第2話 常識は時に非常識

見事に皆の緊張をほどいた僕は、二人が誓い合うのを見届け、披露宴の食事を次々と腹に納めていった。


うーむ、美味なり。


彩りに花が添えられている北京ダッグが僕らの前に顔を出した時、同じ席の兄が言った。


「これ、食べられるの?」


何を下らぬことを。

こちとら30歳を越えている。

それなりに常識を身に付けていますよ。


「いや、結婚式で食べられない物とか出ないから」


「本当に?じゃあ食べてみてよ」


全く。

兄弟として恥ずかしいよ…


パクりと一口。

ムシャリムシャリと得意気に僕は花を頂いた。


「本当に食べられるの?」


今食べたじやあないか。

実の弟を疑うとは。


代わりに従業員さんに聞いてやった。


「この花、食用花ですよね?」


「あっ、あっ、そ、そうですね!食べる方もおられますしー、そうでない方もー…」


従業員さんの泳ぐ目と、身動ぎ姿が物語る。


『普通は食べないけどね…』


「出されたものは残さず食べなさい」


当てはまらぬ時もあるようだ。


花を噛んでいた左頬は、いつまでもねとりとしていた…

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