第4章 圭吾さんのご実家
「ふわぁ、あっ。」
日曜日、私は大きな欠伸をしながら、車を運転する圭吾さんの助手席に座っていた。
「眠いなら寝ててもいいぞ。」
「……ううん。大丈夫。」
今日は、圭吾さんのご実家に行く日だ。なのに、昨晩はあんなに盛り上がっちゃって、睡眠時間が4時間しか取れていない。
「途中でコンビニ、寄る?」
睡眠時間が4時間なのは私だけで、圭吾さんはきっちり7時間寝てらっしゃった。
というのも、圭吾さんは実家に顔出すだけだけど、私はお邪魔する身なのだ。それゆえ、色々と準備があった。
「大丈夫。トイレはまだ大丈夫だし。飲み物もお菓子も持ってきたし。」
「いつも思うけど、ともみって準備いいよな。」
「そう?」
事前の準備はしっかりと!が私の鉄則だけれど、そのせいでいつも荷物が重たくなる。これは私の癖の一種かもしれない。
圭吾さんのご実家まで、車で2時間。ちょっとしたドライブデートだ。でも2時間運転する圭吾さんは、きっときついよね。帰りは休憩しながら帰らなきゃね。
圭吾さんと一緒に居る時間は、本当に楽しい。だから、2人でお喋りしていたら2時間なんか私にとってはあっという間だ。
「ともみさん、よく来たねぇ。遠かったでしょ。」
「こんにちは。ご無沙汰しております。」
だから眠たい目を我慢していれば、圭吾さんのご実家にもあっという間に着いた。お邪魔するのは今回で二度目だ。一度目は同棲のご挨拶をさせていただいた時。そんな一度目の時ほど緊張しないけど、やっぱりまだ緊張はほぐれない。
「さ。2人ともあがりなさい。」
玄関で出迎えてくれた圭吾さんのお母様に促されて、お家の中へとお邪魔する。お母様の様子から察するに、もしかしたら、首を長くして待ってくださっていたのかもしれない。
「お邪魔します。」
さすが農家なだけあって、とても広い玄関である。ドアを開けて敷居を跨ぐと、土間がずっと奥まで続いていて、そこを歩いてやっと部屋まであがれる。
土間には色んな野菜が置いてある。きっと、採れたての野菜だよね。すごいな。食べ物ってやっぱり、宝物なんだなって思う。
「帰りに野菜、持って帰ってね。玄関先に用意してあるから。」
なんと玄関に置いてあった野菜は、私たちのための野菜だったらしい。
「いつもすみません。」
「いいのよ。いくらお金を稼いだってね、お札は食べられないんだから。」
圭吾さんのお母様の気遣いに、本当に感謝する。圭吾さんのご実家は、農家をしてあるくらいだから「ザ・田舎」なんだけど、都会では学べない大切なことが、そこら中に転がっている。こういう環境で育った圭吾さんだから、私を大きな愛で包んでくれるのかもれない。
「よくきたね。」
お座敷に通されると、圭吾さんのお父様がすぐに顔を出してくれた。
「こんにちは。ご無沙汰しております。」
「まぁまぁともみさん。そんな固くならずに。足も崩しなさい。」
圭吾さんのお父様とお母様は、本当に面持ちも、醸し出す雰囲気もよく似てらっしゃる。長年夫婦が連れ添うと、こんな感じになるのかなって感動する。
「今日兄ちゃん達は?」
圭吾さんには、3つ年上のお兄さんがいらっしゃる。地元の役所で公務員をされていて、ご実家の農業もたまにお手伝いされているみたい。
「あぁ。
「ふうん。」
「あ。私ちょっと、お手洗い借りてもいいかな?」
「あぁ。場所、分かる?」
「うん。」
私はお手洗いを口実に、お座敷を立ち、圭吾さんのお母様のいらっしゃるお台所へと向かった。お台所の暖簾を潜ると、お母様が料理の準備をせかせかとしてあった。きっと私と圭吾さんが来るから、色々と準備をしてくださったんだよね。
「あの……。」
声をかけてからハッと気付いた。呼びかけたは良いものの、何て声を掛けていいか分からない。私と圭吾さんは、結婚してないのだから“お義母さん”と呼ぶには、変な気もするし“おばさま”もちょっと……。ど、どうしたらいいんだろう!
