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「・・・・・・で、いつまで続けてるんだ」

「続けるって、何を?」

「決まってるじゃないか、玲惟羅との魔王と家来ごっこさ」


 俺はたこさんウインナーを頬張る永一郎に聞いた。

 それを咀嚼しながら彼は聞き返した。

 俺も卵焼きを口に入れながら言った。


「ああ、そんなことか。もぐもぐ。今更そんなこと聞くなよ。決まってるだろう、死ぬまでさ。前にも言ったと思うけど、僕は中学の入学式で玲惟羅様をみたときに衝撃を受けたんだよね。もちろん美少女だと言うこともあるけど。あの自信にあふれた行動、言い方、僕が一生を捧げるのはこの人しかいないって」

「いったい玲惟羅のどこら辺に感銘したんだかさっぱりわからん」

「自分で言うのもなんだけど、僕ってさぁ、どんなことでもそこそこできたんだよね、でもものすごく勉強ができるわけではないし、ものすごくスポーツが上手くできるわけではない、顔だっていたって普通、しょせん僕ごときは平凡でつまらない人生を送るしかないだろうって諦めてたんだよね。それを打破するにはどうしたらいいんだろうって常々考えていたんだけど答えは出なかった。それが中学で陛下に会ったときにひらめいたんだ。つまらない人生を送るのを回避するには、世の中を面白くする人について行けばいいんだって」


 俺もじゃがいもを口に入れた。なるほど、一晩おいた肉じゃがは味が染みていて旨い。


「玲惟羅は自分の前世が別世界を支配していた魔王だと思いこんでいる、ちょっと言動がおかしいだけの普通の女の子だよ。別に魔法が使えるわけでもないし」

「だとしてもさ。人生はたった一回こっきり、やり直しがきかないじゃないか。無難で平穏な人生を送ることを信条としている人もいるけど僕はまっぴらごめんだね。たった一度の人生おもしろかしく過ごさなきゃね。それには、博打を打つしかない」

「ただ単に意地になって後戻りできなくなってんじゃないのか。博打で全財産を失う典型的なタイプだぞ」

「そんなことないさ。実際中学での三年間は楽しかったよ。いろいろトラブルもあったけど、それも含めてね」

「俺が思うに結局、変なやつの周りには変なやつしか集まってこないという感じがする」

「そういう旭も含めてね。そんなことよりさ、玲惟羅様のことをどう思ってるんだ。はた目には祐乃ちゃんと二股かけてるようにしか見えないんだけど」

「俺と玲惟羅と祐乃も腐れ縁さ。恋人であり、兄妹であり、幼なじみでもある」

「少なくとも祐乃ちゃんは本気に見えるんだけどなぁ。腐れ縁とか悠長なことを言ってても大丈夫か?」

「・・・・・・たぶん」

「まぁ、同居している玲惟羅様の方にアドバンテージがあると思うけど。羽生家にやってきて九年だっけ? それだけ長いといっそのこと養子にしちゃえ、という話とかでないのかい」

「さぁ、そこら辺は大人の事情というやつじゃないか。冗談交じりに俺のお嫁さんになっちゃえば名字は同じになる、なんて母さんが言ってるぐらいだ」

「玲惟羅様の両親と音信不通というわけではないんだろう」

「そういうことでもないみたいだ。ただ玲惟羅の両親は離婚していてそれぞれ別の相手と再婚して、子供もいるらしいけど」

「初耳だね。なんか玲惟羅様が両親にすてられたようでかわいそうだ」

「そうだな・・・・・・。でもきっと玲惟羅は俺の両親のことを自分の親だと思っているさ。実際に父上母上と呼んでいるぐらいだからな」


 そのとき、教室のドアが勢いよく開かれ、男が大声で叫んだため、永一郎との会話が途切れた。

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