第5話「おっぱい魔法◎」
「ご興味ありましたら~、わたくしがいつでも魔法を教えてさしあげますよ~?」
ニコニコしながらミーヤはなぜか身体を揺さぶって、おっぱいを揺らし始めた。
なんだこの巨乳は、幻惑されそうだ。
「あ、あれ~~~??????」
というか本当に目が回る。
おっぱいが、ぐるぐる、ぐるぐる、回る。
ふらふらして、俺はその場に崩れ落ちてしまった。
「ミチトっ!? こら、ミーヤ! なにをしたのじゃ!?」
「あ、はい~、おっぱい魔法をかけて魔法防御耐性を調べてみました~。一時的にふらつくだけで害はないですよ~。……ほら、もう大丈夫なはずです~♪」
その言葉のとおり、すぐに俺の状態異常は治った。
……まさかおっぱい魔法なんてものがあるとは。おっぱい、恐ろしい乳……。
「秘められた魔力はとてつもないのですが~、魔法防御力はかなり低めですね~。でも練習すればすぐに上級魔法を使えるようになりますよ~? これだけの魔法に対する素養が高いのは驚きです~」
魔法か……。働きたくはないが、魔法は使ってみたい気もする。
剣を振るうよりも、俺の性格にあってそうだ。肉体労働は嫌だ。
「ふん、相変わらず魔法使いは破廉恥な格好をして下品な魔法を使う」
ルリアは面白くないといった表情で言う。
「うふふ~♪ ルリアさん~、おっぱいが小さいからって~、魔法使いの悪口はやめてくれませんか~?」
「なっ!? わ、わたしは別にそんなものは気にしてないぞっ! 胸が大きいと鎧を着るのにも剣を振るうのにも邪魔だしな! 皇国を守護する騎士たるわたしにはそんな下品な乳は必要ないっ!」
ルリアは顔を真っ赤にして反論していた。
だが――小さくても大きくてもいいじゃないか、おっぱいだもの。
「わ、わらわはこれから大きくなるから無問題なのじゃ!」
どうやらリリにとっても胸の問題は気になるらしい。
見た目幼女なリリは当然、ほとんど起伏がなかった。
そんな俺の視線を感じてか、リリは不安そうにこちらを見上げてきた。
「そ、その……ミチトは大きいのと小さいのどちらが好みなのじゃ?」
「別にどちらが好きということはない。おっぱいは等しく尊い」
キリッとした表情で告げる。
「あらあら~♪ ミチト様は博愛主義者なのですね~♪」
ミーヤはそう言いながらなぜか両手で乳房を下から持ち上げるようにしてポヨンポヨンと揺らし始めた。そんなことをされたら、当然、視線がそちらに向いてしまう。
悲しいかな、男はみんなおっぱいを揺らされるとどうしても見てしまうのだ。
ポヨン、ポヨン、ポヨン、ポヨン……♪
「うふふ~♪ 大きいと~、こんなふうに弾ませることができるんですよ~? 貧乳の人にはできないんですよ~? ほらほら~♪ ぽよんぽよん♪」
「あ、あれ~~~???????」
再びおっぱい魔法にかけられたらしく、俺は再びふらふらとその場に崩れ落ちた。
意識がどこかへ飛んでいく。
「ええい、やめろ痴女! これだから魔法使いは嫌いなのだ!」
「主命じゃ! もうやめるのじゃ、ミーヤ! わらわのライフはもうゼロであるぞ!貧乳だって今を懸命に生きておるのじゃっ!」
怒るルリアと涙目のリリに抗議されて、ミーヤはポヨンポヨンをやめた。
「うふふ~、申し訳ありませんでした姫様~」
「はっ……ここは」
すごい気持ちのよいおっぱいの国から帰還した俺はキョロキョロとあたりを見回す。よく思い出せないのだが、おっぱいの国はとても気持ちのよい楽園のような場所だった。もう一度行ってみたい。
「……ごほんっ! き、気を取り直して、話の続きなのじゃ! ともかくミチトにはこの城で暮らしてもらうのじゃ! 外出も護衛をつければ好きにしてもよい。城下の治安は最高レベルじゃからな! なにか気づいたことがあればわらわに教えてくれ。異世界から来たからこそ見えるものがあろう。そして、余暇にはルリアやミーヤに剣や魔法を習うのもよい。そして、じゃな……その、わ、わらわとも親交を深めるのじゃっ! な、なにぶんわらわは恋愛経験0なので、至らぬところもあろうが、え、エスコートして、わらわをレディとして扱ってほしいのじゃ。そ、そして……い、いずれは子を……」
