第218話 秀吉はどこだ?

 武田流抜刀術 神滅閃。勝頼オリジナルの剣技だ。陽炎が残像を利用した目の錯覚を利用するのに対し、神滅閃は溜めからの瞬発力を最大限に使う。斬鉄剣 鬼切丸の強さと合わせて勝頼が刀を抜いた時、切れない物はない。


宗矩が斬られたのを見て門下生が暴走した。一気に勝頼に斬りかかろうとしたのだ。それを見た紅、黄与、紫乃の3人は雪風改を撃ちまくり、高城は刀を手甲で受けカイザーナックルを付けたパンチで門下生を吹っ飛ばした。柳生門下生は雪風改の銃弾を刀で弾いた。おそるべき力量だが数の暴力には勝てず徐々に数が減っていく。高城にも次の門下生が襲いかかる。柳生門下生の剣速は速く重い。だが高城はそれを受け止め、避け、そして素早く後ろに回り込み手刀を繰り出す。勝頼も刀で応戦し、1人、2人と倒していく。柳生門下生は強かったが相手が悪かった。最後に高城の旋風脚が決まり敵は力尽きた。寅松の出番は無かった。やれやれ片付いたと気を抜いた瞬間だった。倒したと思っていた右近の部下が生きていて勝頼の胸をリボルバーで撃った。勝頼は倒れた。


 右近は、


「やった、やったぞ。勝頼を殺した。これで豊臣の勝ちだ」


 と言いながら砲台を操作し始めた。ん、なんかおかしい。勝頼が倒れたのに誰も騒がない。振り返ると勝頼が何も無かったように起き上がっていた。


「か、勝頼。何で生きてる。鉄砲が胸を撃ち抜いたのでは無かったのか?」


「胸には当たったけどな。撃ち抜いてはないぞ、ほら」


 勝頼は笑いながらベストの裏側を見せた。鉄板が入っている。お市特製の防弾ベストを着ていたのだ。


「これ少し重いんだよ。宗矩に勝てて良かった。これ着てなきゃ自信あったんだけどな。みんな胸を狙ってくるから助かる」


 勝頼はおどけて右近に話した。右近は顔が青ざめている。勝頼を撃った兵は高城に殴り殺されていた。高城は右近を睨んだ。次はお前だと。勝頼は続けた。


「秀吉はどこにいる?」


「殿下は少し前から見当たらない。それよりどうやってここにきた。いつから城に居た?」


 そうか、それを聞きたいか。またまた時間を遡って昨夜の事だ。昨夜は新月、夜は真っ暗だった。大阪城は夜襲を恐れていて城の周りは明るく、上空からの攻撃も警戒していた。ただ、警戒は見える範囲しかできない。特に真上は無防備だ。そう勝頼は小型の飛空船を用意していた。海上から飛空船で暗闇の上空高く飛び上がり大阪城の真上で停止し、


「よし、お前ら準備はいいか。城兵に見つからないように城の真上を旋回しながら降りるぞ、はみ出すと見つかるからな。気を抜くな!」


「了解」


 飛行船の操縦士を除き、勝頼、高城、寅松、紅、黄与、紫乃の6人はハンググライダーで飛空船から飛び出した。


「よっしゃ、いっく」


 勝頼が話をしようとした時、上に被された。


「私たち〜、今飛べるクノイチ、戦国飛行隊」


「の紅でーす」


「黄与でーす」


「紫乃でーす」


「1人足らないけど、ごめんね(ハート) 」


 おい、何やってる。しかもカメラ目線で。そもそも誰に向かってやってんだこいつらは。勝頼はなんか言おうとしてた事を忘れてしまい頭を抱えながら城の上に旋回しながら降下していく。そうだ、科学忍者軍団、かっちゃんまん、て叫ぼうと思ってたんだ。思い出した時には遅く大阪城9階に降りたった。城上部はギャドンにより破壊され誰もいない。完全に放棄されているようだ。


「このままここで待機だ。秀吉は俺が直接討つ、その機会を待つ」




「というわけで昨夜から上にいたのだ。出てくるタイミングが難しくてな。そうだ、沙沙貴彩という忍びを知らないか?」


 右近は答えた。


「昨夜からだと、なぜ誰も気づかん?それにタイミングとは何だ?時期の事か?彩というくノ一ならさっきまでいたが、そういえば姿が見えん。殿下といいどこへ行ったの……」


 右近は質問に一気に答えつつふと思い出した。まさか、あそこから?


「右近、思い当たる節があるようだな。そうか、秀吉は逃げたか」


 紅が聞いた。


「逃げるってどこへですか?城は囲まれていて逃げるところなんてありませんよ」


「それはこの右近が知ってるよ、なあ右近」


 右近は答える代わりに長距離砲をいきなり発射した。驚いたのと振動で皆がぐらつく中、右近は階下へ走り出した。


「お前達は追え、高さんと寅松は俺と上に」





 右近が撃った長距離砲弾は信勝本陣を直撃した。あの僅かな時間にきちんと狙いをつけていたのだ、まあ半分は偶然だが。逃げながらそれを見た右近は飛び上がって喜び、そのまま4階の隠し扉をくぐり姿を消した。紅達3人は右近を追ったが敵兵が多く進む事が出来ず9階に引き返した。勝頼達がハンググライダー、そうこれは新型だった。名付けて『光乃突刃叉ヒカリノツバサ』。まあ名前負けしてる気がするけど気にしない。この名前が付けたかっただけです。見ると勝頼達が先に北に向かって飛んでいた。紅達はそれを追うように飛び立った。



 信勝本陣、実はもぬけの殻だった。そこには鎧兜を着た人形が飾ってあり、そこを砲弾が直撃した。長距離砲が完成すれば豊臣が狙うのはここだと考え2日前からこの状態だ。一応兵が報告に来たふりをしたり辺りを兵が歩いたりして遠目には本陣としか見えないようにしていたのだがうまくいったようだ。



 城の2階では引き続き戦闘が続いている。井伊直政に続き上杉軍も2階に登り戦い始めた。こうなればもう時間の問題だ。秀吉はどこだ?直江兼続は兵に隅から隅まで探すように命じた、どこかに居るはずだと。




 その頃、元祖赤備えの山県昌景隊は10人1組になり、城の周囲を探索していた。また、服部半蔵、茜率いる忍者部隊も探している、そう、探すは風魔小太郎だ。どこへ隠れたのか?あと探していないのは上杉が陣取っていた北側だ。徐々に皆が北側に集まりつつあった。

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