第23話

 孝光は校門に向かって歩く真由美を見つけた。だいたいどちらかが校門で待っているので、ここから並ぶのは珍しい。

 小走りで真由美に追いつくと声をかけた。

「まゆみちゃん」

「お、孝光くん」

 真由美が振り向き、立ち止まる。孝光が横に並ぶ。そろって歩き出す。

「今日はめずらしい」

「なんか、特に理由がないんだけど、考えてみると授業が終わってすぐに教室をでてないな、と思ってさー」

 結局、いつも真由美を待たせる。なんとなく、いつもの流れなので受け入れていたが、いつもいつも待たせているのだとしたら、それは対等ではないと思ったからだった。

「私は待つのが好きだからいいんだけどね」

「それでも長時間は嫌でしょ」

「長くなりそうなら連絡くれるでしょ」

「そりゃそうですが」

 信頼されているのだろうか。

「理由もなく待たせないだろうし、あと、いつも私がなんとか早く出てるのもあるし」

「そうなの?」

「言ったじゃん、待つのが好きだってさ」

「うん。だからって待たせていい理由でもないしなぁ」

「孝光くんのその誠実な性格が好きなんだよ」

「うっわっ!」

 まだ好きだと、口にされるとどうにも面はゆい。うれしいのだけれど、恥ずかしい。付き合っておいて何を言うか。

「毎晩ラインで好きっていうじゃん」

「あ、あ、はい」

「だからさ、たぶん、孝光くんのスマホの”す“の変換は”好き“が先頭なのかなと思ってる」

「……そうです」

「素直だなぁ。うれしいよねぇ。なんか私も変換したくなってきた」

 真由美は立ち止まると、スマホを手にする。すぐに孝光のスマホが震えた。


「好き」


 2文字のラインが来ていた。予告通りだ。

「送ってはみたが……」

 真由美を見ると、顔を隠すようにしていた。耳が赤い。

「声と違って、残るのは、かなり恥ずかしいな」

「えっ、そう? 声のほうが恥ずかしくない?」

「孝光くんにラインを送ろうとみると、自分のこれがまず見るのかと思うと、これは相当……」

「なんで、恥ずかしいんだろうね……」

「なぜかしらね……」

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