そう言ってリリは顔を赤らめてモジモジする。
「うふふ~、姫様もミチト様もがんばってください~。応援していますよ~♪」
「姫様を傷つけるようなことをしたら、わたしが許さんぞ!」
まるでミーヤとルリアはリリの保護者のようだった。
しばらく働かずに引きこもって暮らしたかったのだが、こうなるとなかなかそうもいかないかもしれない。日本人らしく、俺は上からの命令や同調圧力に弱いのだ。
当然インターネットどころかパソコンもないだろうし。
そう言えば本を読む場合はどうなのだろう。
いまかわしてる言葉のように文字は読めるのだろうか。
「質問だが、この世界の文字って今している会話みたいな感じで俺も読めるのか?」
「それはですね~、申し訳ないですが、わたくしの魔法では難しいのですよ~。しゃべる場合の同時翻訳は魔法で可能なのですが~」
つまり、いま普通に話せてるのは魔法によるものだったのか。
「それについては大丈夫じゃ。リオナから文字を教わるがよい。わらわも幼い頃はユリアから読み書き計算、歴史に至るまで習った。リオナは我が国の教育機関ルートリアル学院を首席で卒業した才媛なのじゃ」
あの美人なメイドさん、そんな優秀な人だったのか……。よし、少しずつでも文字を覚えていこう。この国の本や物語も気になるし、文字を読めないとなにかと不便だろうし。
というか、何歳なのだろう、あのメイドさん。普通に二十代中盤ぐらいに見えたが幼い頃のリリに勉強を教えていたとは。
「んむ? ああ、リオナは二十七じゃぞ。わらわは三歳の頃、つまりリオナが十三歳の頃から教育を受けておる。もうその歳で国内一の頭脳を持っていたからな。本来は大臣にすべき人材なのじゃが、リオナ自身が固辞してのう」
思いっきり疑問が顔に出ていたか……。
俺のようにコミュニケーション能力の低い人間はやはりすぐ表情に思っていることが出てしまうのだ。というか、二十七には見えない。見ようによっては、二十歳でも通用しそうだ。
「ちなみにわたしは十八だ」
「わたくしも十八ですよ~。同年齢同士、よろしくお願いいたします~♪」
ちなみに俺が十八だった頃は受験勉強にいそしみつつバイトをこなす日々だった。
あのハードな日々を思い出すだけで死にたくなる。
「それでは、わらわは残っている公務を片づけてくる。ミチトはゆっくり休んでおるがよい。明日はちょうど公休日じゃからな、わらわ自ら城下を案内するぞ!」
治安が最高レベルというだけあって、姫自ら出歩いても大丈夫なようだ。
だが、俺には不安があった。
「世界中の国が男を召喚しようと躍起になっているんだろ? 俺が城下町を歩いたら、たちまち全世界にリリの国に男がいることが広まるんじゃないか? そうなると、力づくで俺を強奪しようと考える奴も出てくるんじゃないか?」
俺がただの社畜だろうとこの世界には現状、男がひとりしかいない。
いわば、俺はウルトラスーパーレアキャラなのだ。
男がいない国は一方的に人口が減り続け、いずれは滅びることになる。
つまり、国家の命運も世界の運命も俺次第なのだ。
冗談のようで冗談じゃない事態だ。
「安心しろ! そんな曲者が現れたら皇国随一の剣の使い手であるわたしが即、成敗してくれる!」
脳剣女騎士さんは自信満々だが、女騎士っていうと敵に捕まって「くっ! 殺せ!」とか言っているイメージしかない(※個人の感想です)。
「ふむ、北の国境付近はモンスターのせいで少し治安が悪くなっておるが、城下にはそう簡単に曲者は入れぬはずじゃ。代々、民の忠誠度も高いしのう」
「リリ様ががんばってらっしゃるから~、民もついてくるのですよ~」
「いやいや、わらわはまだまだじゃ。職務を代行してから五年。民のためにまだまだがんばらねばならぬ!」
そう言うリリの表情はキリリと引き締まっている。
やはりそこは責任ある姫様の顔だった。
ともあれ、今晩の歓迎会と明日の城下町案内はそのまま実行されることになったのであった。
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