「あら。ともみさん。どうしたの?お座敷に居てくれていいのに。」
悩んでいる間に、私の小さな呼びかけに圭吾さんのお母様が気付いてくれた。
「あ。あの、ご迷惑かもしれないんですけど……。」
さすがに手ぶらで来るわけにもいかなくて、私はある物を用意してきていた。
「いつも新鮮なお野菜を送ってくださるから、作ってみたので良かったら。」
私は、野菜ケーキを焼いてきた。新鮮な野菜で、まず野菜ジュースを作り、それを生地に加えて焼いてみた。砂糖はほとんど使わず、野菜本来の甘みを生かして作った。だから、どんな方でも食べられると思うんだけど……。
「まぁ!こんなことしなくていいのに!ありがとうね。手間が掛かったでしょう?」
圭吾さんのお母様は、嬉しそうに受け取ってくださった。
「いえ。お口に合うかどうかは、分かりませんが。」
「あら、ともみちゃん。いらっしゃい。」
そこで、圭吾さんのお兄さん、誠太さんの奥様である奈緒さんが、お台所にやってきた。
「こんにちは。お邪魔しております。」
奈緒さんは、誠太さんと同じ歳だ。大学時代に誠太さんと出会われたそうで、25歳のときにご結婚されたそうだ。今では3児の母親をしてらっしゃる。
「奈緒さん。ともみさんから、野菜ケーキを頂いたよ。」
「わぁ、すごい。ともみちゃん、本当に料理が上手なのねぇ。というか、都会に住んでる人って考えることが違うわぁ。野菜でケーキってこっちだと斬新だもの。」
そんなに褒められると、照れてしまう。
「と~も~み、ちゃぁんっ。」
ドスッ
鈍い音を立てて、背中から突進された。
「こら!
すぐに奈緒さんの一喝が飛んだ。さすが母親は強し。
「……ごめんなさい。ともみちゃん、こんにちは。」
お母さんに怒られてしゅんとなる楓ちゃん。誠太さんと、奈緒さんの長女で小学一年生。元気盛りだ。
「楓ちゃんこんにちは。」
私は楓ちゃんの目線にしゃがんで、ニコッと挨拶をした。悪気があったわけじゃ、ないんだもんね。
「ともみちゃん!遊ぼう!」
私の笑顔に安心したのか、楓ちゃんもすぐに笑顔になった。
「うん。遊ぼう。何して遊ぶ?」
「楓ちゃんね、ユカちゃん人形して遊びたい!」
「あー!姉ちゃんだけずるいー!」
そこで楓ちゃんの弟、長男の
「そのブスは俺とレンジャーごっこすんだよ!」
……ぶ、ブスって私ですか!あまりに突然のことで、口をぽかんと開けたままの私は反応が遅れた。
「こら!風!ともみお姉ちゃんになんてこと言うの!ごめんねぇ、ともみちゃん。口が悪くって。最近、保育園で本当に色々な言葉を覚えてきて困ってるのよ。」
「いや、いいですよ。元気な証拠じゃないですか。」
こんなに賑やかな家族、正直羨ましい。私にも姉妹は居るけれど、妹が1人居るだけで、こんなに賑やかではない。
「ともみちゃんは女の子だから、楓ちゃんとユカちゃん人形するの!」
楓ちゃんが私の右手を、くいっと引っ張る。
「あー!ともみはレンジャーピンクやるんだぞー!」
今度は私の左手を、風くんがくいっと引っ張る。どうしよう。私、モテモテだわ。
「随分モテモテだな。」
そこで、私の助け舟である圭吾さんがお台所にやってきた。
「おら、お前ら。今からみんなでご飯食べるんだから、遊ぶのは後にしろ。」
圭吾さんはそう言って、2人を軽々と持ち上げた。
「ひゃぁっ。」
「うひゃっ。」
背の高い圭吾さんの両脇に抱えられた2人は、もう私と遊ぶのは、どこへやら。
「もっともっと!」
「ぐるぐるしてぇ!」
圭吾さんとじゃれるのにすっかり夢中である。そして、圭吾さんって良いお父さんになりそうだなぁ、なんてうっかり妄想してしまう。
料理の支度が終わり、みんなでお座敷に集まると、食事会が始まった。
「さ。ともみさん、どうぞ。」
「あ。ありがとうございます。」
圭吾さんのお父様にお酌をされ、飲まないわけにはいかない。
「ともみ、一杯だけにしとけよ。」
横から圭吾さんが注意してくれる。自分が一番に分かってます、酔っ払っちゃうと、失態を起こしかねないことは。
「圭吾。ともみさんにそんな言葉。ともみさん、遠慮しなくていいんだからね。どうせ帰りも圭吾が運転すればいいんだから。」
「あれ。お前ら、泊まらないの?泊まればいいのに。そしたら車も気にしなくていいだろ。」
誠太さんが口にビールを運びながら、そんなことを口にする。
と、泊まるって!お嫁に来てるならまだしも、まだプロポーズすらされてないし。ていうか、なにプロポーズされる気マンマンなの!まだ分からないじゃない!
「兄ちゃん勘弁してよ。俺ら明日仕事だって。」
「そうなの?てっきり泊まるのかと思ってた。」
他愛もない談笑をしながら、圭吾さんのお母様と奈緒さんが作ってくれた料理を頂く。お座敷の大きなテーブルを囲んでみんなで頂く。なかでもお煮しめが美味しい!
どれもすべて“お袋の味”だった。私も、圭吾さんのお母様の味を、教えてもらえる立場になりたいな、なんて。
「そういえばあなた達、いつ結婚式挙げるの?」
そこで、圭吾さんのお母さんの言葉に、私は目が点になった。
「まだともみさんは若いけど、圭吾はもう30だろ。早めにしたらどうだ?」
「そうだぞ、圭吾。俺がもうお前の歳には、二児の父親だったからな。」
「あ、ほら
4人の大人に口々に聞かれちゃったからかな。頭の中がぐるぐるする。私は一旦頭の中で整理するために、奈緒さんの膝の上に座ってご飯を食べている末っ子でまだ2歳の海人くんを見つめた。
「まだ、ともみのご両親に挨拶してないから、時間は少し掛かる、かな。」
「え!あんた、まだ挨拶してないの?!」
「いや。一緒に住ませて頂く挨拶には行ったけど。」
「もう!あんたバカねぇ!その時にちゃんと済ませておけば良かったのよ!ねぇ?ともみさん。」
「えっ?あ、はぁ……。」
やばい。全然整理できなかった。それどころか、話はかなり進んでいるみたい。
「まぁ、2人の問題だからな。母さんもそんなに焦らせなくていいだろ。」
「そうだけど……。」
圭吾さんのお父様のその一言で、この話は終わりになった。
今の話を整理すると、私と圭吾さんが結婚する前提で行われていたよね?私、認めてもらえてるって、解釈してもいいのかな?喜んでいいところだよね?
もしかして、圭吾さんとの甘い結婚生活って、そんなに遠くないのかもしれない。だけど、圭吾さんは?ちゃんと私と結婚したいって、思ってくれてるのかな?
「ともみちゃん、もしかしてまだ圭吾くんにプロポーズ受けてないんじゃない?」
私と奈緒さんの2人きりで、みんなが食べ終わった後のお皿洗いをしているとそんな風に聞かれた。
「え!……分かりました?」
「やっぱりね。ともみちゃんのうろたえ様が、ハンパじゃなかったもの。」
クスクスと奈緒さんが笑う。私、そんなに顔に出ちゃってたんだ!
「でもね、圭吾くんはともみちゃんと結婚したいと思ってるから、きちんとよく考えてあげて。ともみちゃんだって、中途半端な気持ちで付き合って、同棲までしてるわけじゃないんでしょ?」
「……圭吾さん。本当に私と結婚したいって、思ってくれているんでしょうか?」
なんだか、30歳だから結婚を急かされて、私と結婚するんじゃないかって、少しだけ不安になる。愛されているのは分かっているけど。結婚って、こんなにトントン拍子に行きそうなものなの?
「どうしてそう思うの?」
「……まだ付き合って半年とちょっとっていうのと、結婚ってこんなに簡単に話が進むものなのかなって。」
「そうねぇ。でも縁があるときは、何でもトントン拍子に進むものよ。」
「縁……ですか?」
「結婚とか、こればっかりは縁だからね。私と誠太は大学から付き合ってるから、そんなにすぐに結婚に至ったわけでは無いけど、結婚しようってなってからは早かったわよ。だから、今がともみちゃんと圭吾くんのタイミングってことなんじゃないのかな。きっと今頃、お義母さんは圭吾くんに怒られてるんじゃないのかな。“プロポーズまだなんだから!”って。」
圭吾さんのお母様が、圭吾さんに怒られているところを想像すると、ちょっと笑えた。
「ふふっ。だと、いいんですけどね。」
「ふふっ。きっとそうよ。そもそも30歳独身男性が、結婚しようと思わない人を家族に紹介したりなんかしないから、ともみちゃんも覚悟決めなよ!」
奈緒さんにバシッと肩を叩かれた。うん。もっと圭吾さんを信じなきゃ、結婚なんてできないよね。一緒に住むときに、圭吾さんに覚悟しろって言われたのを、思い出した。
「私達は、ともみちゃんがお嫁に来てくれるの、大賛成だから。だから気兼ねなく、自分の答えを出すといいよ。」
先輩奥様の意見は、他では聞けない貴重なものだ。なんだか、圭吾さんとの未来を、きちんと考えることができると思う。
「私、圭吾さんと結婚します。」
「え!今ここで、私に宣言?圭吾くんに言ってあげなよ~。」
奈緒さんはゲラゲラと笑ったけれど、でも私は、ここで奈緒さんに伝えておきたいって思った。だって奈緒さんの言葉のお陰で“圭吾さんしかいないな”って思えたんだもん。
「まぁ、ね。時間掛けても結局は自分自身が、圭吾くんと一生を歩いて行きたいかどうかだからね。悩むんだったら、結婚は止めた方がいいし。」
ニコニコと笑う奈緒さんの笑顔は、太陽のように温かいと思った。私も圭吾さんと一緒に、温かい家庭を築いていきたい。
「誠太もだったけど。圭吾くんもイケメンだから、大変そうだよね。仕事場とか大丈夫?」
は!圭吾さんが結婚するってなったら、大騒ぎになりそう!
