第212話 跳ね橋の攻防
甚三郎は
だんだんと跳ね橋が降り始めた。だが降りたのはこちら側片側だった。この橋は真ん中から両側に持ち上がるようになっていたのだ。秀吉は大阪城6階から望遠鏡でその様子を見ていた。
「そっちからでは片側しか操作できないように連結部は壊してある。しかし駆動部を壊したはずの昇降装置を片側とはいえこの短時間で動かすとは大したものだ。だがここからどうするつもりだ勝頼?まあいい、ぼちぼちこっちも三成の出番だな」
と、独り言をいっていたらまた西側に砲弾が着弾した。今度は4階にだ。秀吉はすでに大谷刑部に兵を三千預け武田の大砲部隊にあてていた。大砲は陽動だろう。どう見ても本命は正面の大軍だ。それに遠くに見える信勝本陣、もうすぐだ。ここから狙ってやる。
ただ城の兵は城に直撃する砲弾に怯えていた。秀吉は自ら各階を周り、兵を勇気付けた。あれは威嚇だ、城はあの位では何ともないと。
装甲車2台が降りた橋の先端に進み止まった。装甲車に乗るのはお幸と桃だ。すぐ後ろには甚三郎の
「桃、この間合言葉忘れたでしょ!大御所が怒ってたみたいよ」
「えっと、この間は気が動転してて、行きます。チェーンジゴーリー、スイッチ オン!」
桃は変型ボタンを押した。装甲車の上側が持ち上がり両腕が現れた。腕の先はそう、
桃は続けて叫んだ。
「ダブルゴーリーパーーーーンチ!」
両腕が飛んでいき堀の反対側の石垣に刺さった。腕にはワイヤーが付いている。
「甚三郎さん、お願いします」
甚三郎は傘のような物を広げた。ワンタッチ傘のように勢いよく開いたそれはアルミでできたネット状の盾になった。ネットは三重になっている。甚三郎は傘を前面に広げ盾とし、そのままワイヤーの上を歩き始めた。
その頃石田三成は、秀吉に正門から入ってくる武田兵の迎撃を命じられ内堀と外堀の間にあるトーチカ内にいた。トーチカや曲輪は数多く配置され機銃が設置されている。弓兵が隠れるところも多く多くの兵が飛び道具で待ち構えていた。
実はトーチカと曲輪は地下通路で繋がっていて地下にある補給庫とも連結している。それゆえ弾薬は無尽蔵に近い。三成は部下に武田軍への攻撃を命じたが敵の盾が頑丈で正面からいくら撃っても効果がないとの報告があった。
「全くバカの一つ覚えか、正面がダメなら工夫しろ!」
と言いながら曲輪に移った。そこには武田軍の真似をしたバズーカ砲のような砲筒が用意されていた。
「いいか、盾の上を越えて敵陣に落ちるように撃つのだ。やれ!」
三成の部下が上空に向けて砲弾を射出した。砲弾は盾を飛び越えて佐竹軍の真ん中に落下し、十数名の兵の命を奪った。いいぞ、その調子だ。どんどん撃てと指示し跳ね橋の方を見ると、橋の向こう側が降り何かがこっちに向かってきていた。
「何だあれは?何!縄の上を歩いてくるぞ。おい、あれを撃て。こっち側に来させてはならん」
兵は砲弾を甚三郎に向けて撃ったが当たらない。手持ちの砲筒はさほど命中精度はない、大軍に向けて撃てばどこかに当たる程度のものでしかないため、カスリもしなかった。三成は慌ててトーチカへ走り自ら機銃を撃った。撃って撃って撃ちまくったが、敵の傘に阻まれ敵には弾が当たらない。機銃の弾が尽きた時、傘はボロボロになっていた。それを見たお幸は予備の傘を甚三郎に向かって投げた。いつのまにかお幸の装甲車が人型になっていた。そう、いわゆる◯◯ダムタイプだ。これを丙装備と呼ぶ。
綱を渡りきった甚三郎は再び傘を広げその中に隠れながら、こちら側の跳ね橋昇降装置を調べ始めた。構造は思った通り同じだったので、マジックアームを操作してギアを回した。跳ね橋がだんだんと降りてくる。
「させるかあ!」
どこかで聞いたようなセリフを言いながら石田三成は弾を補給した後、再び銃撃を始めた。今度は周りのトーチカからの銃撃も甚三郎に集中した。
「もう少しだ、もうすこ………」
傘のネットは銃弾の多さに耐えられずボロボロになり
「橋は降りた、進め」
作戦通り里見軍が盾を展開しながら橋を渡り始めた。
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