第21話 侵入
大和都市上空。
半円状に張られているバリアの更に上に、ソレはいた。
都市へ侵攻しようとする
都市内部では、侵入された際の落下予想地域の住民から避難が開始されていた。
「早く行けよ!
「誰か! ウチの子供を見ませんでしたか?!」
「皆さん! 落ち着いて! 落ち着いて避難して下さい!」
阿鼻叫喚の渦に飲み込まれた人々の中で、都市に残された防衛軍の
都市には、万が一に
人口の殆どを収容することが出来る広さがあるものの、普段は避難訓練などで使用されることがあるだけで、実際に避難するとなるとスムーズには進まなかった。
そんな中、明滅を続けていたバリアが一際明るく輝くと、ガラスが砕けるような音が響き渡る。
あまりに大きな音に、避難を進めていた群衆が空を見上げる。
その視線の先に映っていたのは、大きく開いたバリアの穴とそこから都市内部に侵入してきた
一瞬の静寂。
次いで、群衆の悲鳴が響き渡った。
「きゃあああぁっ!?」
「バリアが破られた! もうお終いだぁ!」
秩序を失った群衆へ襲い掛かる
都市に侵入した
次々と上がる悲鳴の中で、避難誘導をしていた
つまり
しかし、そんな
より美味な“餌”にありつくために一息で殺すようなことはせず、実力差を見せつけるようにじわじわと
圧倒的な力量差に
ドゴオォッ!!
轟音を立てて、乱入者が現れた。
「な、なんだ?!」
巻きあがった砂埃の中から現れたのは、
「深愛! お前はここで俺の実力を見ていろ! そうすれば、あの卑怯者よりも俺の方がお前に相応しい事が判るだろう」
一方的にそれだけを言うと、長剣を構えて
突然の出来事と、あまりにも普段と違う雰囲気の景之に驚いていた深愛だったが、周りに傷ついた
「大丈夫ですか?!」
「き、君は……
「私は彼に無理やり連れてこられたので……。それよりも! 怪我しているじゃないですか! すぐに治療しますね」
「君は……?」
「私、これでも回復特性持ちなんです。でも、ちゃんとした訓練をしているわけではないので……」
言いながら深愛は倒れている
「これで学生……?」
「ごめんなさい。あまり動かないで下さい」
「あ、ああ……」
驚きを露わにした
Sランクに至るほど大きな慈愛の心と希少な回復特性が合わさって、
「……とりあえず、これで大丈夫だと思います」
「これは……凄いな。傷がしっかりと塞がっている。ありがとう」
「いいえ、これくらいしか出来ないので……。あ、他に怪我をしている人は……?」
「それがあっちにも……」
ドオンッ!!
「今度は何だ?!」
再びの轟音に音のした方向を見ると、家屋の瓦礫に埋もれる景之の姿があった。
消耗しているのか、額に大粒の汗を滲ませながら必死に抜け出そうとするが、上手く身体強化に籠める『
そんな景之に向かって、
その数は3体と減っているが、圧倒的な力量差に変わりはない。
むしろ、怪しげな薬を使っているとはいえ、入学したての学生が伝承級2体を撃破しているこの状況は驚嘆すべき事実だった。
「ぐっ、くそ! 『
ふと、
「深愛!」
その姿を見た景之が深愛の名前を叫んだ時、
今まで追い詰めに掛かっていた景之の事は忘れたかのように、深愛たちの方向へ向きを変える。
「おい……どこへいく! お前たちの相手は俺だ!」
景之の叫びに、
彼らはその叫びで確信したのだ。
自分たちに歯向かった男の弱点が、目の前の少女にあるという事に。
「あ、え……」
真っすぐに見つめられた深愛は、突然の恐怖に身がすくみ動き出せずにいた。
その間にもゆっくり、ゆっくりと距離を詰めていく
背後から聞こえる景之の叫びは、彼らにとって心地の良い音楽だった。
遠く無かった
傍らに横たわる
傷が塞がれたとは言え、ついさっきまで重症だったのだ。
無理もないことだった。
景之の叫びが更に大きく、悲痛なものになる。
その声、一音一音を噛み締めるようにしながら、
(助けて……じゅんくん!)
恐怖に声が出せず、目を瞑りながら胸の内で叫ぶ深愛へ鈎爪が突き刺さる直前、深愛の頬を微風が撫でた。
「え……?」
いつまでも襲ってこない衝撃と、場違いなほど優しい風に恐る恐る目を開ける。
すると、目の前に居たのは恐怖の対象であった
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