第20話
「今日は重大発表があります!」
真由美が元気だった。9月のまだ残る強い日差しを照り返すような笑顔を見せている。
「驚きましたか」
「はい」
孝光は真由美の問いに簡単に答える。真由美が機嫌がいいのはうれしい出来事で、夏休みが明けたつらさしかない毎日に対して戦うためには、真由美の笑顔が必要だった。
「今朝、コンビニでアイスを買ったら、アタリが出ました!」
アタリ棒を見せてくれた。
「そりゃすごい。じゃあ、真由美ちゃんはそれを使って、僕も一本買うかなー」
「このアタリ棒を孝光くんに差し上げます!」
「え? それは……」
「その代わり、孝光くんは私にアイスを買ってください!」
「なるほど。それはいいね」
お互いにアイスをご馳走しあう関係だ。それはこの夏一番素敵な関係だ。
「んじゃ、そこのコンビニに行くのです」
「はいはい。なんでそんなしゃべり方なの」
「それは、重大発表っぽくしたかったから……」
真由美と付き合い始めてわかった、突拍子もない行動の一つだろうと思えた。
「アタリはすごいね」
重大発表感を盛り上げなければならない。
「でも、なぜに朝からアイスを食べてたの?」
真由美は食べなさそうなのだが。帰り道でも食べて記憶がない。
「実は……」
「うん」
「昨日、孝光くんが朝から食べてたのを見て……」
「え、ああ、食べたけど……」
朝は人が多いので、登校時間を合わせていないのだけれど。思い返すと、昨日の孝光は多少は涼しくあれと人が少ない時間に登校したのだが、状況は変わらず、結局は途中でアイスを食べて、学校までの道を耐え忍んだのだった。
「えー、だったら一緒に登校したかったなぁ」
「なんか、食べてるところに話しかけても、おしゃべりできないかなって……」
「そりゃそうか」
「なので、今日は私が朝からアイスを食べたのです!」
結局、どれが重大発表なのかさっぱりわからなくなった。ただ、暑さでお互いどうかしてるのだけわかる。
「ま、食べて帰りますか。ご馳走しますよ、真由美さん」
「孝光くん、そのしゃべり方なに?」
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