第26話「ハーレムよりも労働を優先する童貞社畜王!」
執務室にやってきた俺は、リリ、ルル、香苗、リオナさん、ミーヤ、ルリアとあらためてこれからの方針を協議する。
まずは、軍師であるリオナさんが口を開いた。
「魔物の勢いが落ちてきている今こそ攻勢に転じるべきです。魔物が数を回復する前に叩いてしまいましょう」
その意見にルルが頷く。
「ここで長引かせるのはよくないわね。今後のことも考えて後顧の憂いは断っておくべきだわ」
確かに、相手が勢いを盛り返す前になんとかすべきだろう。
「ミチト、あとはヌーラントの復興も急ぐべきだと思うのじゃ」
「う、うんっ、お城は大丈夫だけど、だいぶ北部地域は荒らされちゃったから……」
リリと香苗からも意見が出る。
「内政と軍事、どちらも大事ですね~。わたしは~、どちらの仕事もこなせますよ~」
「わたしとしては剣を思う存分振るいたいところだ。魔物たちのの勢いが衰えてたとはいえ、まだまだ気がかりだ」
ミーヤとルリアも自分たちの思っていることを口にした。
それぞれの意見を聞いて、俺も思考を巡らせる。
とりあえず、今やるべきことは――、
「ヌーラント北部の復興をしつつ魔物討伐だな。ヌーラントの復興はルルとリリがあたってくれ。ふたりで協力してヌーラントを豊かにしてくれ」
「わかったわ。あたしとしても、ヌーラントの復興は急ぎたかったし」
「内政好きのわらわには適任なのじゃ!」
ふたりの姫が一緒に内政の仕事をやることで、よい影響もあるだろう。
ヌーラント北部地域復興事業は両国合併の象徴的な事業になるはずだ。
「そして、討伐軍のほうは引き続きルリアに率いてもらう。軍師として前線にリオナさんがついてくれ」
「ああ任せておけ。王国随一の剣の腕を発揮するぞ!」
「かしこまりました。必ず大役を果たして見せます」
ルリアは少し前のめりすぎるところがあるので、冷静なリオナさんと組めばちょうどいいだろう。
残りは魔法使いのふたり。
「香苗とミーヤは城に待機して、臨機応変に両方を手伝ってくれ」
魔法が使えるふたりは内政にも軍事にもその力を使うことができる。
当然、この世界にはブルドーザーだのクレーン車だのはないので大規模な復興事業には魔法が欠かせない。
もちろん、軍事にとっても魔法の存在は大きい。なので、現在の状況では遊撃的にあちらこちらで仕事をしてもらうのが効率がよい。
転移魔法を使えるふたりはすぐに移動できるから、そんなことも可能なのだ。
「う、うんっ、わかった! 臨機応変に動くねっ」
「かしこまりました~♪ 空いた時間はわたしのおっぱい使っていいですよ~♪」
おっぱいをなにに使うというんだ……。いや、深くは考えまい。
ついポヨンポヨン揺れる巨乳を見てしまいそうになるが、こらえる。
おっぱいは罠だ。
そこで、今度はリオナさんが口を開いた。
「ミチトさま。お世継ぎの問題は本当に切実です。もしもミチトさまになにかあったら、たちまちこの世界は男子0、滅亡の危機に瀕します。なので、一秒でも早く子種を残してください。この際、幹部級のこの六人のうちなら誰でもいいと思います。もはやこの国はミチト様の王国。堂々とハーレムを築かれてはいかかでしょうか?」
おっぱいの罠にははまらなかったのだが、リオナさんは思いっきりアレな話題に踏みこんできた。
「そうじゃ! その問題も可及的速やかに解決せねばならぬのじゃっ! そういうわけでミチトわらわと子を為すのじゃ!」
「お兄ちゃんはあたしと子孫を残すべきだわ! 初めての相手が、仮想とはいえ妹とだなんて、燃えるでしょう?」
お姫様は、なんでそういう話題について抵抗がないのだろうか……。
いやまぁ、国にとって世継ぎ問題は実は最も大事なことなのかもしれないが……。
「わ、わわわ、わたしも! み、ミチトくんのハーレムの一員っ……なのかな?」
そして、香苗は顔を赤くして、俺のことをチラチラとうかがってくる。
幼なじみだっただけあって、俺も香苗には、その……多少は特別な感情があったことは認める。だが、だからといって、ハーレムだなんて……。
「うふふ~♪ ミチトさまは元の世界では生涯清らかな身体のまま亡くなられたのですから~、こちらの世界ではハーレムを築いてもバチは当たらないと思いますよ~♪むしろ、そのほうが国のためですし~♪」
「わ、わたしはっ、剣の腕で仕える騎士だ! だ、だが……! ど、どうしてもというのなら、か、考えないでもない!」
なんでみんなハーレムに肯定的なんだ、ふだんは堅物なルリアまで。
……ちょっと気持ちが揺らいできてしまうじゃないか。
それにしても元社畜童貞が国王になり自由にハーレムを築けるとか、本当に元いた世界と百八十度違う人生だ。
……まぁ、こちらの世界でも社畜というか奴隷に転生して生涯童貞のまま過労死とかにならなくて本当によかったとは思うが……。
「ミチトさまがハーレムを築かれることは世のため人のため国のため民のためなのです。人類を滅亡の危機から救うのはミチトさまの子種なのです。そういうわけで葛藤することなく好き勝手やってください。わたしの読んできた歴史書においても、英雄は正室のほかに側室をもうけて、子どもを十人以上作ることは多々ある話です」
確かに、元いた世界の歴史を見てみても、そういうことがあるのはわかるが……。徳川家康とか(徳川家斉なんて子どもが五十三人いたという話だし)。
そうは言っても、社畜で童貞だった俺は歴史上の人物とはほど遠い人間だ。そう簡単に英雄的な思考は身につかない。
平凡な日本人が明日から一夫多妻オッケーと言われてもピンとこないのと一緒だろう。たとえ、世界の国の中で一夫多妻が認められてる国があったとしてもだ。
そりゃ、いきなりアラブの石油王とかと同じ感覚になれるわけがない。
「と、ともかく、その話は置いておくとして! まずは、内政と軍事だ! 仕事はいっぱいあるからな! まずは、それが落ち着いてからだ!」
俺は元社畜らしく労働を優先させることにした。
「へたれ……いえ、慎み深いですね。さすがは童貞のまま生涯を終えられただけあるということでしょうか」
「そこがまたミチトのよいところでもあるのじゃ!」
「それじゃ、誰がお兄ちゃんを一番誘惑できるか競うのはどうかしら?」
へたれで悪かったな! だが、そんな俺を受け入れてくれるリリはさすがだ。ルルの発言についてはスルーしたいところだが……。
「それは名案ですね~♪ それぞれ職務をこなしつつ、折に触れて、ミチトさまを誘惑いたしましょうか~♪」
「わ、わたしもミチトくんを誘惑できるように……が、がんばらないとっ」
「くっ、そういうのはわたしの苦手分野だ……! どうせなら、剣技で決めるというわけにはいかないのか?」
もうなんか、女子たちが積極的過ぎて童貞の俺は恐怖を感じる……。
ぜいたくな話だというのはわかるのだが……でも、その心の準備がっ!
「と、ともかく、仕事だ、仕事! 会議は終わり、解散!」
つい童貞丸出しで挙動不審になりながら、強引にこの話題を終わらせたのだった。
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