第25話「建国~童貞社畜王~」
ルリアとミーヤ率いるルートリア軍はヌーラント軍と協力して、ヌーラント領内に侵攻していた魔物の群れを挟撃。
激戦の末、どうにか魔物たちを山へと敗走させることができた。
特に、ルリアの活躍はすごかったらしい。これまでろく働けていなかった鬱憤を晴らすかのように獅子奮迅の戦いをしたようだ。もちろん、ミーヤも異世界屈指の魔法力を遺憾なく発揮したらしい。
リリが自慢していたとおり、ルリアとミーヤの力は突出していた。そして、窮地を救われたことで、ヌーラント軍やヌーラント国民にもルートリア国への感謝の気持ちが芽生えた。
これも、あるいはリオナさんの狙いだったかもしれない。ヌーラントが魔物との戦いで疲弊した絶妙のタイミングで交渉をしたと言えるだろう。
とにもかくにも――領内から完全に魔物たちを掃討したことにより、二国の合併式が行われることになった。
いろいろと折衝した結果、君主の居城兼王都はルートリア城に決まった。
魔物の侵攻によってヌーラントには被害が出ていたので俺がヌーラント城にいると再びモンスターの侵攻で荒れる可能性がある。なので、あえてルートリアに移ることで魔物の矛先をルートリアに向けさせたのだ。
そのため、ルートリア北方に簡易な砦を設けてルリア率いる軍が進駐して守りを固めることになった。
ルートリアの臣下や民もヌーラントとの突然の合併には驚いたようだが、リリ自ら『両国の平和のためには、これが一番なのじゃ。最初は戸惑うこともあろうが、ヌーラント国民とも手を取り合い、共に繁栄していこうではないか!』と心から訴えたことで、臣下も民も納得した。
これまで、ルルは国のため、民のために働き続け、実際に成果を上げ続けてきた。
そのリリが決断したのだから、臣下も民も信じてくれたのだ。
過去の実績があるからこその説得力と言えるだろう。
そして、なによりもルートリアの民はリリが好きなのだ。そのリリの決断を最後には支持した。だからこそ、この合併がうまくいったとも言える。
「合併が決まってから、ほんと、あっという間だったな……」
今、俺がいるのは――新しく設えた玉座だ。
新しい国名は『ルーラント』。それぞれの国名を合体させている。
俺の左右には、リリとルルが寄り添う。
臣下の席の筆頭には、香苗、ミーヤ、リオナ、ルリア(式のために一時的にルリアは城に戻ってきている)。続いて、ルートリア城とヌーラント城から選抜され、再配属された文武百官。
謁見の間で――俺は、朗々と声を張り上げる。
「ここに、ルーラント王国の建国を宣言する! 我ら力を合わせ、どんな艱難辛苦も乗り越え、千年の繁栄を築かん! ……どうか、みんなの力を貸してくれ! そして、すべての民が幸福に暮らせるように尽力しよう!」
災の元凶とも言える俺に、大言壮語を吐く権利はないかもしれない。
だが、こうと決まったからには――やれることをやるしかない。
リオナさんからも王として堂々と振舞うようにというアドバイスを受けている。
「ミチトとこうしてまた一緒にいられることができてうれしいのじゃ……。ミチトが国王になってくれたおかげで、わらわの肩の荷も下りたのじゃ」
まずはリリが感極まったように、俺を見つめる。
「ぜんぶ、リリのおかげだ。ヌーラントとの争いを避けられたのも、こうして合併ができたのも、リリが築き上げた民からの信頼があったからだ。俺は本当に未熟だから、これからもいろいろと内政のことを教えてくれ」
「もちろんなのじゃ! わらわも尽力するのじゃ! 必ずやルーラントを世界で一番豊かな国にしてみせるのじゃ!」
続いて、ルルも高揚を抑えきれないといった感じで口を開く。
「お兄ちゃん、あたしもこの国を世界で一番偉大な国にしてみせるわ! お兄ちゃんとあたしたちの力をあわされば絶対に達成できるわ!」
ふたりの姫に続き、臣下たちもそれぞれの想いを口にしていく。
まずは、香苗が――。
「み、道人くんっ、わたしもがんばるから。一緒にがんばろうっ」
続いて、リオナさんが――。
「国のため、ミチトさまのため、軍師という大役、必ずや果たしてみせます。これからも全力で献策をさせていただきます」
最後にミーヤとルリナが――。
「わたしの魔法とおっぱい、ぜひミチトさまのお役に立ててください~♪」
「わたしの剣の腕、ぜひ役立ててくれ!」
みなが本当に頼もしく見えた。
最初に召還されたときは国王になるだなんて思いもしなかったが――みんなのためならいくらでも働こうという気持ちになる。
続いて、文官や武官たちの挨拶があった。
そのあとは一応まだ国境線で魔物たちが再侵攻の構えを見せ始めているので、それぞれの持ち場へ戻ってもらった。
まだまだモンスターとの戦いは続きそうだ。
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