第4話 もう一人の幼馴染
「……君は?」
険しい表情を隠そうともせずに声を掛けてきた
そんな純一の態度が気に入らなかったのか、景之の引き連れた男子たちの視線が更に鋭くなる。
男子の数は2人。
つまり、景之のチームに加入しているメンバーであり、八岐の門下生であった。
「俺は
「……へぇ。それで、その
景之の言葉に、不敵な笑みを浮かべる純一。
二人の間に漂う不穏な雰囲気に、教室がざわつく。
「
自信満々に仁王立ちする景之は、席に着いたまま見上げる純一を、文字通り見下すような態度だった。
後ろにいた二人の男子も腕を組み、景之に追随して純一を見下していた。
もともと、深愛をチームに入れようとしていた景之としては、自分以外のチームに加入されるのは我慢ならなかったのだろう。
良く知りもしない、それも男子が同じチームとなれば尚更だった。
景之としては、目の前の新入生がSランクでなかったら因縁をつけてでも、深愛をチームに引き込むつもりだった。
「僕?Fランクだけど」
瞬間、教室から音が消えた。
「は、はは……はははっ!」
痛い程の静寂を破ったのは、嘲りを隠そうともしない景之の笑い声だった。
「いや、済まない。中々に面白い
「と言われても、嘘でも冗談でもなく、本当に僕はFランクなんだけど」
困ったように純一が言った瞬間、景之の視線がゴミを見るかのようなものに変わった。
入学時のランクがFということは、『
そして、純一たちが居る場所は『
適性の無い者は、入学することが叶わない。
『
「ふん……ゴミが、コネでも使って入学してきたか」
静まり返った教室に、景之の冷たい言葉が響く。
「ちょっと景之くん!そんな言い方しなくても……」
「深愛、俺はさっきも言ったはずだ。仲良しこよしはどこでも出来る、と。加えれば、そこのBランクなら百歩譲って友達付き合い程度は許せる」
諭すように、穏やかな言葉と視線で深愛へ言葉を掛けたかと思うと、同一人物とは思えないほど冷たい表情と視線を純一に向ける。
「だが、こいつはダメだ。Fランクなんて最低最悪のゴミと、友達どころか知り合いだなんて許せない。ましてや、チームを組むなんてことは
『
もちろん、人の心は常に一定という訳ではないから揺らぎはあるものの、大きな差はないとされている。
その評価の中でもFランクというのは、最底辺。
心が弱く、挫けやすく、逃げやすいと言われている。
故に、Fランクとされた人を“ゴミ”と言う人も少なからずいるのが現状だ。
しかし深愛には、突き付けられる景之たちの視線を真正面から受け止める純一の姿が、Fランクのものとは思えないでいた。
(何か、事情があるんじゃ……?)
「氷室教官、どうしてFランク如きが入学してきたんですか?何かの手違いですか?」
「いや、須佐はちゃんと試験を受けて入学しているぞ」
教室の隅に座る氷室教官は、景之の質問に笑みを浮かべながら答えた。
確かに質問には答えている、全てを話した訳ではなかったが。
氷室教官としては、これから起こるであろう事に興味があった。
「Fランクでありながら入学させた?冗談じゃないぞ。万が一にでも正式な入学だったとしても、Fランクを深愛と同じチームにするなど俺が認めない!」
「ふ~ん。でもさ、君が認めないからってあいちゃんのチーム編成に口を出せるのかな?」
不敵な笑みを浮かべながら煽るような言葉を口にする純一に、景之の顔を怒りで真っ赤になる。
「いい気になるなよFランクのゴミがっ!どんな手を使ったかは知らんが、お前はこの場に相応しくない。深愛とチームを組むなど論外だ……分を弁えろっ!」
「景之くん!流石に私でもそれは怒るっ━━じゅんくん?」
声を荒げて景之に詰め寄ろうとした深愛を、立ち上がった純一がその肩に手を乗せて制止する。
「そこまで言われて黙っているほど、僕はお人よしじゃないよ。それで、相応しくないって言うならどうするの?僕はあいちゃんとチームを組む事を諦めるつもりはないよ?」
景之に対する怯えや卑屈といった感情が見られない純一の態度が、景之の癇に障った。
「このっ!まだ言うか!お前に深愛と同じチームになる資格などない!深愛は、俺のチームに入れるのが決まっているんだ!」
「ちょっと!黙って聞いてれば勝手なこと言って!みゃーちゃんはウチらのチームだよ?!」
「そうだそうだ。勝手に横入りしてくるな」
景之の言葉に、咲と雫が抗議の声を上げた。
親友とチームを組んでいたのに、それを横から掻っ攫われそうなったからだ。
「Bランクは黙っていろ。友達付き合いくらいは許容するが、
「ッ!それは……そうだけど」
景之の言った事は、厳しいようだが事実でもあった。
新入生でも2人しかいないSランクが組めば、それだけ安全性は増すだろう。
自分の想いと深愛の安全を天秤に掛け、何も言えなくなる咲と雫。
「じゃあさ、君はあいちゃんを
「当たり前だ!」
そう言い切った景之に、純一は浮かべていた笑みを消した。
「
近くにいた深愛たちが怯えるほどの、冷たい声で言う。
「な、なッ……こちらが優しく諭してやっているというのに、実力で分からせなければならないかッ!!」
純一の言葉に、我慢の限界とばかりに激高した景之が殴り掛かった。
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