第15話
12月も中旬が過ぎると、2学期のすべてのイベントが終わり、もはや年末の雰囲気となった。ふたりで並んであるく駅への道の商店街も、クリスマスとお正月がまとめてやってきたような雰囲気だった。
「期末テスト、きつかった……!」
その終わったイベント中でもっともつらかったのは期末テストだった。
「孝光くんは毎回辛そうだけどね」
「辛いんだよ」
なにそのセリフ! やだ、かっこいい! と孝光自身が思ってしまった。真由美はそういう照れる言葉をまず言わないので、自分で思うしかなかったのだが。しかも格好良くはなかった。
「一緒の勉強したのにね」
「毎回毎回助かってます」
いつの間にか、テスト前の休日に真由美と一緒に勉強するのが通例となっていた。図書館であったり、真由美宅であったり。孝光宅はまだ抵抗があった。主に孝光に。それについて真由美は特になにも言わないが、言わないが──と思っている孝光であった。
「お疲れ様でした」
「ほんとうに、ありがとう……!」
孝光は自分が涙もろいとは思っていなかったが、今、真由美にねぎらわれると涙が出そうだった。
緊張から解放されたとき人は涙が出るのだと知った。今知った。
「毎回、毎回たのしいんだよ」
「え?」
テストが楽しいの? テストがおいしいの? と同じくらい意味がわからない一文だった。
「毎日早く帰れるて、ちょっと長く一緒に居られて、週末には孝光くんと勉強だから、休みの日も一緒だし」
「そこは僕も楽しいんだけどね……」
「テスト中は、孝光くんはちゃんとできてるかなって、ずっと思ってるんだよ」
真由美は歯を見せて笑った。とても楽しそうなときの笑顔だった。
「次はもっといい結果をお見せします……」
真由美の試験結果はいつもいつも孝光から見ると雲の上で、見上げると彼女の姿は日の光を背負い、かすんで見えないほどに神々しい。
「んふふ。毎回期待してますよ。前回よりはいい結果だったでしょ」
「それは、はい。けっこうよくなりました……」
「すごい!」
急に真由美が大声を出した。「進歩だよ。すごいことだよ」といつもの声で続ける。
「孝光くんはすごいんだからね」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます