第6話 心機
「じゅんくんは一体何を考えているんですか?!」
学園の長い廊下。
広大な学園に見合う広く長い廊下で、桃色の髪の少女が白髪の少年へ語気強く疑問の声を投げかけていた。
「いや、その━━ごめんなさい……あいちゃん」
そんな二人に続くのは深愛の親友、
謝罪の言葉を受けた深愛は、嘆息と同時に肩を竦めると、後ろへ振り返った。
「二人とも、付き合わせちゃってごめんなさい」
「ぜーんぜん!ウチらも気になるしさ、ね!雫」
「うん、深愛の王子様がどんな『
申し訳なさそうな深愛に対して、二人は何でもない事だと答える。
四人は今、氷室教官の指示で学園内にある『
教官によって急遽決められた模擬戦で、純一の使用する『
「それにしても、本当に良かったの?」
「ん、なにが?」
「いやだって、あのいけ好かない
咲が言っているのは、数分前に決まった事だった。
模擬戦をする上で『
本来であれば、学園に入学したばかりの新入生は自分の『
しかし、咲曰くいけ好かない八岐は学園の入学に際し、実家から専用の『
「そもそも『
「雫さんは……詳しいんだね」
「ん、興味があっただけ。それと、雫でいい」
雫が言った通り、基本的に『
しかし同時に、個人の『
相性の良い『
そして、個人用に調整された『
咲が最初に憂慮したのは、そのことだった。
「まあ……何とかなると思うよ、それは」
「“外”から戻ってきた自信、ってやつなのかな?あ、私も咲でいいからね」
「了解……お、ここかな?」
「はい、ここが学園の『心機保管庫』です」
四人が足を止めた先には、大きな扉とその上に書かれた“心機保管庫”の文字があった。
「お、来たね新入生たち。氷室教官から話は聞いてるよ、今年もそんな時期になったんだねぇ」
扉の中に入るとすぐ目の前にカウンター設置されていて、そこから一人の女性が声を掛けてきた。
「えっと、貴女は?」
「あれ?入学式で挨拶したはず……ああ!君が今日から入ったっていう?」
「はい、
「私はこの保管庫の管理人をしている、
自己紹介を終えると、早速本題とばかりに手元の端末に視線を落としながら戸隠が口を開く。
「それで、須佐くんはどんな『
「刀を、出来れば太刀の『
茶目っ気たっぷりに、舞台役者のように大仰な物言いをする戸隠に、純一は短く答えた。
「へぇ……面白い子だね。よし、ちょっと待ってて」
好奇の色を瞳に浮かべたかと思うと、そう言って更に奥の部屋へ入っていった。
恐らく、そこが本当の保管庫なのだろう。
「ね、ねぇ……刀型、それも太刀型の『
戸隠の姿が見えなくなってすぐに、咲が驚きの表情と共に聞いてきた。
咲だけでなく、深愛や雫にも同じ表情が浮かんでいる。
「冗談のつもりはなかったんだけど……何かマズいの?」
「マズイ訳じゃない。でも、刀系統の『
「ああ、なるほど。確かに、慣れてない人には難しいかもね」
雫の補足に、純一は納得とばかりに頷く。
「慣れてない人って……そんな簡単に言えるくらいでしたっけ?」
純一の言葉に、深愛は驚きを深めるばかりだった。
『
その中で刀は、扱いの難しいものとして知られていた。
そもそも、『
では何故刀型が作られたかというと、より鋭さを求めた人が居たからだ。
剣よりも鋭く、『
形を作るのは簡単であった。
しかし、それを使う側にある一定の技術が必要とされた。
それは、より精緻な『
ただ『
だからこそ、新入生が間違っても扱える筈のない代物の筈だった。
「ほら、お待たせ。数が少ないのは勘弁してね。何しろ使う奴が少ないもんでね」
程なくして戻ってきた戸隠が、手にしていた『
「拝見します」
その一振り一振りを手に取り、鞘から抜いて確認していく。
「これは……」
その内の一振り、鞘に入れられた紫の刺し色以外は黒という素っ気なを感じさせる太刀を純一は手にした。
「そいつはウチの工学科のだね。銘は烏丸、確か
「そうですか……」
他の太刀に霞んでしまうほどの飾り気のなさだが、手にした瞬間の感触は全く違った。
「これにします。むしろ、これ以外には考えられません」
「気に入る物が見つかって良かったよ。じゃあ、貸出登録をするよ」
こうして、純一の『
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