁ、強い奴が生き残って、弱い奴が惨めに死んでいくんだ。だがなぁ、これだけは言える、見ず知らずの女の子を命がけで助けようとする昴の命と、か弱い女の子を誘拐して、女の子に拳銃突きつけて、金を要求する奴らの命と、どっちが重いか分からない世の中なんて、俺がぶっ壊してやる!」


昴は、驚いた。銀河が泣いていたのだ。銀河と知り合って二年あまり、銀河の泣いた顔を初めて見たのだ。大きな切れ長の瞳からはボロボロと後から後から涙が溢れている、不謹慎にも昴は綺麗だなと思ってしまった。


「俺はお前の王さまなんだよな?」


銀河の言葉に昴は慌てて頷く。


「ならここで誓え、絶対に死なないって、生きてずっと俺の側にいるって誓え」


昴は嬉しさの余り顔が笑ってしまった、銀河は昴に死んでほしくないと泣いているのだ。昴は銀河に自分の顔を見られないように、銀河の頭を抱き寄せて、自分の胸に押し付けた。銀河はおとなしくされるままだ。


「約束するよ、銀河くんを護る為に僕は絶対に死なない」


銀河は昴の胸に顔を埋めたまま、コクリと頷いた。昴は横で銃弾による痛みにのたうち回っている犯人たちに目を向け、転がっているサブマシンガンと拳銃を、彼らの手の届かない所にテレポートさせた。そして、銀河をしっかりと抱きしめると、天井にテレポートした。六回のテレポートで倉庫の天井に出る。サイレンの音がする、ようやく銀河の呼んだ警察が来たようた。倉庫の裏手にテレポートさせた女の子を発見した警官が、彼女の側に駆け寄ってくる。昴は女の子の無事を確認すると、銀河と共にテレポートを開始した。自分たちの学校に戻る為に。

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