第205話 城の秘密

 信平は源三郎を連れて佐々成政に会いにいった。


「佐々殿。どうやって城を攻めるお考えか。この信平にお聞かせ願いたい」


「信平殿。あの城には沢山の連発銃が据え付けられている。しかも途中の曲輪や堀の石垣にも細工があるようだ。ただ進めば銃弾の餌食になるだけでござる。この佐々成政、命は惜しくないは無様な死に方はしとうない。夜討ちも考えたが上手くいきそうもない。ここまで一番乗りに来たものの実はお手上げでござる」


 佐々成政は悪びれず腹を割って話した。佐々成政にしても想定外だった。成政は大阪城を見たのは初めてだ。魔王城って何?と思っていたがいざ城を攻めようと思うと全く手が出せず困っていたのだった。信平は、


「源三郎。策はないか?」


 源三郎は考えた。佐々様が言うのは正論だ。まともに攻めればやられるだけ。つまりまともに攻めなければいいのだが、さて?


「蘆名様に知恵もお借りしたいのですが。それがしだけでは荷が重そうでございます」


「そうか、まあよかろう。兄弟仲良く考えるが良い」


 源三郎は蘆名幸村の元に向かい二人で戻ってきて何やら話を始めた。信平は源三郎に考えろとは言ったが自分でも考え始めた。この戦は信平にとっては勉強の場である。大阪城、すでに8階から上は焼けてしまっている。6階と3階の一部も城の中が見えるほど大きな穴が空いている。ただ門から城まではまだ500mはあるし、その間を兵が進むとあちこちから銃や弓矢のいい的になってしまう。あれだけ攻めてこれだけ戦果が上がってもまだ攻めいる事ができない。ほんと何て城だ。


 城にはまだ4万の兵がいると言う。兵糧も潤沢だそうだ。水も豊富らしい。弾薬も相当溜め込んでるとの事だ。真田兄弟の知恵次第か、と悩んでいたら勝頼が現れた。


「おう、信平。元気そうだな」


「ち、父上。ご無沙汰しております。しかしまた突然に、相変わらずでございますな」


 勝頼が現れた事に兵が気付いた。


「大御所だ、大御所が来られた」


「このような先陣においでなさるとは」


 勝頼は、


「皆の者。ここまで良く戦ってくれた。もう一息だ、この大阪城を攻め、武田が日ノ本を治める。これから軍議を行う。作戦は追って伝える。それまで周囲の警戒を怠るな。以上だ」


 と皆に指示をして佐々成政、蘆名幸村、真田源三郎信幸、武田信平、それに内藤修理と軍議を始めたが結論は出なかった。勝頼は豊臣軍から奪った大砲を並べさせ適当に城へ向かって撃っとけと指示し、信平を連れて信勝の所へ向かった。忍びの報告では兵を休ませているようだ。焦らずにいい判断だと勝頼は感心した。城はお幸達に望遠鏡『見えるんです』を使って見張らせている。


 高城と戦国飛行隊の面々は奪った大砲の試射を兼ねて城までの間にある曲輪を目掛けて砲撃を開始した。桃は、紅に話しかけた。


「中々当たらないね」


「同じ大砲でも武田軍のとは癖が違うのよ。でももうわかったから次はあてるよ」


 大坂城内の曲輪を2つ破壊した。射程距離は500mが精一杯、ここからでは城までは届かない。曲輪を3つ破壊したところで敵に動きがあった。外堀の石垣から機銃が現れこちらに向けられた。


「不味い、防御急いで」


 鉄の盾を前面に展開したところに銃弾が連続で飛んで来た。敵のマシンガンも中々だ。おそらく大崩の技術者から技術を奪ったのだろう。その時、紫乃がある事に気付いた。


「あそこの崩れてるところ、お市様が言ってた船からの砲撃のとこだよね?」


「そうじゃない。それがどうかした?」


 黄与は言われてもわからず改めて眺めてみた。あ、あれ?そう、人の手が入って何かを探したような感じがする。その事を伝えるとお幸は、


「豊臣は真似が得意だ。もしや砲弾を分析しているのかも知れない。桃、大御所に知らせてきて!時間かけてると敵に長距離砲が出来上がるかも」


「わかりました。ちょっと行ってきます」


 桃が勝頼の元へ走っている間に石垣の機銃からの銃撃が止まった。弾切れかな?と思ったらしばらくしてまた撃ってきた。どうやらあの中はどこかに繋がっていて弾の補給ができるようだ。


 高城達は奪った大砲を弾があるだけ撃つことにした。所詮貰い物だ。大阪城の中に小屋みたいな建物が3つ立っている。


「寅松、あそこを狙え。いい的だろう」


 紅がそれを聞いて、


「いいね。寅松、どっちがあてるか勝負しよう!」


 とけしかけた。寅松は射撃の腕は超一流だ。戦闘は皆に敵わないが器用さはピカイチだった。紅はそれを知っていて仕掛けたのである。紅は3発目に小屋を破壊したが寅松は3発で2つの小屋を破壊した。


「悔しい〜、やっぱ勝てないか。凄いね、寅松は」


「紅さん、兄者。あれを見て。何かいる!」


 破壊された小屋。その中から現れた物は?

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る