「だ、大丈夫じゃなさそうです!」
「あははっ!ともみちゃんも大変だねぇ!」
「奈緒さん!私は笑えないです!」
「じゃあ、気をつけて帰れよ。」
後片付けも終わり、すっかり夜になった頃、私と圭吾さんは帰りの支度をした。田舎だけあって、外灯も少なく周りは真っ暗だ。これ、絶対に1人では出歩けない。
「今日はお邪魔しました。すごく楽しかったです。ありがとうございました。」
家の外まで私と圭吾さんを見送ってくれるみなさんに、私は深々と頭を下げてお礼を言う。
「ともみさん、またいつでも遊びにおいでね。」
圭吾さんのお母様が、優しく微笑んでくれる。今度はこの人の義理の娘になるって、確信を持って来れるって思えた。
「じゃあ。またな。」
私達が乗り込んだ車を、圭吾さんが発進させる。
「「「ともみちゃん、ばいばぁ~いっ。」」」
元気よく手を振ってくれる3人姉弟に、私も笑顔で手を振り返す。なんだか、帰り難い。
「ふっ。“ともみちゃん”だけかよ。」
圭吾さんは楽しそうに、笑みを漏らした。圭吾さんの家族は、私達の車が見えなくなるまで、外に出てお見送りをしてくれた。やっぱり私、圭吾さんの家族の一員になりたい。
「圭吾さん。」
「ん?どうした?眠いなら寝てていいぞ。今日、あんまり眠れてない中だったし疲れたろ。」
帰りの車の中。行きの車中の私とは打って変わって、疲れているはずなのに、眠気は全然起こらなかった。
「私、いつから圭吾さんと同じ名字になっていいかな?」
このタイミングじゃないと、もう聞けないって思った。そして、この胸の高鳴りがないと、もう言えないって思った。
「……は?」
赤信号で車を止めた圭吾さんが、吃驚した様子でこちらを見たのが分かった。だけど助手席に乗る私は、フロントガラスの向こうに光る、赤信号を見つめたまま。
「……あ、あー。母さんが言っていたことなら、気にしなくていいから。まだ、そんな、な。付き合い始めて1年も経ってないわけだし。ともみもまだ若いわけだし。考えてくれる程度でいいよ。」
珍しく、圭吾さんが逃げ腰だと思った。
「うん。考えてるよ。だから、私と結婚して欲しい。」
車の中で、しかも圭吾さんが運転している状態で言うのも、どうかと思ったけれど、でももう、このタイミングじゃないと、私は一生言えないと思った。
今までの圭吾さんを考えたら分かることだ。毎日がプロポーズのようなものだった。始まりは急展開で、あんなだったけど、常に私を愛してくれた。一緒に住み始める時だって、自分の家族にも、私の家族にも誠実で居てくれた。ずっと好きだったと言ってくれた圭吾さん。
きっと最初から私と結婚する気で居てくれている。だけど、私が年下っていうこともあって。私が、圭吾さんを愛し始めたのが、まだ半年ということもあって。圭吾さんは、私のペースで歩こうとしてくれている。
だから私のことを、世界一愛してくれているのは、紛れも無く圭吾さんなんだ。
「は、え?!」
私の言葉に釘付けになって、信号が青に変わっても車を発進させない圭吾さん。
「圭吾さん、青だよ。」
「あ、あぁ。」
ゆっくりとアクセルを踏み出す。
「……。」
「……。」
車内無言の私達。
「ともみ、ちょっと寄りたいところがあるんだけど、いい?」
沈黙を破ったのは圭吾さんだった。
「うん。」
今、色んな事を頭の中でぐるぐる考えている圭吾さん。きっとそれは、私の将来のことだ。誠実な圭吾さんは、私の将来のことを、私よりも先手を打って考えてくれている。
「ちょっと外に出ないか?」
圭吾さんの寄り道は、圭吾さんの地元を見渡す事ができる、ちょっと小高い山だった。田舎だと思っていたけれど、街の光はキラキラと輝いていて、宝物を寄せ集めたみたいだった。
「綺麗……。」
そして麓より少し高いところだからか、肌に当たる風がひんやりしていて気持ちいい。
「この街で高校卒業するまで、育ったんだよ。」
「うん。」
「……ともみより6歳も上なんだから、そりゃあ色々な経験してきたよ。」
「うん。」
「でも俺は、その経験が全部、ともみに出会うために。……ともみを守るために経験してきたことだと思う。」
「うん。」
圭吾さん。圭吾さん。私もね、そう思うよ。私の経験も、圭吾さんに出会うためだったって。
「過去も未来も現在も。全部ひっくるめて、ともみを愛してるよ。」
まっすぐ私を見つめる圭吾さんの瞳は、輝いているのが暗くても分かる。
「大島ともみさん。」
「はい。」
「僕と結婚してください。」
「……はい。」
宮本圭吾さん。過去も未来も現在も。全部ひっくるめてあなたを愛しています。
優しく抱きしめてくれた圭吾さんの肩越しに見えた街の光は、今までの圭吾さんの過去、そのもののように見えた。これからは、私が圭吾さんの宝物も、一緒に大切にしていくからね。
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