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 今日の午後の授業は、体育館でのクラブ活動紹介だ。

 田中の取り巻き以外にもギャラリーが多かったのは、皆が元々体育館に用事があったからだ。

 俺たちもそのまま教室に戻ること無く体育館に残った。


 各部活の紹介に充てられた時間は三分間。

 運動部の多くは、全員がユニフォームを着て、壇上に立ち活動をアピールする。剣道部などは防具を着込んで実際に壇上で試合を行った。

 バスケ部の紹介のとき、その中に田中臣弥先輩もいたが、心なしか元気がないように見える。


 運動部に続いて文化部の紹介の番になり、玲惟羅が目的にする手芸部は十番目に登場した。

 全てのクラブが複数で壇上に立ち活動を紹介する中、手芸部はやはり女生徒が一人で自分が作ったという、ぬいぐるみやマフラーを紹介している。


「結構美人だな」


 隣の永一郎が俺にこっそり耳打ちする。

 彼の言うとおり壇上に立つ彼女は美人だ。

 少しおっとりした印象があるものの、制服ごときでは隠せない胸が印象的な、素敵なプロポーションを持つお姉さんだ。


 クラブ活動紹介の時間が終わると、体育館から生徒はそれぞれの自分のクラスへと一旦戻った。


「さぁ、いくかの」

「そちらの彼女は?」


終業のホームルームのあと、待ち合わせていた一組の教室の前に行くと、玲惟羅が別の女の子と一緒に待っていた。

 彼女の後ろに隠れるように、長い黒髪の女の子がうつむき加減でこちらを向いている。


「この者の名は同じクラスの持田日菜(もちだひな)、手芸部入部希望者だそうだ。つまり予の新しい下僕じゃ」


 そんな本人の前で下僕だなんて、なんてこと言うんだ。


「この二人は、下僕としての先輩じゃ。こちらは羽生旭、そちらの眼鏡は新郷永一郎。いろいろと学ぶといいだろう」


 特に反論しないと言うことは、下僕となることは本人承知なのか。


「日菜ちゃんていうんだ~、可愛い名前だね、僕の名前は新郷永一郎、よろしくね」


 さっそく永一郎がなれなれしくそばにより彼女の顔をのぞき込み、自己紹介をする。

 持田さんは若干腰が引けていたが、それでも小さい声で「よろしくお願いします」といってくれた。

 俺は彼女に近づいてこっそり耳打ちする。


「引き返すなら今のうちだよ、玲惟羅に関わると妙なトラブルに巻き込まれる。彼女が君のことを下僕と言ってるのは冗談ではなく本気だよ」

「いえ、私に話しかけてくれたのは荒木さんだけです。彼女といるとすごく楽しいです。あと手芸部に入りたかったのは本当です」


 玲惟羅といると楽しいとな。これが地獄の入り口かもしれないのに。


「こそこそ何を話しておる。では向かうとするかの。我が城、手芸部部室へ」


 玲惟羅を先頭にみんなでぞろぞろと部室棟に向かう。

 この学校は数年前共学化に伴い校舎は建て替えられたが、旧校舎の比較的新しい部分は残され、今は文化系のクラブの部室として使われている。

 元は教室だった部屋は部室としては広すぎるため、全て真ん中を壁で区切り半分ずつあてがわれている。

 同じ文化系でも華道部などは新校舎に部室があり、そこにはあまり優遇されていないクラブがはいっているようだ。

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