第23話 ライバル
その男が動いたのは、
それぞれが、それぞれの相手にそれぞれ違った行動をする。ただ、唯一の例外はアーデガルドに対する対応。結果的に
おそらく、今からそれが明らかになるに違いない。彼らのリーダーとして。
彼らにとって、この
少なくともアーデガルドはそう思っていたと思われる。
ただ、腑に落ちない事があるとすれば、彼はリーダーであるにもかかわらず、今まで何も行動を起こしてこなかった事だろう。仮に、彼の言い分として、『男たちのリーダーとして、始終無言の圧力を放ち続けていた』というのがあったとしても、アーデガルドにはそれが伝わってはいなかった。
――この人たちは、いったい何をしに来たのか?
それを知るために、アーデガルドは
こうなると、無言の圧力も何もあったものではない。むしろ一人、挙動不審さを増している。ますますわからない行動が、アーデガルドを戸惑わせ、その真意を探ろうと瞳に力を込めていく。一方、その無言の圧力に耐え続ける男は、額に汗をにじませていた。そんな構図が出来上がり、それがずっと続いていた。そして、アーデガルドは思い出す。
この男は、いつもこんな感じだったと――。
その彼が、
ただ、そのまま
そして、その行動はおそらく予想通りだったに違いない。少なくとも、
もっとも、
彼らの目の前にいるのはゴルドン、その隣にアオイ。大人と子供ほどある身長差で両陣は向かい合う形になっており、それは衆目の的となっている。ただ、そのすぐそばにいるシオンはある男を警戒し続け、ステリは黙ってうなだれ続けたままだった。
「ホンマ、でっかいな! なんか、ごっつ、むかつくわ! 関係ないけど、営業妨害やで!」
先ほどまでのアオイはもうそこにおらず、いつものアオイに戻っている。ただ、アオイの感情は抜きにしても、その感想はもっともだと言わざるを得ない。
彼ら二人が並ぶと、そこには圧迫感をもつ壁ができあがる。
ただ、それはアーデガルド達には決してまねできない事でもある。
ドワーフとしては高身長のゴルドンであっても、それはあくまでドワーフとしてのもの。彼らの身長には遠く及ばない。種族の違いによるその差は歴然。そもそもアーデガルド達は背が低い者が集まっている。
「アーデ……」
ただ、リーダーの
彼はただ、単純に照れているだけのようだった。
その姿を見かねたのだろう、
「まあ、あれだ。つまり、ゼムが言いたいのはだな――」
「アホか! 甘いわ、ジョウ! 言いたいことあるんやったら、自分で言うもんちゃうん!? ホンマ、あいっ変わらずアーデの前では何も言えへん! デレデレか! ライバル心なんか、似合わん恋心なんか知らんけど? スッパリ言うて、スッパリふられたらええんちゃうん? もう、イライラするわ!」
機嫌の悪さを隠そうとしないアオイの言葉に、
「クックック。アオイよ。オマエが何を言っても当たり前に無駄だぜ。オマエからは、『
卑猥な笑みを浮かべながら、
だが、それも限界を超えたのだろう。遅まきながら、アオイは売られた喧嘩を買おうとする。
ただ、アオイがそれを手にすることはできずにいた。
「マック、お前はもう黙れ。オレはアーデガルドをそんな風には見ていない。当然、アオイもだ」
アオイが答えるより前に、
そんな彼の横やりを捉えて、さらに
「やっぱり、オマエの事は見てねーってよ、アオイ。まっ、当り前だな!」
「うっさいな! 意味違うやん! もう、ええ。我慢も限界や! その口、黙らせたるからな!」
見事アオイを釣り上げたと思ったのだろう。
「オマエに易々と奪われる唇じゃねーよ。当り前に」
「ホンマ、腹たつ! もうええ! やっぱり、アンタの相手したウチがアホやった!」
「おい、マック! いい加減にしろ!」
アオイと
「ヘイ、ヘイ。オマエまで本気で怒らなくてもいいだろ? でもよ、もういいんじゃないか? コイツら当り前に立ち直ってるっぽいぜ? ってなわけで、オイラもう帰るわ。今日はまだ、『どこに泊まるか』決めてねぇし」
そう告げて、
「まあ、オレもこいつらは大丈夫だと思う。特にゴルドン! オマエに関しては最初から何も心配いらないのはわかっていた。ああ、それから一言だけ言っておく。オレ達も明日から地下十五階を探索する。ようやくこちらも、強力な仲間を手に入れたぜ。魔術師不在でオマエ達に後れを取ったが、これから挽回していくぜ!」
ゴルドンに優越感を見せつけるかのように、
だが、話からあるように一見して魔術師。しかもかなり高位の魔術師だと見て取れた。
「ヤツは無口だから、オレが紹介してやろう。新メンバーのラベル・オーメイ。すべての魔術師呪文と司祭の呪文を使える賢者だ!」
自信たっぷりに紹介されたその男は顔を上げ、何故かシオンを激しく睨みつけていた。
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