第200話 福島政則の死

 黒田官兵衛を討ち取った真田昌幸だが、新兵器を使い果たしてしまった。残るは普通の鉄砲と弓矢、そして騎馬隊だ。兵がやっと追いついてきたが、今から信勝の元へ駆けつけても間に合わない。兵を信豊軍と戦っている加藤清正軍へ向けた。法螺貝が鳴り響き、攻めの布陣、魚鱗の陣形でゆっくりと加藤軍に向かって進み始めた。



 加藤清正は、黒田官兵衛が敗れたと聞き黒田め、口だけで大した事ないわ、と呟き信豊軍への攻撃を強めた。信豊軍の陣にいる佐竹、里見は信勝が死ねばこちらに付くはずだ。そのため今もこちらへの攻撃が弱い。清正は狙いを小山田、北条軍に絞り突っかかった。加藤清正軍の先鋒には福島政則軍だった。ここまで大した活躍ができていない福島は手柄をたてようと気張っていた。そのままの勢いで北条軍、小山田軍を打ち破った。この戦で北条家、小山田家は滅んだ。福島軍はそのまま突き進み敵の二陣の織田軍とぶつかった。そう、織田信忠の軍勢だ。福島政則は叫んだ。


「良き敵なり。突き進め!」


 信忠軍から鉄砲と矢が福島軍に降り注いだ。かなりの兵が犠牲になったが福島政則はひるまなかった。そのまま自らが織田軍に突っ込み槍を振り回した。


「おらおらおらおらあー!」


 福島政則は大声を出しながら暴れまくる。それを見た織田軍の兵も応対した。


「大将首ぞ、討て、討ち果たせ」


 福島政則が敵陣で奮闘している間に後続の毛利兵、細川勢が追いついた。その後ろには加藤清正も続いている。このまま一気に織田を蹴散らすかに見えたが、織田軍の足元から小龍王ミニゴーリーが30機現れ福島軍に紛れ込んだ。


 小龍王ミニゴーリーから原油がばら撒かれた。特に福島政則には大量の原油が吹き付けられた。


「え、ええい、何だこの黒い水は。まさかこれが例の!」


 福島政則は不味いと思い引き下がろうとしたが織田軍から火矢が周りに飛んできた。福島政則は火矢を避け逃げようとしたが近くの旗本が火矢を刀で払ってしまった。その矢は地面に落ち火が燃え広がった。その火は福島政則に引火し、燃やし尽くした。


 細川忠興は黒田官兵衛が討ち取られた事、また目の前で福島政則が焼け死んだのを見て考えた。この男、父である細川藤孝から戦国の世での生き残り方を幼少の頃から学んでいた。藤孝は足利将軍に仕えていたが、強者の織田信長に鞍替えし、あの明智光秀の盟友でもあったにもかかわらず本能寺の変の後は光秀を見限り秀吉についた。忠興の妻は有名な明智光秀の娘、玉である。細川ガラシャとも呼ばれるこの美しい嫁がいるのに光秀に付かず秀吉に着いたのだ。藤孝の先読みの素晴らしさともいえよう。勝てば官軍、勝者しか生き残れない、戦国の世で最も現代的な考え方ができていてのかもしれない。


 その藤孝から生き残り手段を教わった忠興、この時忠興はこのまま秀吉に付くのがいいか迷った。迷っているうちに織田軍が攻めてきた。忠興は不味いと思い大阪城の方へ引こうとしたが後ろから加藤清正軍が詰めてきた。引く事もできなくなり今はこのまま行くしかないと覚悟を決めた。


 織田軍は体制を立て直し防御の構えを整えた。信豊からの指示は加藤軍を引き留め殲滅する事だった。すでに信豊は進軍するのではなく信勝応援を忠勝と真田に託し、自分の戦を楽しむ事にしていたのだ。この先にある大阪城攻めを見据えて。信豊はそれだけ信勝、真田を信用していた。




 細川、毛利軍に加藤清正が加わり敵兵が増えた。織田軍はよく持ち堪えているが時間の問題だろう。井伊直政はいてもたってもいられず、信豊の周りをうろちょろし始めた。


「うるさいぞ直政、少しは落ち着け」


「ですが、織田軍が崩れればこの本陣も危うくなります。それに佐竹、里見の動きも緩慢です。秀吉の調略がされているやも知れません」


「勝昌殿の件があってから色々と憶測が飛んでおる。それに秀吉は今までも多くの大名を誑かし衰退させてきた。自分がのし上がるためにな。ただ、この戦国では強い方に付くのは仕方のない事よ。裏切られるのなら大御所やワシらに魅力が無いということ、仕方あるまい」


「その様な呑気な事を言っている場合ではありません。それがしに出撃の命令をお願い致します」


「お主何か忘れているのではないか。まだあれがあるだろう。裏切る機会を与えない事だ。逆に敵の中にもこちらに付くものが現れるかも知れんぞ」


「その様な不確かな物をあてにはできませぬ。あれと言いますと、まだ残っているのですか?てっきり全部使ったかと」


「空軍軍曹を舐めるではないぞ。今準備をしておる。お主の出番はその後だ」





 加藤清正も加わり厚みを増した細川勢は織田軍を押し始めた。佐竹、里見は横から細川軍に仕掛けているが見せかけにしか見えない。それを見た成田勢千名が佐竹の動きを怪しく思い佐竹軍に混じって細川勢を攻め始めた。佐竹軍は中途半端に攻める事が出来なくなり細川勢を押し始めた。


 成田氏長の娘、甲斐姫は信勝に嫁いでいる。妾ではあったが子も産んでおり本妻の茶々とも仲がいい。成田氏長は武田に心底従っている。この成田の起点で佐竹のみならず里見も中途半端な事が出来なくなり織田軍はなんとか持ち堪えられた。


 と、そこに空から何かが飛んできた。

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